紹介患者さんの治療。
主訴は
以前、根管治療した部分が死ぬほど痛かった…トントン歯を叩くと特に痛む
であった。
かかりつけ医が除冠してプロビジョナルレストレーションの形成・装着まで行っているそうだ。
まず検査を行った。
歯内療法学的検査(2023.2.22)
#2 Cold+4/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#3 Cold N/A, Perc.(++), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
ミラーで#3を叩くと顔を背けられた。
この痛みです!と患者さんからは言われた。
主訴が再現できている。
適切な治療を行えば主訴が改善する可能性が高い。
PA(2023.2.22)
#3のMB根の根尖部に病変と思しき透過像が見られる。
ここが痛みの原因だろう。
CTもかかりつけ医からいただいていた。
CBCT(2023.2.22)
MB根の根尖部に大きな病変が見られる。
原因はレッジか?ラバーダムなしの根管形成か?私にはわからない。
しかし、ここが打診痛の原因だろうということは濃厚そうだ。
MB根の分析は以下になる。
①MB2はあるがMB1に合流している。3mmで切断した場合、MB1とMB2は以下のような形になる。
MB1とMB2はほとんど同心円上にあると言っていいだろう。
形状からすると円形か楕円形に近い円形になるはずである。
頬舌的に3.5mm程度切断するだけで終了する。非常にEasyな外科治療になると思われる。
②MBのApexはCEJから10mmの位置にある
③Apexに到達するには歯槽骨の削除が深さにして1.0mm必要
④上顎洞に触れるリスクがないので安全に治療ができる
恐らく、数十分で終了するだろう。
歯内療法学的診断(2023.2.22)
#3
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Apicoectomy
推奨される治療はApicoectomy一択である。
患者さんは治療計画に同意したので治療になった。
☆以下、外科的な動画が出てきます。不快感を感じる方は試聴をSkipしてください。
#3 Apicoectomy(2023.2.22)
口角がかなり硬い患者さんであったので#7の近心に縦切開をいれる予定であったが、縫合の面倒臭さを考慮して#6の近心にいれることした。
右利きなので、左から右へ進むFlapの剥離が私はやりにくい。
ああ、両利きだったら…といつも思う瞬間だ。
これから両方使用できるように練習してみようと思う。
Flapを開いたら根尖部を探さなければならない。
さあどこにあるだろうか?
こういう状況で治療するのでMBのApexはCEJにあるMBの位置と同一線上にあることは明白だろう。
CEJからApexまでの距離は約10mmであるのでペリオプローブで位置を確かめながら治療を行った。
このペリオプローブの先端の位置にMBのApexがあるはずである。
ここを削合した。
鋭い短針でMBのApexを触れてその位置を確認している。
その周囲の歯槽骨を削合した。
これでRoot resectionできる準備は整った。
ここで根切である。
その際の切断の深さはたったの3.5mmである。
リンデマンバーの長さの3.5/11である。
実にeasyだ。
切断したRoot tipは小さすぎて上の動画の0:52あたりでサクションで吸引されてしまっている。
その後、肉芽を可能な限り除去して止血を図っている。
が、止まりそうにないと判断した私はRacelletを何個か入れて止血を図るが…止まらない。
となればどうするか?であるが、
MTAで逆根管充填していた時代は意地でも止血していた。
なぜか?と言えば、
血液がMTAに付着し流れてしまい、MTAが充填できないから
である。
しかし、今はLid Techniqueの時代である。
しかも
BC sealerやBC puttyに血液がついても物性が落ちるという報告がない。
(物性は変わらないという報告はあるが)
これは止血にそれほど神経を使わなくてもいいということになる。
かつてのように、
そこまで止血に神経質にならなくてもいい
のだ。
時代が変わった瞬間である。
これは福音である。
ということで逆根管形成を行った。
その最中に止まるかもしれない。
先日のAdvanced Courseの実習の時にもわかったことであるが、
3mmきちんと逆根管形成するのは難しい
のである。
それを意識して3mmきちんとやったつもりだ。
バーが全て収まるまで形成している。
その後、Abou-Rassのプラガーでガッタパーチャを折り畳んでいる。
隠れた?工夫だ。
問題ないと確認して、Lid Techniqueで逆根管充填した。
PAを撮影して確認した。
深さは問題ないと判断してこの日のApicoectomyは終了した。
要した時間は…
たったの24分であった。
そのうち縫合が12分なので、
Apicoectomyを行っていた時間はたったの12分である。
慣れてくると?このように早くなるのだろう。
しかし慣れよりも、
大事なのは準備だ、ということが改めて実証されたと言っていいだろう。
先生方は、以下のように術前に用紙を貼り付けているだろうか?(以下は別症例の外科治療時の風景)
このように準備してApicoectomyを行っている人を私はほとんど知らない。
かつてDr.Schecterがそんな私の写真を撮って、USCの外科プレゼンにあげていたのを思い出す。
こういうことは地味だが、非常に重要なことである。
このように準備がきちんとできれば、こんな治療は全く何の問題もない処置だ。
この日の患者さんはこの方だけであり、14時から開始されたApicoectomyは、治療終了+説明終了が14:30である。
終了次第片付けをして帰った。
歯科医院が終わったのは15:30である。
うちは、
予約の患者さんの治療が終了し、片付けが完了すると、その日の診療は終わりになる
ので、電話がつながらないかもしれない。
そんな時は歯科医院の留守電に入れていただければ受付が対応します。
次回は抜糸、その次は半年後に経過を見ていくことになる。
それまで少々お待ちください。