Basic Course 2021が今年も始まった。
今年の参加者は計6人。
今日は過去3回分のまとめを報告したい。
(どこにまとめがあるんだよ!というツッコミが参加者の先生から多数入ったことはここだけの話にしておこう)
第1回目は2021.4.11。
今年の参加者はコロナの影響もあり、6名に止まった。
しかし、東京からわざわざ参加してくれる先生も2人いた。
まず今日の話をする前に受講生の先生の自己紹介、私の自己紹介、手伝いをしていただけるアシスタントの自己紹介を行なった。
ちなみに私が脳出血で以前の病院が閉院に追いやられたことはほとんどの方がご存知のようであった。
ということで本日はその記念すべき1回目。
話のテーマは
- 無菌的処置の重要性
- 難治化した場合の原因とその対処法と予防法
- 診査診断
- まとめのテスト(口頭試問)
であった。
1. 無菌的処置の重要性
根尖性歯周炎の原因はバクテリアである。
これを根管治療ではゼロにはできないが減らさなければいけない。
ではこのような状態でバクテリアがゼロになるだろうか?
それは無理である。あなたがいくら効果的にバクテリアを減らしたとしても新たな細菌が根管に侵入してしまう。したがって唾液が侵入してこないようにブロックするラバーダムが必要である。
しかしながら、歯内療法処置には成功率がある。
あなたはこの図にあるそれぞれの根管治療の状態の治療の成功率がわかるだろうか?
レントゲンのどこを見るのか?これがすごく重要である。
そして自分が再治療してその状況は改善できるだろうか?
すでになされてしまったものはどうにもならない。全ては根管治療の何で決まるのか?
ラバーダムすれば全ての症例でうまくいくわけではない。
ポイントは根尖部がどうした処置を受けているか?である。
2. 難治化した場合の原因とその対処法と予防法
歯内療法処置はなぜ難治化するのだろうか?
あなたの根管充填がへぼいからだろうか??
または全ての根管は埋めてしまわないといけないのか??
根管に空洞があると問題(Hollow tube theory)か?
なぜ炎症が激しく出るときがあるのか?それはTorneckにより1966,1967年にはすでに示されていた。
それでも成功率は100%ではないので治癒しない場合があるだろう。
そうした場合に必要なのは外科治療だが、あなたは外科治療ができるのだろうか?
できなければどうするのか?
できるようになるのか?
できる人に紹介するのか?
投げ出すのか?
それはあなた自身が決めなければならない。
では外科治療を行うとしたら何が必要なのか?
なぜ顕微鏡は必要なのか?
なぜ超音波が必要なのか?
なぜバイオセラミック系の材料が必要なのか?
あなたは答えが出ますか??
3. 診査診断
歯内療法処置の前にどの歯に問題があるか?を検査しなければならない。
そのためには診断が必要だ。
その際に重要なことは患者の主訴を再現する(reproduce)ことである。
ではどのような方法で再現すればいいのだろうか?
Sensitivity(病気である歯を病気であると判定する能力)やSpecificity(病気がないものを病気がないと判定する能力)が高い検査が理想的である。
しかしそのような検査はないし、費用が高額だ。
したがって、歯髄に対してはCold, EPT, Heat testを、
根尖部の歯周組織に対しては打診痛の有無、根尖部圧痛の有無、咬合痛の有無を検査する。
それによって歯内療法の病名を決定しなければならない。
病名を日本語で覚えるのは無理だ。世の中の共通言語が英語だからだ。だから病名は英語で受け入れるしかない。
Cold testはどういう場合が根管治療が必要だろうか?
なぜEPTをしようとするのか?必ず必要なのか?
Heat testも同様だ。
それぞれの特徴を押さえなければならない。
Dentalはなぜ2枚取るのか?2枚とったら保険で認められないのではないか??などという心配をする人はエンドの勉強はしないほうがいいだろう。
いやうちの歯科医院にはCBCTあるから大丈夫だろうか??
AAEの診断に関する冊子には設問が7つもついている。あなたはこれに正しい病名をつけれる=答えを出せるだろうか??
答えが出せなければ根管治療など止めることをお勧めする。
なぜか?根管治療しなくても別に人は死なない。
そしてデタラメな根管治療を咎める人も誰もいない。
そして下手すれば患者自身が興味がない。
あなたは針のむしろの上にいるのかもしれない。
歯科医師にとって根管治療は難しいらしい。
しかし難しくしているのはあなた自身に問題があるからではないだろうか??
あなたがどうなろうと誰も興味はないが、少なくともこの仕事を選んでエンドの勉強に来た以上はあなたのところに行けば何かが起こせるであろう臨床家になってもらいたい。
そのためには今あなたがどうすべきか?答えはもう出ているのだ。
この道に来た以上、言い訳は許されない。
そして患者のために力が発揮できる歯科医師であってもらいたいと思う。
さて次回は根管形成、根管充填の話、そして実習だ。
第2回目は2021.5.16に行われた。
テーマは根管形成・根管充填のお話とその実習であった。
歯科医師会に呼ばれるといつもする話。
それはなぜ我々は、SS hand fileをかつて使用していたか?という話である。
Hand Fileを使用して形成するのはなぜだっただろうか?
Step Backで形成する目的は何だっただろうか?
また熊本からやってきた女性の患者はこの歯は抜歯が避けられないと診断されていた。
なぜだっただろうか?
そしてこの歯に起きていた問題とはどのようなものだっただろうか?
あなたが根管治療を行なってこの方に起きたような問題を起こさせないようにするには何が重要だっただろうか?
何を使用してどのようにすればこの方に起きた問題は避けられただろうか?
そして我々はこの作業が終了すれば、作業長を図らなければならない。
それには根管長測定器を用いる。
これはどのようにして使用すればよかっただろうか?
あなたは正しい使用方法を学べただろうか?
そしてこの会社が言っている話は事実だっただろうか?
そこから得られたことを臨床で役立てるには、論文をどのように解釈すれば良かっただろうか?
さて、長さが測れたら次は拡大形成である。
が、使用するNi-Ti Fileが折れないように形成するにはグライドパスが必要だ。
これを使用する器具は色々あるが何がベストと言えるだろうか?
そしてこの面倒臭い作業を避けるには何が重要だっただろうか?
これは必ずする必要がある医療行為だっただろうか?
そして実際の根管形成になるが、今回も昨年と同様、HyFlex EDMを用いて根管形成の説明を行なった。
そして、なぜHyFlex EDMが(今のところ)優れているか?について解説した。
午後からは実習が行われたが、今回の受講生は全員が上手であった。
臨床的にも結果を出せることを祈念している。
第3回目は2021.6.13
に行われた。
テーマは根管充填。
1. Sealer evaluation
シーラーはなぜ必要だっただろうか?
どこかの会社のシーラーが販売中止になったから、今後は必要だ!というようなチンドン屋みたいな勉強会に価値があっただろうか?
私には価値観を感じない。
2. Obturation methods
各種根充方法に関する解説である。
どのような根管充填の方法があっただろうか?
Lateral Condensation
CWCT
CWCTを行うには、Gutta Percha Pointの性質を知らなければならない。
ガッタパーチャに起こる熱変化はどのようなものだっただろうか?
そしてそれを生かすにはどのような位置でガッタパーチャポイント を切断する必要があっただろうか?
あのPathways of the Pulpにも記されている、CWCTに関する結論は何だっただろうか?
3. What is the best obturation technique?
さてこれらの中で、何が”Best”の根充だっただろうか?
世界的に有名なトロントスタディで、Friedmanは私に何と告げただろうか?
USCでも習ったCWCTのテクニックの何がお気に召さなかっただろうか?
Pathway of the Pulpの新しい版には何と記載されていただろうか?
BC sealerで行なった、Single pointでの根管充填の成功率はどれくらいあっただろうか?
そしてFriedmanが尊重したのは、誰のどの論文の内容だっただろうか?
根管充填は大切で不可欠なものだっただろうか?
唯一無二の根管充填方法はあっただろうか?
ということでこの日の講義は終了した。
次回は第4回目で、 7/25 (日)に根管貼薬、仮封、根管洗浄- 1(根管洗浄剤の種類とその選択)の話を行なっていく。
そしてこの日私が一番嬉しかったこと。
それは、唯一開業されている歯科医師の先生からの一言であった。
先生のおかげで根管治療がスピーディーになった。1または2回で治療が終了するようになった。本当にありがとうございました。
という一言である。
私はセミナーをしていて嬉しくなるのはこうした感想を聞いた時だ。
何のためにセミナーをやっているのか?わからなくなる時もあるが、このような感想をいただけると今後も頑張ろう!という気になる。
H先生、嬉しい感想をありがとうございました。
そしてもう一つの参加者からの感想。
その方が開業する地域で参加した勉強会での様子を報告してくれたが、悲しいものであった。
「皆さん何が正しいのか、今わかっていることは何なのか?」 を追求することがなく、
「私はこうやっている」 のオンパレードだという。
論文なんて一つも出てこない。
そりゃそうだ、読んだこともないんだから。
一方でこのような被害を受ける先生もいるのである。
しかし、私は何れにしても、
次回からも参加者の先生に喜ばれるようなセミナーができればと思っています。
それに尽力しますので、参加者のみなさん今後ともよろしくお願いいたします。