紹介患者さんの治療。

主訴は

右も左も奥歯がすごく痛い、前歯も痛い。夜も寝れない。。。

である。


☆以下、検査動画が出てきます。気分を害する方は視聴をお控えください。


歯内療法学的検査(2023.3.25)

#14 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(++), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#15 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

根尖部の圧痛がいつも感じる痛みを再現しているという。

適切な治療を行えば、主訴を改善できる可能性が高い。

これは何気ない表現であるが、

マイクロエンドコースなどの実習Onlyのコースのみの受講者には一生理解ができないだろう。

あなたは、治療の技術もさることながらなぜそれを行うのか?という診断にも目を向けなければならないのである。

マンツーマンコースだけでことたると思ったら大間違いな理由がここにある。

歯科治療は模型を相手に行うのではないのだ。

人を相手に行うのである。

どれほど多くの人がこの事実に目を向けているだろうか?

PA(2023.3.25)

近心根の根尖部に大きな根尖病変が見える。

CBCT(2023.3.25)

MB

MBのApex周囲には根尖病変がある。

ここはRoot Resectionも必要だ。

が、前医は頭がどうかしているのだろうか?

歯を削りすぎてどうしようもない状況に陥っている。

患者に聞けば、

前医は矯正医でなぜか歯内療法もしている

という。

HPを見てどういう人間か?確認したが、恐らく小金稼ぎだろう。

どうでもいいが、こういうことは一番やってはいけないことだ。

専門医なら尚更である。

この御仁は勉強会を主催されていたが、この方に我々は何を学ぶというのだろうか?

ここまで削っても(本来はこんなにも削らないし削る必要性もないが)、症状が取れないのであれば、通常、外科治療一択である。

そういう選択肢がないので患者は路頭に迷うのだ。

あなたが外科治療ができるか?できないか?は患者に何の関係もない。

できなければ、できる人に紹介するのが人の道だろう。

またこの

穿孔部からの出血が原因で私はBC puttyで根管口を塞がず、ペントロンのβから出てくる、“アモルファス型のGutta Percha “で根管口を塞いでしまったため、穿孔の封鎖ができていないのである。

ということはこのことからMBは穿孔のやや上部の根管の位置で切断しなければならない。

ということは多くのMBの頬側の皮質骨を犠牲にしてしまう…

やはり面倒なことでも、やり切るのが後で自分に跳ね返ってくるという意味では、“最上”だろうと私は考える。

Just do it!である。

DB

DBも異常に削合されている。

が、根尖病変はない。

ここも異常なほど歯牙を削合している。

破折が起きたらどうするつもりだろうか?

矯正医だから俺は知らないでは、患者は納得しないだろう。

が、ここはBC sealer+BC puttyで根管充填するだけでいいだろう。

P

P根には病変はない。

ここもBC sealer+BC puttyで根管充填するだけでいいだろう。

以上を考察すると、

①MBのApicoectomyが必要

②DB, Pは病変がないので切断しない

③歯根が薄いので破折の危険性がある。が、#15があるのでそこが残れば咬合力が分散されて#14の生存率が伸びる可能性はある。

が、うちの歯科医院は保険診療をしていないので費用対効果が悪いと思えば抜歯してインプラントを行うことを勧める

と言う話をしたが、

Implantは歯牙が保存できないと言う結論が出るまで避けたいと言う患者さんの強い意志があったため、

歯牙を保存する方向で治療計画を立てることになった。

歯内療法学的診断(2023.3.25)

Pulp Dx:Previously treated

Periapical Dx:Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Core build up w/wo Fiber Post→Apicoectomy

ということで、この日に支台築造を行った。

MBとDBの間は形成のしすぎで穿孔があった。

そしてMBの根管口にはBC puttyを置けなかったため、私はペントロンのβのGutta Perchaで根管口を塞ぐのだが、これが後々治療に規制を産むことになるのは前述の通りだ。

ここは外科時にリペアする必要があるが、DB根はBC sealer+BC puttyで封鎖している。

MBはβで根管口を封鎖してしまったためこのことから私は否応なしにMB根の頬側側の歯槽骨を削り、歯根を長めに切断しなくてはならなくなったのだ。

このことからも2回法で治療を行うのであれば水酸化カルシウムで貼薬した方がよかったかもしれない。

それか90%のTCAを使用して、意地でもBC puttyで根管口を塞ぐべきだったか?ということである。

このようにケースから学べることはとても多い。

が、私が思うにやはり面倒なことでもやり切るのが後で自分に跳ね返ってくるという意味では最上だろうと私は考える。

というわけで、この日に外科治療を行った。

恐らくかかる時間は1時間程度であろうと術前に予想した。

#14 Apicoectomy(2023.3.26)

パピラベースで切開した。

Osteotomyし、根尖部の把握を行った。

分岐部付近に穿孔があるので、バーを約6mmの深さで頬舌的に歯根を削合する必要がある。

Apicomarginal defectにならないように歯槽骨を削合する計画であったが、動画の通りその可能性は全くないだろうと思われる。

Root resectionしたが、これがなかなか難しい。切断片が近心にへばりつくなど頭を悩ませる事象が続発している。

このようにApicoectomyは、

長めに歯根を切る時は難しくなる

ということを記憶していたほうがいいだろう。

その意味でも先端(Apex)から3mmで切断するだけでいいほうが簡単なのである。

外科治療を行おうとしている人はこの事実を覚えておく必要がある。

逆根管形成を行ったが頬舌的に形成幅が広くなったため、難症例になっている。

Retroprepはこのように毎回新品の超音波でないと切削ができないと私は考えている。

一度使ったものでRetroprepしているともたついて時間がかかる。

時間をお金で買うという行為は患者さんにとっては良くないことだろうか?

Lid techniqueで逆根管充填した。

ということで縫合して終了した。

ペリオの患者ではないので歯肉に過度なケアは不要である。

PAは以下になる。

次回は、右上の再根管治療を予定している。

その際の模様は、またご報告したい。