紹介患者さんの治療。
半年前に再根管治療を行なっていたが、
M, D, Radixともに穿通しなかった。
それから半年経過していたが、その際の主訴が
歯茎の腫れが治癒しない。痛くはないが…
である。
そう。
つまり、私は負けたのだ。
歯内療法学的検査(2023.10.26)
#18 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#19 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)
PA(2023.10.26)
根尖病変が消失していないのがわかる。
詳細をCBCTを撮影して把握した。
CBCT(2023.10.26)
MB
ML
MBにもMLにも病変がある。
M根はApicoectomyが決定的だ。
D
Dにも病変がある。
ここもApicoectomyが必要だろう。
Radix
ここにも病変がある。
が、Radixが頬側から切れるだろうか?
計測した。
D根の裏のやや近心側にRadixはある。
頬側から切るとなると…11mmである。
つまり、
リンデマンバー全てを入れないとRadixまで切断できない。
それ以前に、
Radixを見つけるためには肉芽種や根尖病変をほぼ除去しなければならない。
もたつけば、大流血だ。
果たしてそれが可能だろうか?
が、である。
見方によっては、Radixの病変はDの病変が原因でできているように見えるだけかもしれない。
Radixの切断は上顎大臼歯の口蓋根の切断に似ている。
それを本当に切らないといけないのかどうか?を時間をかけて(といってもあまりかけれないが)、精査する必要があるだろう。
ということで、診断は以下である。
歯内療法学的診断(2023.10.26)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Chronic apical abscess
Recommended Tx: Apicoectomy(M,D, 可能であればRadix)
ということで、別日にApicoectomyとなった。
☆この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#19 Apicoectomy(2023.11.6)
口角が硬い患者さんであったので、#22の近心に縦切開を入れてApicoectomyはスタートした。
まずM根のApexから探索する。
M根のApexはCEJより11mm下方にあるはずである。
そして皮質骨を1mm削合するとM根のApexが顔を出すはずだ。
ということで、OsteotomyしてM根のApexを見つけて、3mmをRoot resectionした。
その後、切断面をメチレンブルーで染め出して逆根管形成・逆根管充填した。
これでM根は終了である。
次にD根に移行した。
D根はCEJよりも11mm下方にある。
そして皮質骨を1mm削るとApexに到達する。
3mmで切断すると、頬舌的に4mm落とすことになる。
リンデマンバーの半分の長さ(5.5mm)以下であるので問題がない長さだ。
Easyと言える。
メチレンブルーで染め出して逆根管形成し、逆根管充填した。
さて、Radixだが…
どこにあるか?といえば、D根の裏の近心寄りだ。
探索をするが…
見つからない。
まるで芋掘りのようだ…
ここで私はPA, CBCTを撮影し、その画像から考察した。
PA
CBCT
M
D
Radix
さて。以上の画像からM, Dは問題がないことがわかる。
では、Radixはどうだろうか?
私はここで考察をした。
このRadixの病変は本当にRadix由来なのか?という考察を。
もしRadix由来でなければ…無駄な治療になる。
また、このRadixはそれほど湾曲が強くない短根の歯根だ。
ということは、
もし問題が出てもIntentional Replantationで修正が図れる
だろう。
またこの段階で、止めていた出血が多くなってきた。
ということでここで治療をStopした。
最後に縫合して終了した。
次回は半年後の2024.5である。
Radixの病変はどうなっているだろうか?
またその模様を半年後にお伝えします。