私の新年一発目の治療はApicoectomyであった。

ということで今日はその模様を紹介する。


紹介患者さんの治療。

主訴は

歯肉の痛みと咬合痛。

治療歴はかかりつけ医で神経をとって被せてから調子が悪いという。

嫌な話だ…

まずは検査から行った。

歯内療法学的検査(2022.11.9)

#7 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#8 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(+), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#9 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

主訴が検査で再現できた。

”勝負”に勝てるかもしれない。

あとは現状がどういう状態か?である。

初診時PA(2022.11.9)

#8の根尖部に大きな病変があることがわかる。

そして大きな根管形成と根管充填。

ここから言えることとしては、再根管治療でこの歯をマネージメントすることはかなり難しいということだ。

恐らく…外科治療一択と思われる。


歯内療法学的診断は以下になる。

#8

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Apicoectomy

治療はApicoectomy一択だ。それ以外の方法があるなら教えてもらいたい。

というわけで年明けのこの2023年最初の歯科治療がApicoectomyであった。


☆この後、外科治療の動画が出てきます。不快感を感じる方はSkipしてください。


#8 Apicoectomy①(2023.1.4)

パピラベースで切開した。

歯肉溝へのセメントの取り残しが凄まじい…

これでは歯周病になる可能性があるだろう。

が、ポケット測定はWNLであった。

人間の体は…

歯周病に容易に負けるほどやわじゃない

ということだ。

が、歯内療法の問題は大いにあるけれども。。。

ということで根尖部を見つけて3mmの切断処置(Root resection)へと移行した。

#8 Apicoectomy② Root Resection(2023.1.4)

リンデマンバーを定規代わりにして3mm切断する。

そのためには

Apexを見つけなければならない。

これがUSCで習った外科治療の原則だ。

また垂直に切断すると、歯根の表面が直視で見えなくなる。

あなたが切断面を見えるようなRoot resectionをしたときには、その切断には既にベベルがついていると考えていいだろう。

これがベベルを付与した切断をしない唯一の鍵だ。

なので上記動画でも切断した歯根の断面は見えない。

すると…

どうやって形成するんだ!

と慌てる人が多い。

ミラーテクニックで逆根管形成するのか?と今まで多々聞かれた。

が、そんなことはしない。

ではどうやってやるか?と言えば、

顕微鏡のポジショニングと患者の頭の位置を調整しなければいけない。

ただそれだけである。

そうした情報はものの本にいくらでも書いてあるだろう。

もしオペをするなら…

そうしたものを読んで手術に挑むことを勧める。

次に逆根管形成した。

#8 Apicoectomy③ Retro-prep(2023.1.4)

形成すると…Gutta Perchaが出てこない。

代わりに濁った液が出てくる。

これは切断面を見る限り…MTAセメントだろう。

ではなぜこんなところにMTAがあるのか?と言えば、上の動画から類推できることがあるとすれば、

かなり口蓋側寄りに充填されている。

このことから予想できることは…

恐らく…前術者は

根管形成で穿孔した!と思った(汗)

のだろう。

そこで魔法の?薬を使用した。しかし、何も起きなかった。。。

そりゃそうだ、

MTAのどこに病気を治す力があるなどと記述されているだろうか?

Torabinejadが聞けば怒りを禁じ得ないだろう。

そういう話ではない。

きちんと学習していないことの怖さがここにもある。

安いセミナーに出て、”いいとこ取りしよう”という心根が間違っている。

いい情報、ためになる情報の取得にはお金がかかる。

それを値切って己が進歩していくことはない。

しかもあなたは卑しくも”プロ”じゃないのだろうか?

“プロ”が情報を値切ってどうしようといいのだろうか?

我々は100円ショップではない。

歯科医師なのだ。

きちんと学びたい人は, Basic Course 2023Advanced Course 2023などへの出席が必要不可欠だろう。

話を戻す。

頬側の歯根の壁にGutta Perchaが残存してしまう。

なぜか?

理由は逆根管形成チップが切れないからだ。

これがシルバーの逆根管形成チップの弱点である。

古くなってダイヤモンドが飛ぶと…途端にGutta Perchaを削れなくなる。

それなら…

P社の逆根管形成チップの方が安いしまだまだいいのではないか?と思ってしまう。

このシルバーのチップ1本購入するのとP社で逆根管形成チップを3種類揃えてもお釣りがくるくらいだ。

コストもこれからの歯科医療では考えていかなければならないだろう。

ということで泣く泣く?シルバーの逆根管形成チップをP社のチップに交換しようとしたが…なかった。。。そこで以前、FEEDで購入した新品のものに交換した。

扱いにくいな…と思ったがこれで逆根管形成を続行した。

すると…意外にも逆根管形成しやすかった。

が、それは新しいからでありこのダイヤモンドが剥がれればその時点でアウトだろう。

ということでこうした材料を使い続けるか?それとも他社のものにChangeするか考えどころである。

私にはまだその答えが出ていない。

ということでStropko Irrigatorで窩洞内を乾燥し、逆根管充填した。

#8 Apicoectomy④ Retrofilling(2023.1.4)

PAを撮影した。

#8 Apicoectomy後 PA(2023.1.4)

問題ないと判断した。

最後に縫合した。

#8 Apicoectomy 縫合(2023.1.4)

ということでこの外科治療は30分程度で終了した。

安定感が出てきたと言っていい。

次回は抜糸の模様をお伝えします。

少々お待ちください。