以前の記事の続報。

#19 Re-RCT 1年後 Recall…根尖病変消失

初診時(2020.7.18)

MBとMLは合流している可能性が高いという事実、近心から偏心撮影した事実を考えると、このガッタパーチャが入っているのはML根と考えられる。

CBCTを撮影してもらった。

やはりMLにはガッタパーチャが入っていた。

しかしMBには何もない。

根尖病変がある。

ということはMBが勝負の分かれ目になる。MBを穿通させ根管治療することができれば勝負に勝てるかもしれない。

MLはこの状態から考えてもおそらく穿通しないだろう。

ではMBは穿通するのか?それは私にはわからない。しかし穿通するように努力するのが治療だ。

そのためのオプションも私にはある。

また、2根管の歯が根尖病変を持っており1根管だけ穿通してどれだけ根尖病変が治るのか?私はそのような論文を今まで読んだことがないのでわからない。しかし、全く掃除できないよりは治る可能性はあるだろう。

次がD根である。

D根はガッタパーチャで根充してあるが直線的に舌側に変異して根管充填してある。

これはハンドファイルで治療してあるなと容易に想像できる。

そして本来の根管の形態から逸れていることも想像できる。

しかし根尖病変がない。

根尖病変がなければ穿通しようがしなかろうが成功率は90%以上だ。

ということは以前のブログでも書いた通りだ。

という自分の考えをカウンセリング時に患者さんには伝えた。

勝負は#19のMB根が穿通するかしないかだ、と。


#19 Re-RCT(2020.7.18)

伝達麻酔+頬神経ブロックをして10分時間をおいて口唇・舌の痺れを確認し再根管治療はスタートした。

作業長は

MB=14.0mm

ML=閉鎖

D=閉鎖

であった。

全ての根管でMAF=#40.04(ただし根管の3/4を最終的に#50.03で形成)であった。

そして最大の懸案だったMBが穿通した。

これは治る可能性が高いかもしれない。

ポイント試適しガッタパーチャポイントの位置を確かめて、根管充填して支台築造してレントゲンを撮影した。

ポイント試適のPAは近心根しか写っていない。

が、見なければいけない場所のPAとしては適している。

根管充填した。


ここから時間が経過した。

#19 Re-RCT 8M recall(2021.3.12)

7ヶ月で病変はかなり小さくなっている。

臨床症状は何もない。

ここで再治療の治癒にかかる時間を復習してみよう。


<再根管治療の治癒にかかる時間について>

歯内療法の成功の定義には以下のようなものがある。

Orstavik 1996の有名な論文を見てみよう。

Prospective studyで

Re-RCT(N=732 roots) done by undergrad students

PAI evaluated after 0,1,2,3,4 yrs.(PA=デンタルでの予後評価である。PAI>2で成功と見なせる。)

599 roots could be evaluated.(82%)

アメリカでは考えられないことであるが、再治療を学生が行なっている。

この論文には以下のようなグラフが添付されている。

根尖病変が“healing”するのにどれくらいの時間がかかっているだろうか?

またこの文献では以下のグラフもある。

根尖病変がhealedするのにどれくらい時間がかかっているだろうか?

私の言っている意味がわからなければ、あなたはBasic Courseへ出る必要があるだろう。


と言うことでこのグラフに照らし合わせれば問題なくhealingしていることがわかる。

さてここからさらに時間は経過した。

ということで早いもので、再治療から1年が経過したのである。

それが以下のPAである。

#19 Re-RCT 1yr later recall(2021.9.21)

歯内療法学的検査で初診の時にあった咬合痛や圧痛は消失した。

この時点で痛みなどは全くない。

1年経過して治癒したのだ。

しかし、これが永遠に続くか?は私にはわからない。

何れにしても、歯内療法を行なった結果は出た、と言える。


さてここからさらに1年が経過した。

#19 Re-RCT 2yr recall(2022.10.7)

いかなる臨床症状もない。

Sinus tractも見られなかった。

問題はないと思われる。

2年経過したが問題がなかった。

これがこれからも続いてくれればいいが…

次回は来年の10月である。

その際はCBCTも撮影してもらおうと考えている。

それまで少々、お待ちください。