旧まつうら歯科医院で治療した患者さんの、バイト先での経過観察。

患者さんは50代女性。

主訴は前歯の歯肉が化膿した。

約30年前にかぶせておりその際に根管治療を初めて受けているそうだ。

2017.9にSinus tractに気が付いたそうである。(それまでには違和感があったとのこと)

痛みに度合いに関しては、過去には10/10の時もあったが初診時は2/10であった。

産婦人科関係で貧血があったくらいで健康状態は良好とのこと。

Sinus tractが認められた。

歯内療法学的検査を行なった。

#8 Cold+3/6, Perc.(-), Palp(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#9 Cold NR, Perc.(-), Palp(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#10 Cold+3/3, Perc.(-), Palp(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

PAを撮影した。

歯内療法学的病名は以下になる。

Pulp Dx: Previously Treated

Periapical Dx: Asymptomatic apical periodontitis

さて治療はどうなるだろうか?

患者は痛くもなんともないのである。

再治療か?外科治療か?

ヒントになる論文は皆さんが大好きな?Ricucciの論文から引用してみよう。

In vivo, histo-evaluated study

N=24 had PARL with Sinus Tract.

Extracted and evaluated “Are there Extraradicular Infection?” histologically.

この論文ではSinus Tractに関して以下のようにまとめられている。

Prevalence 8.5~18%

More common in teeth with large lesions(5mm>)

Route of drainage of the abscess

Usually asymptomatic

longstanding infectious processes.

May present biofilms adhering to the outer root surface or cohesive actinomycotic bacterial colonies present within the lesion body

24人の患者を分析すると以下のようになった。

17/24 had Extraradicular Infection(71%)

そしてその17人であるが、

10/17 had Calculus on the surface of Apex(60%)

ここからSinus tractがあるということは以下のような可能性がある。

Sinus Tractの存在

1. Sinus Tractの存在はExtra radicular Infection, ApicesでのPlaque, Calculusの付着を惹き起こさせるので、メンテナンス時には注意が必要

2. 治療が必要な理由を患者に説明する必要性あり

3. 難治性の可能性があり、治療前に外科治療の可能性があることを伝える必要性(ガッタパーチャを入れてのデンタル撮影必須)

4. メンテナンスに対してリスクを与えるため、衛生士への周知・教育が必要

Sinus tractがあるということは根尖病変と口腔内が交通しているということである。

ということは、根尖病変は口腔内に導かれるが同時に口腔内の唾液などはsinus tractを介して根尖部に付着する。

ということは病理的には歯石が根尖部に付着する可能性が高いということである。

この論文には病理の写真も載っていた。そこには歯石が沈着した根尖部がアップされている。

歯石が根尖部に付着しそこにバクテリアが付着してしまえば難治性である。

これは外科的に取り除くしか道がない、ということになる。

したがってApicoectomyを行なった。(2017.11.18)

その後、歯茎の腫脹やSinus tractは消失した。

1年が経過し、以下のようなPAが得られた。(2018.11.17)

そしてこの後に私が倒れたため予後が追えなくなっていたのである。

その患者さんがこの歯科医院に来院してくれてPAが撮影できた。

Apicoectomyをしてから3年2ヶ月経過している。

根尖病変は消失していた。

痛みや違和感も歯茎の腫脹、Sinus tractも消失していた。

さてこの時に患者さんと以下のような会話になった。

この歯はもう抜くしかないという流れで当時話が進んでいたので残せるとは思いませんでした…それがこのように残すことができて本当に嬉しいです。

先生が倒れたと聞いた時、私は今後どうすべきなのか?かなり悩みましたが回復されて本当に良かったです。これからも定期的にチェックしに行きますのでよろしくお願いいたします。”

私の中では経過観察ではこのような話しか通常しない。

非難されたり、恨まれたりしたことがない。

それはこの人に限らず、である。

それはなぜなのだろうか?

自分が信じていることをどれほど患者さんに提供できるか?だと思うが、このようなお手軽なApicoectomyは私にとっては何の問題もない処置であるからだ。

さて、明日は私が取り組んだもののうまくいかなかったCase(うまくいかなかったのでやり直した)を紹介したい。