紹介患者さんの治療の経過観察。

当時の主訴は

左右の奥歯の治療をしたい。物が噛めなくて困っている。

であった。

歯内療法学的診断(2022.3.7)

#29 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-),BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#30 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(-),BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#31 Cold+6/1, Perc.(-), Palp.(-),BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

主訴は再現できている。

ちなみに左側は以下のようになる。

#18 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#19 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#20 Cold+5/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

こちらも咬合すると痛く、打診痛があると言う。

主訴が再現できている。

PAをそれぞれ撮影した。

PA(2022.3.7)

偏近心で撮影すると破折ファイルはより遠心に位置している。

と言うことは

このファイルが折れている根管はMB

である。

意味がわからない人はBasic Course 2023で説明します。

左側もPAを撮影している。

これも偏近心で撮影すると、既製ピンがある部分はより小臼歯側に近い部分にあるのでこのピンが存在するのはML根である。

#30のMBにはファイルが、

そして

反対側の#19のMLには既製ピン+根尖部に破折ファイルが入っている。

ファイルを破折させて冷静に物が考えられなくなったのだろうか?

まあそれはさておき、CBCTを分析してみよう。

CBCT(2022.3.7)

主訴の#30から見ていこう。

近心根はJ-shapedがあり、歯根破折も疑われる案件だがそれを確認するには直視しかない。

CBCTではわからない。

直視できなければそれはあくまでも”可能性”で現実ではないのだ。

ただ、アメリカでは…抜歯になるだろう。

しかしここは世界一、インプラントが嫌いな国民が多数居住する国、日本だ。

その思惑は通用しないだろう。

ここ最近も不思議な出来事が複数あった。

いずれも名のある?医療機関が恐ろしい診断を下してその道(インプラント道)に誘導しようとしている。

実に恐ろしいことだ。

一方はその道の”専門”であるにもかかわらず、治療方法はないと”抜歯→インプラント”を進めている。

そしてもう一方はこれもその道の”専門”であるにもかかわらず”その道の専門の歯科治療”を行わずに、このままでは抜歯に将来なるから歯を抜いてインプラントを入れた方がいいと宣っている。

しかしながら、いずれも私の臨床哲学に反した人たちだ。

こう言う人間の下で歯科医療をしている人たちはさぞ気の毒だろうが、私と一生わかりあうこともないだろう。

そう言う人は、そう言う人生を歩めばいいだけだ。それで幸せかどうかは患者ではなく、あなたが決めることだからだ。

ただ私が治療した患者さんの口腔内の人生に迷惑をかけないでほしい、ただそれだけである。

あなたたちはあなたちの信じる道を歩けばいいのだから。

私はあなたたちと関わることは一生ないのだから。

#30 B

#30 M

#30 D

#19 B

#19 M

#19 D

ここもJ-shapedで破折だ!抜歯だ!!GBRだ!!!インプラントだ!!!!と火をつけられそうな案件である。

何度も言うが、

そうしたいならそうすればいい、とさえ私はもう言う。

話を戻して、最後に診断を行なった。

歯内療法学的診断(2022.3.7)

#19, 30

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Re-RCT

ほとんど根尖部の形成を行なっていないことから、

また破折ファイルが存在し根管形成がほとんどできていないだろう、

と言う予想から

外科治療ではなく両方とも再根管治療を行うことになった。

が、破折ファイルの除去はできるかもしれないし、できないかもしれない。

が、重要なことは

根管形成ができるか?であり、ファイルが取れるか?ではない、と言うことも患者さんには伝えた。

根管形成ができれば治癒する可能性は90%あることも伝えた。

患者さんは治療に同意した。

まず#30の再根管治療から行われた。

#30 Re-RCT(2022.3.7)

MBで破折したファイルは除去できなかったが、

バイパス形成してApical Foramen-0.5mmの位置まで根管形成はできた。

根管充填した。

MBに折れたファイルは除去できなかった。

が、MBからシーラーパフはある。

これで治癒するのだろうか?

わからないが適切な位置まで根管形成・根管充填できているので、このまま経過を追うことになった。

治癒しなければ、Apicoectomyだ。

この後、別日に#19の再根管治療が行われた。

#19 Re-RCT(2022.8.5)

#30同様、またも根尖部で破折したファイルは取れなかった。

が、根管形成は理想的な位置までできている。

遠心はオーバー気味であったのでGutta PerchaのサイズとテーパーをアップさせてBC sealerと根管充填した。

ファイルは取れていないが、シーラーパフはある。

適切に歯内療法できている証拠である。


さて上記の治療から約6ヶ月〜約1年が経過した。

判断するには少し早いが、根尖病変は治癒しているだろうか?

#30 Re-RCT 1yr recall(2023.2.16)

#30の近心に存在していた根尖病変は治癒しているように見える。

が、もちろんこれはPA像なのでなんとも言えない。

#19 Re-RCT 6M recall(2023.2.16)

こちらも治療時と比べるとかなり良くなっている。

が、PA像だしまだ治療して半年だ。まだ治癒には時間がかかる。

ここでPAだけであるが、治療前後を比較してみた。

右下は信頼たる物かもしれない。

患者さんには、#19の治療が1年後になる2023.8にCBCTを撮影してもらうよう要請し、快く受諾していただいた。

かかりつけ医には最終補綴を装着してもらうように要請した。

さて。

この症例では、

折れたファイルを除去もしていないのに根尖病変が治癒している。なぜか?と言えば除去しなくても根管形成ができたからである。できなければ、Apicoectomyを行うだけである。

これは不思議な現象だろうか?と言えばよくある話だ。

折れたものを意地でも取ろうとする考え方は捨てた方がいいとわかるだろう。

あなたは問題を(それがあなたが起こした問題?ではなくても)どうにかしようと足掻くその執念を捨てた方がいいだろう。

世の中、やることは山ほどあるのだから。

手ではなく、頭を使うことが治療では重要である

ということだ。

学生時代に不器用な、いつも実習が遅い最下位グループにいた私でもできるのだ。

あなたになぜそれができないと言うのだろうか?

それはできないのではなく、やろうとしないだけだろう。

今、できないのであればできるように努力する、または将来に向けてその環境を整備する(準備する)ことがあなたには必要だろう。

何かできないことに対して言い訳をするのではなく、できるように努力するか、できる人に紹介するのが人の道だろう。

ではそれをいつやるのか?

今すぐに!明日からすぐに!でしょう。

と言うことで次回は今年の8月の経過観察でのCBCTの比較をお待ちください。