バイト先での治療。

主訴は

右上の歯が痛くて物が噛めない…

であった。

歯内療法学的診断(2023.2.28)

#3 Cold+5/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#4 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#5 Cold+4/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

検査で主訴は再現できた。

咬合痛が確かにひどいようだ。

この時重要なのは、

Bite Testをどのような道具を使用して検査するか?

である。

Bite Testは日本ではほとんどの人がしない試験だろう。

どうやって行うか?もモザイクだ。

以下の道具を使用する。

Tooth sloothだ。

これを噛ませることで咬合痛があるかどうかを判断する。

この咬合痛検査で主訴が再現された。

であれば…

適切な治療で主訴は改善できる可能性が高い。

PA(2023.2.28)

患者さんによれば、もう20年前くらいにInlayを入れたという。

しかし、歯牙は破折していない。

このことは

根管治療した歯はクラウンにしなければならない(特に臼歯は)

というこの業界の常識?を否定していることになるが…

人は不思議な?生き物だ。

それとも論文の内容が実生活とズレているのか?

それは私にはわからない。

CBCT(2023.2.28)

#4の根尖部には大きな病変がある。

これに対してどう対応すればいいだろうか?

頬側根管が本来の位置よりも大きく頬側に振れている。

偏位をしている。

これは根管形成でおきたものだろう。

尖通せずに大きく頬側に偏移して、術者は根管治療を諦め、根管充填?したのかもしれない。

口蓋側は石灰化しているように見える。

であれば、誰が再根管治療しても主訴が改善できなくなる。

Apicoectomyを行うと以下のような治療計画になる。

歯槽骨頂からApexまでの長さは約11mmである。

長い歯根である。

また、Apexを発見するのに頬側の皮質骨を削る必要性は若干はあるだろう。

が、それほど大きな削合にはならないはずだ。

もしかすれば外形が透けて見えるかもしれない。

さらに、Apexから3mmで切断しようとすれば、

頬舌的に5.5mm切断する必要がある。

リンデマンバーの半分刃を入れる必要がある。

深さに惑わされないようにしなくてはならない。

そして形状は豆形だ。

根管の数は通常1根であるが頬側には偏移したGutta Perchaがある。

つまり、

このGutta Perchaで根管充填されている部分も逆根管形成しながら、歯根の形状に相似形の逆根管形成形態になる必要がある。

頭を使うとしたらそれくらいだろう。

上顎洞を傷つけるリスクもない。

つまり、手術内容自体は難しくも何ともない。

Very easyである。

歯内療法学的診断(2023.2.28)

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx:Apicoectomy

ということで患者さんは時間がかかる再根管治療よりも、数十分で終了する(であろう)Apicoectomyの方に同意されたため、その日に治療が行われた。


☆この後、手術動画が出てきます。不快に感じる方は視聴をSkipしてください。


#4 Apicoectomy(2023.2.28)

右上なので、右利きの私には左から右への剥離がやりずらい。

それ以外は特別何も考えることがない外科治療だ。

Apexを見つける必要があるが、歯槽骨長から何mmにあっただろうか?

が、である。慣れてくるとこのようなことをしなくてもこの辺りにあるだろうという想像がつくようになる。

どうだろうか?

私にはここにApexがあるに違いないというふうに見えて仕方がない。

わかるまで?動画を見てください。

もしくは患者さんで見るのに慣れるしかないだろう。

Osteotomyを行い、Apicoectomyを行った。

メチレンブルーで染め出して以下の形になるかどうか確認した。

メチレンブルーは根管のあるべき場所を示している。

Vertucci 1974 Root canal morphology of the human maxillary second premolar

それによれば、この歯の根管は頬側に1根、口蓋にもう1根の計2根管であった。

75%でなく、25%の方の根管形態であった。

Type4か5か6か7のいずれかであるが、外科治療なのでその上部の構造がどうなっているか?はあまり関係ないことがわかるだろう。

が、この図の形態を意識して逆根管形成する必要がある。

問題ないと判断し、逆根管充填した。

PAを撮影した。

問題ないと判断し、縫合した。

ということでこの日の治療は終了した。

30分もかかっていない。

次回は半年後である。

また経過を報告しますのでそれまで少々お待ちください。