紹介患者さんの治療。
主訴は3つある。
①右上奥から2番目の歯、数ヶ月に一度程度歯茎が腫れて痛む。前歯科医師の治療の際、パキッと音がして歯にヒビが入っていないか?心配…
②左下奥から2番目の歯、上記と同症状。で咬合すると痛い。
上記2本はラバーダムなしの根管治療を6~7年前にしている、という。
③上記2本の歯のトラブルがなくなれば、前歯を(左上1)を審美面でやり直していいか?伺いたい。
であった。
複数本問題があるがこの日は右上の奥歯から検査をしていった。
歯内療法学的検査(2023.3.29)
#2 Cold+4/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
#3 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(++, MB部が痛む), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
主訴は再現できた。
“適切な治療”
で主訴が解決する可能性が高い。
PA(2023.3.29)
MBの根尖部に病変がみえる。
ここを抑えると圧痛があるということは、おそらく歯槽骨を超えて感染が広がりを見せていることが予想できる。
初診時 CBCT(2023.3.29)
B
MB
MBが原因で歯性上顎洞炎になっていると考えられる。
DB
DBは関係なさそうだ。
P(B)
P(M)
Pにも問題はない。
ということは、MBのみを切断すればいいので全く難しい治療ではない。
歯内療法学的診断(2023.4.12)
#3
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx:Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx:Apicoectomy(MBのみ)
推奨される治療はApicoectomyである。
理由は既に大きな形成と根管充填だからだ。
が、
クラウン内部にある、既製ピンの存在、虫歯の可能性などを考慮してまず除冠して支台築造をやり直し、それからApicoectomyへ移行することになった。
患者さんは治療に同意してまず支台築造処置が行われた。
☆この後、臨床動画が出てきます。気分を害する方は視聴をSkipしてください。
#3 Core build up w/wo Fiber post(2023.4.6)
クラウンが外れにくくするようにポッチが彫ってある。
そういうことよりも、
虫歯はきちんと取るとか、
ラバーダムするとか、
滅菌された器具を使用するとか、
Gutta Percha Pointは根充前に消毒するとか、
シーラーのチップはきちんと買うとか、
Gutta Percha Pointを熱で切断する道具をきちんと購入するとか、
した方がいいと思うのは、私だけだろうか?
何度も言うが、
保険診療から脱却しない限り、我々歯科医師に明日はない。
さておき、術後にPAを撮影した。
ということで別のアポイント時にApicoectomyを行うことになった。
なぜ別のアポイントなのか?あなたは答えが出てくるだろうか?
答えを知りたい方は、下のリンク記事へ飛んでください。
☆ここから、外科動画が出てきます。気分を害する方は視聴をSkipしてください。
#3 Apicoectomy(2023.4.10)
術前の見通しは以下である。
CBCTを大いに活用しなければならない。が、ほとんどの方はその扱い方を知らない。
詳細はAdvanced Course 2023で説明します。
まずCEJからApexまでの距離を測る。
クラウンのマージンから10mm先にApexがある。
根尖が上顎洞内に落下するのではないか?!と恐怖を抱くあなた。
そこに肉芽組織があるのだから落ちるわけないでしょう。
よく考えてください。模型と人間は違います。
さて、そこから3~4mmで切断した場合、
頬舌的に6mm切断することになる。
その際、
MB1とMB2は容易に繋がるだろう。
ほとんど時間がかからないはずだ。
根管治療よりも早く終わることができるだろう。
という見通しを以下のようにユニットの側に貼り付けておくことが重要である。
これは毎回だ。(以下は別症例)
ということで切開剥離して治療に移行した。
#3の外科治療なので2本近心の#5に縦切開を入れてスタートしている。
#3のMBの根尖部は容易に発見できた。
MBの頬側には歯槽骨がない。
が、歯周ポケットはWNLであるので問題があるわけではない。
もう一度ここでCBCTに戻る。
CEJより10mm先端にApexがある。
ペリオプローブを置いて10mm先端を捜索する。
その部位の歯槽骨を削除してApexを見つけ、そこから3mm下部を切断する。
どう3mmを計測するか?はAdvanced Course 2023でお話しする。
切断したら必ず切断部位を確認しなければならない。
きちんと切れているのか?
残差はないか?
アゴが残っていないか?
などのCheckである。
どうだろうか?
きちんと切断できていないし、
段差もあるし、
アゴも残存している。
これらをCheckするには顕微鏡を高倍率にしなければならない。
その後、メチレンブルーで染色して逆根管形成を行った。
この時、逆根管形成のチップの全長が逆根管形成の窩洞の中に入り込んでいるのが確認できただろうか?
こうしたきちんとした形成を行っている人を私はほとんど知らない。
そのためのコツは、新品の逆根管形成のチップの使用だ。
お金がもったいない!のなら、治療費を上げればいい。
そこには何の問題もない。
ということで、処置に問題ないと判断し、逆根管充填を行った。
PAを撮影した。
最後に縫合して終了した。
手術の時間は縫合まで入れて約30分である。
聞き手と逆の歯であればもっと早かっただろう。
次回は抜糸である。
その模様も次回移行、お伝えします。