他院からの紹介患者さんの治療。
主訴は
左上の奥歯に膿が溜まっている。抜きたくない。何とか残したい。
である。
歯内療法学的検査(2022.4.18)
#13 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#14 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#15 Cold+5/4, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
初診時PA(2022.4.18)
初診時CBCT(2022.4.18)
MB
根管は石灰化しているように見える。
その奥の分岐部に大きな病変が認められる。
予想通り根管形成ができないので途中でGutta Percha Pointが止まっていた。
MB2を扱っていない。
第1大臼歯でMB2がある可能性はStropko 1990によれば90%なのにも関わらずだ。
大学院の時も同じようなことがあった。
90%じゃ!と熱く真面目に語ってその後のCase PresentationでMB2がない、なかったというExcuseが始まるのはこの業界のお約束?なのか??
DB
ここも石灰化が進んでいるようだ。
そして根尖病変が存在する。
最後がPである。
P
Apical Foramenまでもう少しというところで止まっている、と言えるかもしれない。
Gutta Percha Pointが口蓋側に変移している。
ハンドファイルで形成したからだろう。
何度も言うが、できなければできる人に任せればいいだけなのだがこの国にそう言う文化はない。
が、P根もレッジができてはいるがその先の掃除はしていない可能性が高い。
レッジができてしまったので諦めてしまったのだ。
しかも患者さん曰く、
ラバーダムなど使用されたことはなく
ハンドファイルで清掃されたことが記憶にはあると言う。
それでは…
細菌を減らすどころか増殖させている。
この非常識が非常識であると認識されない限り日本の歯科医療に未来はないだろう。
ともあれ、再根管治療をするのであればこの部分を清掃できるか?が鍵になりそうだ。
それか…口蓋からフラップを開けて根切するか?だが
私はそのような煩雑な治療よりもまずは再根管治療にかけてみたいと言う思いが強い。
そこをマネージメントできれば成功率が90%を期待できるかもしれないからだ。
歯内療法学的診断(2022.4.18)
#14
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: P根のみRe-RCT, MB+DB Apicoectomy
☆この後、臨床的画像・動画が出てきます。不快感を感じる方は試聴をSkipしてください。
遠方から来られているのでその日にまずはP根の再根管治療をし支台築造した。
P根・根管充填後PA(2022.4.18)
BC sealerを根尖に若干おいてBC puttyで根充するとこのようにパフが出るような絵になる。
その後、レジンで支台築造した。
別日にApicoectomyが行われた。
なぜか?
それはエピネフリンの効果が切れるからである。
詳細はAdvanced Courseでお話しする。
次回のアポでMBとDBを切断して逆根管充填していく。
#14 Apicoectomy 術後PA(2022.5.23)
さてここから半年経過している。
いかなる痛みもないという。
#14 Apicoectomy 6ヶ月経過 Recall(2022.12.8)
PAを撮影した。
#14 Apicoectomy 6ヶ月経過 PA(2022.12.8)
#14 Apicoectomy 6ヶ月経過 CBCT(2022.12.8)
MB
術前と比べてだいぶ歯槽骨が回復していた。
DB
ここも歯槽骨がかなり回復していた。
よく聞かれる話が、若いと回復が早いとかであるが私が知る限り関係ない。
思うに、年齢と回復具合は無関係だと思われる。
最後が懸案のP。
ここは再治療なので治癒に時間がかかる。
P
P根の根尖部の病変もかなり回復しているように見える。
問題はなさそうだ。
最後に術前と比べてみた。
術前vs6M recall 比較(2022.12.8)
だいぶ歯槽骨が回復しているのがわかる。
口蓋根も順調だ。
次回は半年後である。
それで1年経過だ。
その模様をまたお届けするので少々お待ちください。