紹介患者さんの治療。

しかも某大学病院からである。

患者の主訴は

右下奥歯で噛めない…

であった。

歯内療法学的検査が行われた。

#30 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#31 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

PAは以下である。

CBCTは以下である。

歯根は外国人のように長い。

そして1番の懸案が近心根の根尖部の湾曲である。

ここが邪魔で抜歯がしにくい可能性が高い。

しかも根尖病変がない。

根尖病変がない=歯槽骨が充満している

ので抜歯がしにくい。

脱臼してその後時間をかけて抜歯する必要がある。

そうしたことを事前に患者さんには伝えた。

M根

このように根尖部が膨れている。

これがテーパー状であれば抜きやすいのだが。。。

困難が予想される。。。

D根

D根も根尖部が花火のようにやや膨らんでいる。

しかし近心よりはマシな感じだ。

抜歯に対する予想としては、

遠心根よりも近心根の脱臼・抜歯に苦しむ

可能性が高い。

Intentional Replantationで難しいのはこのように根尖病変がないのに痛みが出ている症例である。

どのようにして脱臼させるか?

脱臼・抜歯できない場合はどうするか?であるが、半分に切断して近心根、遠心根にして保存すると告げた。

ヘミセクションするという意味である。

もちろん、それは良くない。

歯根が短くなるし安定性に欠くからだ。

理想は下顎大臼歯の形態ままでの抜歯である。


歯内療法学的検査は以下になる。

#30 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#31 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

根尖病変がないのに主訴が再現されている。

これは嬉しいようなプレッシャーがかかる治療である。

抜歯できなければ患者の主訴が改善される見込みはないからだ。


歯内療法学的診断は以下である。

#31

Pulp Dx: Previously Treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Intentional Replantation

Intentional Replantationの適応であると説明し、抜けない場合はヘミセクションに移行することを患者さんに告げて治療へと移行した。


Intentional Replantation①(2022.10.6)

☆以下、治療動画が出てきます。不快感を感じる方は試聴を控えてください。

抜歯は脱臼までに相当の時間を要した。

史上最長の2時間である。

途中、諦めたくなった。

患者さんに抜歯が困難であることを告げた。

すると、

時間はかかってもいいのでなるべく分割せずに抜いていただけないでしょうか?不安定なブリッジは嫌なので…。。。

勝手なお願いだと分かってはいますが…

よろしくお願いいたします。。。

こう言われれば、

もう頑張るしかない。大学病院からの紹介もあったので私は、邪念を捨てて歯牙に集中した。

某社から紹介された、新しいダイヤモンド鉗子で患歯をつかみ脱臼を試みた。

ここまで相当の時間がかかったが、

うちの歯科医院は1日1人診療なので時間的な不安はない。

すると以下のように変化が生じた。


まさに…格闘であった。。。

予想通りとはいえかなり疲弊した。

抜歯窩に根尖などがないか慎重に確認した。


抜歯窩には何もないと思われる。

ようやくこの段階まできた。

が、ここから先がこの治療の本番だ。

気を取り直して根切へ移行した。

Intentional Replantation②(2022.10.6)


根尖部3mmを切断した。

長さをルーラー等で測らないのは、バーの厚みを理解しているからである。

何を言っているか?訳もわからない人は厳しい言い方であるが、ApicoectomyやIntentional Replantationを行う資格がない。

Advanced Courseに出席して学び直す必要が大いにあるだろう。

Intentional Replantation③(2022.10.6)

逆根管形成を行なった。


3mm形成するということは口で言うのは簡単であるが、なかなか難しい。

それを最近強く感じている。

また、近心根の近心には側枝が存在していた。

その部分も根管形成し、逆?根管充填することになる。

Intentional Replantation④(2022.10.6)


近心根と遠心根を逆根管充填した。

あとは近心壁の側枝である。


逆根管充填した歯牙をPAで撮影した。

逆根管充填の厚みは問題ない。

また、側枝へも充填されている。

問題ないと判断し、再植へ移行した。

Intentional Replantation⑤(2022.10.6)


ガーゼを咬合後にPAを撮影した。


問題ないと判断した。

次回は1ヶ月後である。

術後の感覚としては、治癒には時間がかかると思われる。脱臼に四苦八苦したからだ。

2ヶ月で治癒すればいいが…

次回の経過観察まで少々お待ちください。