バイト先の治療の患者さんの経過観察。

2023.4.25に治療を行っていた。

上顎大臼歯MB根Apicoectomy~Easy vs Tuff の見分け方②〜#3 Apicoectomy Tuff Case

当時の主訴は

右上で噛むと痛い

である。

歯内療法学的検査(2023.3.17)

#2 Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#3 Perc.(+), Palp.(+), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#4 Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

検査で主訴が再現できている。

適切な治療をすれば治癒する可能性が高い。

ただ、この患者さんの特徴は、

口角が異常に硬い

というPersonalityがある。

これはApicoectomyを難しくする。

なので、できればこの患者さんの治療が、(再)根管治療であることを祈るのみだ。

PAを撮影した。

PA(2023.3.17)

CBCT(2023.3.17)

MB

MBの病変は上顎洞内に抜けている。

となれば、これは

歯性上顎洞炎

の可能性を帯びてくる。

外科になれば、以下のように行われるだろう。

Apexまでは9.7mmだ。

歯根は露出している可能性が高い。

また、3mmで歯根を切断すると頬舌的に

4.9mm掘らなければならない。

リンデマンバーの半分以下である。

ということは

この外科治療は容易だ

ということがわかるだろう。

MB2もあるだろうが頬舌幅がほとんどないので、それほど時間はかからないだろう。

外科に移行すると決まれば、DBの模様も見なければならない。

DB

頬側の皮質骨はない。

Apexから3mmで切断すると、

頬舌的に3.76mm切断すればいい。

しかもその際、口蓋側に危ない要素は何一つない。

えっ?MBもDBも上顎洞に歯根が落下するじゃないかって?

落下するわけないでしょう。

そこには肉芽組織があるのだから。

ただ、切断した歯根を無くさないように必ず回収しなければならないということだけは言えるが。

最後にPは精査するまでもなく上記のCBCTより病変はないとわかる。

幸運なことにそこは扱わなくても良い。

歯内療法学的診断(2023.3.17)

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Apicoectomy MB+DB

治療は満場一致でApicoectomyだろう。

というわけで別日に治療へと移行した。

#3 Apicoectomy(2023.4.25)

さて。

この術前の巨大な根尖病変と骨欠損、そして上顎洞炎はどうなっただろうか?

あれから時間が9ヶ月経過した。

結果的に、

術前のすべての臨床症状(2023.3.17 #3 Perc.(+), Palp.(+), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL))は喪失していた。

PA, CTを撮影した。

#3 Apicoectomy 9M recall PA(2024.1.23)

#3 Apicoectomy 9M recall CBCT(2024.1.23)

MB

DB

画像から判断できることとしては、

上顎洞炎の消失

歯槽骨の大幅な回復

が見られる。

このように歯内療法は大幅に状況を変化させることができる治療である。

その意味では、歯科治療で唯一意味があるのかもしれない。

そして、もう一つ。

このクラウンは適合がいいだろうか?

保険のパラのクラウンが装着されているこの歯牙のクラウンの適合はどうだろうか?

とてもいいものとは言い難い。

が、

病変は治癒しているし、上顎洞炎も治癒している。

この結果は、

Ng 2008 Outcome of secondary root canal treatment: a systematic review of the literature

で述べられている通りだ。

ただ、上記論文は非外科的再根管治療の予後の文献だが。

ともかく、初診時と9ヶ月後を比較してみた。

DB根はまた道半ばだと言える。

もう少し経過を追うことになった。

そしてもう一つの発見があった。

Ope動画をよく見てほしい。

この歯には、Apico-marginal bone defectがあったのだが、

術後、それが治癒している。

特にMBが顕著だ。

Apicomarginal Bone Defectが出ないようにしないといけない!と教育されたが、それは事実なのだろうか?

この症例の結果をあなたはどう捉えるだろうか?

さて、昨日も今日も、意図的に上顎洞炎が治癒したCaseを提示したことにどれくらいの人が気づいただろうか?

歯内療法はそんなにしょぼい治療だろうか?

それとも、人を危機から救ってくれる治療だろうか?

それを決めるのは、患者さんだがそれを司る歯科医師の気概がそこには現れるだろう。

ということでこの患者さんの予後はまた続けてご紹介したい。