バイト先での治療。
主訴は
前歯の補綴物をやりかえたい。前歯で咬合すると痛い
であった。
口腔内写真(2021.2.4)
#7,8,9,10に保険のレジンの前装冠が装着されている。
何の為だろうか?
言わずもがなであるが、この患者さんに聞くと
”知らないうちに神経を取られて削られた。そして変な冠を被せられた。咬合すると痛い。”
だそうだ。
これが主訴である。
こんなことでいいのだろうか?
既に歯科医師は国民の支持を失っているが、それがこれから向上するだろうか?
私にはとても回復・向上していくとは思えない。
もう諦めるしかないだろう。
次に検査が行われた。
歯内療法学的検査(2021.2.4)
#7 Perc.(+), Palp.(+), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#8 Perc.(+), Palp.(+), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#9 Perc.(+), Palp.(+), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#10 Perc.(-), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
主訴が検査で再現できている。
次にデンタル撮影を行った。
PA(2021.2.4)
パラレルなポストコアが装着されている。
このことは何を意味するか?といえば、
除去が著しくしにくい
ということを意味する。
何を言っているか?意味がわからない人はBasic Courseへの参加を勧める。
ということで診断は以下である。
#7,8,9,10
Pulp Dx: Previously Treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Apicoectomy
推奨治療はApicoectomyである。
ということで別日に行われた。
☆以下、臨床写真/動画が出てきます。不快に感じる方は試聴をSkipしてください。
#7,8,9,10 Apicoectomy(2021.5.25)
パピラベースで切開している。
フラップはプロビジョナルレストレーションに全く合致していない。
そうなると、
ちゃんと縫え!と大声で騒ぐ人がいる。
また、世の中には
”なぜパピラベースなんかで切開するんだ!”
という人がいる。
なぜか?
”ペリオの問題がないから”
である。
ペリオの問題がある人に歯内療法を行う場合は、
エンドーペリオ
に罹患している場合だけである。
それ以外でオペを行うことはあり得ない。
しかも、
エンドーペリオは妥協的な治療結果しか出せないので、アメリカでは多くの場合抜歯される。
それが人道的にいいか?悪いか?私は論ずることはできない。
なぜか?それがその人の決定で、患者さんはそれに従ったからだ。
そこには善や悪はないだろう。
そしてよく思うが、
そんなにペリオの人が世の中にいるだろうか?
私の歯科医院にはほとんどいない。
私のポケット測定が間違っているのか?とはとても思えない。
また、私は藤本研修会ペリオコースで藤本浩平先生から
”歯周病は治療しても治癒しない”
と教わった。
これが私の歯周病に対する哲学である。
それを変えることはできない。
もしそれでも歯周病の問題があれば、私はかかりつけ医に紹介するだけである。
ということでここから経過を見ていった。
#7,8,9,10 Apicoectomy 1yr Recall+Final Restoration set(2022.5.24)
1年が経過した。
術前にあった主訴は解決している。
解決しないと最終補綴は入らない。
この歯科医院はアメリカの歯科大学と同じ基準を有している。
ここまでしっかりと治療できる臨床家はなかなかいないだろう。
口腔内写真を撮影した。
最終補綴が装着されている。
審美的に何か問題があるだろうか?
私には何も問題がないようにしか見えない。
しかもこんなに間近で歯を見る人が世の中にいるだろうか?
そんな人は周りから気持ち悪がられるだろう。
次がPAである。
#7,8,9,10 Apicoectomy 1yr Recall PA(2022.5.24)
次にCBCTを撮影した。
#7,8,9,10 Apicoectomy 1yr Recall CBCT(2022.5.24)
#7
#8
#9
#10
どの部分もComplete healingと言える状態である。
全く問題がない。
患者さんは
綺麗になって痛みも無くなって本当に治療してよかった!と大喜びであった。
ということで次回はさらに1年後の2023.5に2yr recallを行う予定である。
その際に再度ご報告したい。