紹介患者さんの治療。
主訴は
前歯の根管治療を7年前に受けたが1ヶ月前くらいに再発して歯茎が腫れてきた
である。
歯内療法学的検査(2022.12.19)
#7 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#8 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(+), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus Tract(+)
#9 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
確かに#8の根尖部にはSinus tractがあり歯肉が腫脹している。
☆以下、検査動画/臨床動画が出てきます。気分を害する方は試聴をSkipしてください。
この部分を押さえると痛みを訴えた。
主訴が再現できている。
歯内療法で問題が解決する可能性が高い。
が、Sinus tractがあるということは外科的歯内療法の可能性が高い。
あとは…
根尖部が大きく拡大されて根管充填されていれば…外科的歯内療法は決定的だ。
それは…PA次第で決まる。
ということでPAを撮影した。
PA(2022.12.19)
既に大きく拡大されている。これは…
外科治療(Apicoectomy)が濃厚だろう。
CTも撮影していた。
初診時CBCT(2022.12.19)
#8の近心の歯槽骨は完全に消失している。
感染がかなり進んでいることの証左だ。
再根管治療では埒が明かない。
CEJからApexまでは11.0mmである。
長い歯根である。
そして…広角が柔らかい。
オペには有利な口腔内環境である。
ということで診断は以下である。
歯内療法学的診断(2022.12.19)
#8
Pulp Dx: Previously Treated
Periapical Dx: Chronic apical abscess
Recommended Tx: Apicoectomy
ということで年明けにApicoectomyを行うことになった。
#8 Apicoectomy(2023.1.10)
パピラベースで切開した。
理由は
術後の縫合が全て頬側で終わるから
である。
楽だから行うのだ。
長々と患者を自分の趣味?に付き合わせてはいけない。
そして最大のポイントは、
この患者は歯周病の患者でない
というところである。
これは話が逸れるが、昨日のマイクロエンドマンツーマンコースに来た先生にも”先生の歯科医院にペリオの患者はどれくらいいるか?”と聞いてみた。
するとざっくりで
1割程度である
という答えであった。
ペリオの患者を私もそして貴方もほとんど見たことがない。
これが世の中の事実である。
さて、切開しながら根尖部を探すわけだが…術前のCBCTによればApexは容易に見つかるはずである。
少しだけOsteotomyを行ったがこれは容易な外科治療だろう。
ということでApicoectomyした。
例のごとく、切断した部分が見えない!とお叱りを受けそうであるが、それは患者の頭とマイクロスコープの位置を動かして調整しなければならない。
ということで調整すると以下のようになった。
逆根管形成してその様子を確認した。
この時重要なのが、Stropko Irrigatorである。
これに関しては過去記事を参照していただきたい。
問題ないと判断し、Lid Techniqueで逆根管充填した。
PAを撮影し、確認した。
問題はないと思われる。
この時、
”気泡があるじゃないか!”と騒ぐ方は以下の記事を読むことを勧める。
ということで最後に縫合した。
この動画でのポイントはキシロカインのエピネフリンの止血効果はこのように時間が経過すると失われるということである。
以下のブログの記事を参考にしていただきたい。
ちなみにこの患者さんの歯茎は極めて薄い歯肉であった。
女性のような歯茎であった。
次回は1週間後に抜糸である。
しかし…今回の治療は20分程度で終了した。
いよいよスピードが出てきたと言える。
これくらいであればその程度の時間でマネージメントできるようになった。
これは腕の進歩か?実力の安定か?
卒業するときのDr.Schecterの言葉を思い出す。
”Certificationをお前がもらっても…俺はお前を専門医として認めない。でもだ、とにかく、卒業して3年間は専門医としての仕事だけをやれ。間違ってもGPに戻るなよ。そうすれば…お前の技術は進歩し安定する。そのときまた会おう。そしてCaseを見せろよ!”
彼の言葉を信じて…
私は今日もApicoectomyを行っていた。
今しがた、我が息子から”何この動画、キモい!”と言われてもこのブログを作成する自分がいる。
歯科医師は頭がおかしい奴がする仕事のようだ笑
話を戻すと、このように米国歯科大学院の心の絆は深い。
この意味不明な?流行病が落ち着けばまた彼と会うこともあるだろう。
脳出血の影響もほとんど無くなってきた。
今年は医者から遠隔地への移動にGoサインが出るかもしれない。
もしGoサインが出れば…そのときこのHPの症例を彼に見せようと思っている。
ということで次回は1週間後に抜糸である。
その際にまたご報告したい。