紹介患者さんの治療。
主訴はない。
紹介された先生からの主訴はあった。
”ファイルが折れてしまった。治療費はうちが負担するので根管治療をしてほしい”
であった。
歯内療法学的検査(2021.4.5)
#28 Cold+4/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#29 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#30 Cold+6/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
主訴はないが、打診痛と咬合痛があった。
PA(2021.4.5)
CBCT(2021.4.5)
根尖部に病変がある。
歯内療法学的診断(2021.4.5)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Re-RCT
推奨される治療は再根管治療である。
患者さんは治療計画に同意した。
が、再根管治療の途中で、である。
“今まで歯科医院に行ってこんなに口を長く開口したことがない…顎がきつい。。。”
と途中で言われてしまった。
えっ?まだ10分ですけど…
しかしそれは仕方がないので、私はこの日、再根管治療を諦めて支台築造だけ行い、Apicoectomyを提案(閉口したまま治療が可能)し、別日にApicoectomyを行った。
別日にApicoectomyを行い、術後にPAを撮影した。
#28 Apicoectomy(2021.4.21)
ちなみに、折れたファイルは逆根管形成をしても除去できなかった。
これを必ず取らないといけないのだろうか?
以下の症例では問題が出ていない。
#19, 30 根管に折れ込んだ破折ファイルを除去せずに根尖病変が治癒するのか?〜#19/30 Re-RCT 6M/1yr Recall
ということでどうなった?だが、ここからあっという間に2年が経過した。
#29は治癒しているだろうか?
歯内療法学的検査(2023.4.5)
#28 Cold+4/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#29 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#30 Cold+6/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
術前にあった臨床症状は消失していた。破折ファイルを除去していないのに、だ。
患者さんは検査の紙を見て2年前を思い出したようだ。
#29 Apicoectomy 2yr recall(2023.4.5)
PAでは大きな違いを見せている。
CBCTを撮影した。
#29 2yr recall CBCT(2023.4.5)
術前の病変は消失していた。
破折ファイルは除去していないのに、である。
このことからも従来の論文の主張どおり、
破折ファイルを必ずしも除去する必要がない
ということがわかるだろう。
術前と術後を比較してみた。
術前(2021.4.5)vs 術後 2yr(2023.4.5)
ちなみに、私が今現在、楽しみなのは以下の症例でどうなるか?だ。
この症例で歯槽骨が回復すれば、
破折ファイル=悪?
という理論?は、またも排除されるだろう。
ということで、あなたに必要なのは、
魔法使いや道化師のようなテクニックではなく、何をすれば病気(根尖病変、根尖性歯周炎)が治癒するか?知ること
だろう。
そうした臨床家が患者さんから支持される臨床家であろうから。
ということで次回は来年4月である。
またその模様を報告したい。
それまで少々お待ちください。