紹介された患者さんの経過観察。

治療(Apicoectomy)は2022.6.10に行われていた。

その時の模様も含めて公開する。

当時の主訴は

右前歯の歯の根の先にのう胞みたいなものがある。過去(2013年,2018年)に2回治療したが、再発した。どうにか抜歯をせずに歯を治したい。

であった。

さらに問診すると

この2回時に以前の歯科医師たちはラバーダムを使用していない

という。

日本の歯内療法の現状をよく表している。

興味があるのは補綴物の色調だけ。内部の基本的な治療には誰にも興味がない。

このままでいいのだろうか?

こういう話は2007年からネットで発信しているが何も変わっていない。

しかし、どんなファイルいいのか?とか、どんなシーラーがいいのか?とか、どんな根充方法がいいのか?とか、テクニックばかりを追い求めている。

そしてあの時よりも保険点数は低くなってしまった。

このことから考えるに、もう保険診療で歯科治療をすることはできないのであるがいまだにそれにしがみついている。

頭のいい人なら、どういう方法が正しい方法なのか?冷静に考えればわかるだろう。

ということで、歯内療法学的検査を行った。

歯内療法学的検査(2022.5.12)

#7 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#8 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(+), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

#9 Cold+3/3,Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#8にはSinus tractがある。

しかも患者さん曰く、

かなり前から

だそうだ。

もしPAで再根管治療が濃厚であっても…根尖孔外細菌感染が疑われる案件だ。

次にPAを撮影した。

PA(2022.5.12)

手用ファイルが根尖部で折れている。

非外科的歯内療法で除去できなくもないが、治癒に時間がかかってしまう。

そして最大の問題が既に根尖部が破壊されているという事実である。

MTAで根充すれば治癒するという問題ではない。

あなたがそんなことを思っているとしたら…あなたは何も考えていないということがわかってしまう。

ポイントは何なのか?大事なことがわかっていないと吐露しているようなものだ。

さておき、次にCTを分析した。

CBCT(2022.5.12)

根尖部に大きな骨欠損がある。

その欠損は口蓋にまで及んでいた。

ということで歯内療法学的診断は以下になる。

#8

Pulp Dx: Previously treated

Perapical Dx: Chronic apical abscess

Recommended Tx: Core build up with Fiber Post→Apicoectomy

推奨される治療は支台築造をやり直してのApicoectomyである。

このブログの読者ならその理由が理解できるであろう。

患者さんは治療に同意した。


☆ここから臨床的な動画/画像が出てきます。不快感を感じる方は試聴をお控えください。


#8 Apicoectomy後 PA(2022.6.10)

近心に思いっきり穿孔してしまった。

理由は前の治療につられてGutta Perchaを除去していたら穴が空いていたのである。

もらい事故だが、こんな時こそMTA(Bioceramic)だ。

BC puttyで穿孔部を封鎖しファイバーポストを用いてレジンで支台築造しなおして、Apicoectomyを別日(2022.6.10)に行ったのである。

ここから半年が経過したのがこの日であった。

どれくらい治癒しているだろうか?それとも痛みに満ちているのだろうか?

#8 Apicoectomy後 6M Recall 歯内療法学的検査(2022.12.14)

#7 Cold+5/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#8 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(+), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#9 Cold+6/2,Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#8のSinus tractは外科後に消失したという。

その時期は覚えていないそうだ。

また#8は#7,9と比べると痛痒いような感じがするというが、痛い!までは至らないそうだ。

これはAAEの成功のクライテリアからすれば、”Healing”と言える。

次にCBCTを比較した。

#8 Apicoectomy後 6M CBCT(2022.12.14)

根尖部の歯槽骨はだいぶ回復している。

口蓋の骨の穿孔も消失してきたようだ。

次回はさらに半年後の来年6月に1yr recallを予定している。

その際に再度皆さんに報告したい。

それまで少々お待ちください。