紹介患者さんの治療
と言っても元々は私の患者であったが、補綴治療のために他院に紹介していた。
主訴は
左側で咬合すると以前治療してもらった歯が痛い。右下も問題があると言われた。
である。
昨日は以下の①を紹介した。
今日は以下の②をご紹介する。
③は2023.6に行う予定である。
というのも、
現状まつうら歯科医院は2ヶ月先まで予約が取れない。
プラス、アシストが必要である。
ということで今日は以下の②である。
①左上奥歯の虫歯
②左下奥歯の根尖病変
③右下奥歯の根尖病変
の3つである。
①は先日のブログで説明した通りである。
今日は②を解説する。
歯内療法学的診断(2023.4.3)
#18 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#19 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(+), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#20 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
主訴を再現できている。
適切な治療を行えば、問題が解決しそうだ。
PA(2023.4.3)
以前、私が再根管治療した部分が奏功していない。
ということで、この症例は恐らく外科治療が必要である。
CBCTを撮影した。
CBCT(2023.4.3)
歯牙は10mmと標準的な長さだ。
オトガイ孔も#20の根尖のかなり下にあるので事故はないだろう。
Apexから3mmで切ると頬舌的に7.5mm切断しなければならない。
つまりこの方の歯は横幅が長いということになる。
洞穴を探るような治療になる可能性がある。
Dも歯牙は標準的な歯根の長さだ。
3mmで切るとこれも頬舌的な幅が8mm近いのでここも切断がしにくいだろう。
しかもDB, DLと2根管性だ。
2根管を繋げなければならない。
このようにこの方の治療は難しくなることが予想される。
術野を広めに取った方がいいかもしれない。
歯内療法学的診断(2023.4.3)
Pulp Dx: Previously tretaed
Periapical Dx: Asymptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Apicoectomy(M, Dともに)
一度数年前に再根管治療をしているのでその効果が出ていないということは、外科治療一択である。
患者さんは治療計画に同意されたので外科治療となった。
☆この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#19 Apicoectomy(2023.4.3)
術野を広めに取った方がいいだろうと言いながら#21の近心に縦切開を入れるという不始末を起こしている。。。
これは反省ポイントだ。
頭の中では外科治療がやりにくくなるだろうと後悔していた。
さておき、根尖部の発見であるが、CBCTによれば以下である。
近心歯頸部、遠心歯頸部の直下10mmにほぼあり、アンダーカットが根尖部にあるので面倒臭ければ骨窩洞を1つに繋げてもいいだろう。
長さはすでに計測していた。
Apexを知覚したのでこの部分から3mmを切断した。
逆根管形成をした。
MBとMLを繋げなければならない。
面倒くさいが、新品の逆根管形成チップを用いて、わずか数分で終了した。
また、Gutta Percha Pointの断端をAbou-Rass Plugerで押し込めた。
この道具以外に断端を押し込められる器具はないと思われる。
これもUSC時代に教わった道具だ。
非常に使用しやすい。
これ以外に、何かあれば誰か教えてください。
窩洞内を乾燥させて逆根管充填した。
次にD根のApexを見つけるためにOsteotomyした。
CBCTを参考にすると間違いが少なくて済む。
ここも遠心歯頸部の直下である。
長さは 9mmだ。
思しき箇所をリンデマンバーでOsteotomyし
低倍率でRoot resectionした。その後、顕微鏡の倍率を上げて詳細を見た方がいい。
すると切断しきれていない根尖部のアゴがかなり残存していた。
これも最終的には落とさなければ良好な治癒は望めない。
メチレンブルーで染め出してRetroprepすべき場所を確認した。
またしても、新しい超音波チップで逆根管形成した。
ここもイスムスを繋げなければならない。
時間がかなりかかったが、遠心もイスムスを繋げた。
このように、
近心、遠心共に頬舌2根管あるような下顎大臼歯の外科的歯内療法は凄まじく時間がかかる。
前歯の単根など20分程度で終わってしまうが、大臼歯のこのタイプは専門医でも、やや時間がかかる症例と言える。
難症例であった。
最後に乾燥して、逆根管充填した。
最後にPAを撮影した。
術後PA(2023.4.3)
この症例で私が反省しなければならないのは、縦切開を#21の近心に入れてしまったことである。
これでは…Flpaをテンションをかけずに扱うことが難しい。。。
大反省ポイントだ。
少なくともこういうケースでは縦切開はもっと近心の歯に入れるべきである。#22とか#23にだ。
つまり、伝達麻酔が必須と言える。
何を言っているのか?意味がわからないあなたは、麻酔のセミナーに出る必要があるだろう。
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私のミネソタリトラクターを持つ左手は最終的にはプルプルと震えていた。
野球選手が素振りを長時間するとバットから手が離れないように、PAを撮影する際、私の左手もなかなかミネソタリトラクターから外れなかった。
まさに難症例である。
しかし、これはかなり学習になった。
今後はこの日の体験を生かしたいと思う。
最後に縫合して終了した。
ということで、このように難しい要素がぎっしり詰まった下顎の大臼歯のOpeだが、最後にまとめてみた。
<下顎の大臼歯でApicoectomyが困難になる可能性が高い症例の特徴>
①近心根、遠心根共にRetroprepが必要である
②口唇、口角が硬く、リトラクトが極めてしにくい
③近心根がMB+ML, 遠心根がDB+DLの場合、イスムスを繋げなければならないのでかなりの難症例。それが右下だと凄まじく時間がかかる
以上である。
帰り際に患者さんにはかなり顔が腫れると思うという言葉を告げてその日のApicoectomyは終了した。
抜糸に来られたのでその際の模様もお伝えする。
私はかなりの痛みが出ることを予想していたが、状況を患者さんに尋ねると
”全く痛くなかった。腫れもなかったです。”
とケロッとしていた。
何故だ??
奇跡か。免疫力か。。。
不思議なことがあるものだ。
実際抜糸時の口腔内も腫脹がない。
以下が動画である。
抜糸(2023.4.10)
というわけで次回は1年後である。
その際にこの治療の成果?をお伝えしたい。
それまで少々お待ちください。