紹介患者さんの治療
と言っても元々は私の患者であったが、補綴治療のために他院に紹介していた。
主訴は
左側で咬合すると以前治療してもらった歯が痛い。右下も問題があると言われた。
である。
患歯は複数本あり、それぞれ事情が異なっていた。
①左上奥歯の虫歯
②左下奥歯の根尖病変
③右下奥歯の根尖病変
の3つである。
今日はその中で一番最初に治療を行った、①を解説する。
次回以降、②、③を解説しよう。(③はアポの関係で2023.6に治療予定)
歯内療法学的診断(2023.3.31)
#13 Cold+4/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#14 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(+), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#14はCold testに反応しない。失活が疑われる。
また、それはさておき患者さんの主訴を再現できている。
適切な治療を行えば、問題が解決しそうだ。
PA(2023.3.31)
MBのApexには根尖病変が疑われる。
露髄したDBには直覆がなされている。ここは石灰化が更新してしまう…
どうせ処置するならば、断髄をしてほしいのだがなぜかみんな直覆する。
ちなみに、成人に行う直覆の成功率はみなさん、覚えているだろうか?
Direct Pulp Capping@成人 31.8%(Bjondal 2010 )
である。
30%しか成功しない、根管の石灰化を招く治療をなぜあなたは選択するのだろうか?
私には意味が全くわからない。
ということで、CBCTを参考にしたかったが、かかりつけ医からの情報が間に合わなかったため、この日の情報としては採取できていない。
が、治療後に近隣の歯科医院で撮影していただいたものがあるので、それを最後にお見せしよう。
歯内療法学的診断(2023.3.31)
Pulp Dx: Pulp Necrosis
Periapical Dx:Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: RCT
治療は根管治療一択である。
にしてもだ。
この歯も歯髄保存療法が失敗している。
このあたりの詳細情報を知りたい方は、この夏に行われる以下の生活歯髄療法のセミナーに出席(もしくはZoomで参加)されることをお勧めする。
ということで治療の模様をお伝えしよう。
☆この後、治療動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#14 RCT(2023.3.31)
やはりDBがない。
PAを撮影してどこにあるか?類推した。
DBの根管口はMBの付近に存在することがわかる。
しかもかなり近接している。
その辺りを探索すると…
このようにCBCTがなくてもDB根管口の場所を発見できた。
ということで、SXで根管上部を拡大して作業長を計測した。
さて。
こんな表の何が重要なのだろう?といつも思う。
重要なのは、どう形成していくか?である。
予想を立てるとどうだろうか?
PはK#15で穿通している。0.5mm上は#16だ。そしてPAからは湾曲があるようには見えない。ということは、いきなりHyFlex EDM #25.Vから形成を始められるだろう。
DBはその存在自体がどこにあるか?がわからない。こういう時にCBCTがあればいいのだが。。。かかりつけ医と私が連携ができていなかった…
MBはPAでは根尖病変があるように見える。ここは最低#40までの拡大が必要だろう。またC+6で穿通していることからこの根管はHyFlex EDM #20.05からの形成が必要であろう。
ということで、実際の形成の手順は、
P #25.V→#40.04→#50.03→#60.02
DB #25.V→#40.04
MB #20.05→#25.V→#40.04
となり、以下の表が完成した。
MAFよりワンサイズ小さなサイズのGutta Perchaを用い、BC sealerを使用してSingle Pointで根管充填した。
DB
MB
P
この後、支台築造してPAを撮影した。
口蓋がアンダー気味に見えるが、どこにApical Foramenがあるか?は臨床では分からない。
アンダーに見えても適切かもしれない。
もし、CBCTでApical Foramenの位置が分かれば臨床は変わる可能性はあるが、もはやMTAsーラーがあるのでオーバー根充しようとMTA根充である。
時代は変わったのだ。
全てが簡単になっていくのである。
ということで、治療自体は1時間で終了した。
次回のアポでは、CBCTを撮影して状況を見ますと伝えた。
その模様を以下に示す。
CBCT(2023.4.3)
MB
DB
P
驚くべきことに石灰化が進むDBでなく、P根の根尖部が根尖病変があり上顎洞底と交通していた。
こうした情報はCBCTでないとわからない。
このように、
歯内療法においてはCBCTは必須
であると言える。
次回は別の歯の治療で来院していただく。
その模様はまたお伝えしよう。
それまで少々お待ちください。