50代女性の患者さん。

治療の経緯は近くの開業医で根管治療を行なったがラバーダムがなく、その弟先生が治療を引き継いだ。

その先生は私が以前教えていた先生だ。

根管治療にはラバーダムをかけて治療するようになった。

なぜか?

それは細菌感染こそが根尖性歯周炎の最大の問題だと私が教えてその重要性に気づいてからである。

Kakehashi 1965

主訴は以下になる。

 

右上6に咬合痛がある。側方運動すると痛い。糸ようじでも痛い。舌で触れると常に痛い。痛みの強さは6/10。

歯内療法学的検査は以下になった。

#2 Cold+3/4, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#3 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#4 Cold+2/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

PAは以下になる。

CBCTもデータをいただいていた。

MB

MB根からはGutta Percha Pointが突き出ている。

オーバー形成になってしまっている。

DB

DBからもGutta Percha Pointが突き出ている。上顎洞の中に一部迷入しているように見える。

最後がPである。

P根の根尖部にも根尖性歯周炎が存在することがわかる。

ということで、まとめれば、全ての根管に問題があるということがわかる。

しかし、だ。

頬側と口蓋をどうやって同時に外科治療できるだろうか?

それは無理である。

では、頬側を先にやってその次に口蓋をするというのだろうか?

話がまどろっこしい上に二度の外科治療を患者が受け入れるだろうか?

ということで、私は以下のような治療計画を提示した。

  1. Apicoectomyを器具が挿入できる、MBにのみ行う。(器具が入るのが口角が固くMBで精一杯であるため)
  2. それでも症状がおさまらなければ、Intentional Replantationを行う。(脱臼ありきで行う)

患者さんは治療内容に同意し、まずはApicoectomyが行われた。(2017.12.29)

MBを切断して、MTAセメントを充填している。

3ヶ月後、経過を確認した。(2018.3.29)

咬合痛が変わらずあるという。

おそらく、

MBのみを切断したのでは細菌の減少は絶対的に起きない、症状も始まらない

ことを意味している。

処置から半年が経過したが主訴が何も解決されていなかった。(2018.5.25)

ということで、この日私はIntentional Replantationを提案した。

患者さんはかなり迷ったが…治療計画に同意した。

ということでIntentional Replantationを迎えるのである。(2018.5.25)

歯牙は3根あるので脱臼しないと抜歯ができない。

そのための道具は以前説明してきた通りである。

ラクスエーター・プラス

Physics Forceps

これを用いて脱臼させた。

そして3根管とも歯根端切除し、逆根管充填した。

そして歯牙を抜歯窩へと戻した。

PAを撮影した。

処置後…患者さんの不快症状は全て消えた。

そして、お金をかけてきたから保険のクラウンにすると言い出したため、それはまずいという話を私からさせてもらい、彼女の治療は終了した。

前の歯科医院で最後にPAを撮影したのは2018.12.19である。

この後、私は倒れてしまったため、予後が終えないでいたが患者さんに連絡をすると様子を見せにきてくれた。

術後、約5年が経過している。

以下、患者さんの治療に対する感想である。


先生、処置をしていただきありがとうございました。

ますます絶好調で歯科医院にも数ヶ月に一度必ずメンテナンスに通っています。

あの治療をするのはかなり迷いましたが、やって良かったです。

この事実を多くの方に知っていただきたいので、わたしの症例を使用することはもちろん大丈夫です。

こちらこそ、よろしくお願いします。


ということで、処置した部位が約5年経過しているが現在も問題がない。

こうしたことが歯内療法を行なっていると多々あることにあなたは気づくだろうか?

インプラントでもない、審美修復でもないがそのような処置を希望する人が世の中にどれくらいいるだろうか?

そうではない人が圧倒的である。

何が世の中から求められていることか?理解すればあなたの歯科臨床は鋭く変化するだろう。

理解できなければ?

・・・世の中のニーズを満たせない歯科医師になってしまうだろう。

世の中のニーズを満たせる歯科医師になろう。