バイト先での治療の経過観察。
バイト先というのは現状、私は北九州・折尾の学研都市歯科・矯正歯科のみに行っている。
米国から帰国した2016年からなので、今年で7年目だ。
治療してきた患者さんもだいぶ増えた。
ここの歯科医院の特徴は今まで治療した患者さんの記録をきちんと取ってくれているというところだ。
このように記録に残してくれる歯科医院を私は他に知らない。
しかも、以下のようにExcelにリストを作成して月一で渡してくれる。
今まで治療してきた患者さんは300人を超えていた。
こういう細かい配慮をしてくれるのはこの歯科医院だけである。
これが長い付き合いにつながっていると私は思う。
いつかこの全てのケースとうちの歯科医院のケースについて成功率を算定したいと思っている。
巨大なRetrospective studyになるだろう。
それはさておき、そこでIntentional Replantationを行った患者さんの予後を見る機会があったので今日はそれを報告したい。
ちなみに、過去記事は以下である。
上顎小臼歯のような大臼歯〜#2 Intentional Replantationと口蓋に問題がある(?)場合の外科治療のアプローチ方法
術前の主訴や歯牙の状態を観察すると以下である。
主訴は
根の先に膿が溜まっている…咬合痛もある。鼻詰まりもあり頭痛もある。歯科治療が必要だと思う。
である。
歯内療法学的検査(2022.10.13)
#2 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#3 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#4 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#2に咬合痛と打診痛があった。
CBCT(2022.10.13)
#2または#3の細菌感染が原因で上顎洞内に感染が起きている。
歯性上顎洞炎の可能性がある。
#2から見ていこう。
#2は小臼歯のような歯根をしている。
そして
B,Pの2根管性でありこれは上顎の小臼歯のような歯根
をしている。
つまりそれほど抜歯が難しくない可能性が考えられる。
次にB,Pを見ていこう。
#2 B
根尖病変が上顎洞と交通している。
感染がかなり進行していることの証左だ。
また、頬側は途中で根管充填が終了している。石灰化している可能性がある。
そして、口蓋側は太くApex付近まで形成・根充している。
この3つの事象を考慮すると、
再根管治療<<外科治療(Intentional Replantation)となる可能性が高い。
#2 P
根尖病変が上顎洞と交通している。
感染がかなり進行していることの証左である。
口蓋側は既に太くApex付近まで形成・根充してある。
歯内療法学的診断(2022.10.13)
#2
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx:Core build up with Fiber Post→Intentional Replantation
推奨される治療は、何度もしつこく述べるが
根尖病変が上顎洞と交通しており、感染がかなり進行している
頬側が途中で根管充填が終了している。石灰化している可能性が高い
口蓋側が太くApex付近まで形成・根充してある
ことから、再治療でなくIntentional Replantationを選択し患者さんは治療に同意された。
また、#2 Intentional Replantationで上顎洞炎が治癒しなければ、#3のApicoectomyも行う必要性があるということは患者さんに伝えた。
ということで、治療前にクラウンを除去しレジン+ファイバーポストで支台築造している。
#2 Intentional Replantation(2023.1.24)
脱臼して抜歯した。
脱臼すれば1分で抜歯ができる。
それを使用しなければ…何時間もかかる可能性がある。
どちらを選びたいか?はあなたが決めることだ。
その後、抜去歯牙を生食に浸して血液を除去し、歯根を観察したが破折はなかった。
したがってApicoectomyに移行した。
CBCTを参考にRetroprepの形態を述べたい。
B,PをRetroprepするとその二つの窩洞は容易につながることがわかるだろう。
最終的には以下の形態になる。
歯根の外形と相似形になっていることに注目してほしい。
これを意識して形成しなければならない。
その後乾燥して逆根管充填した。
PAを撮影した。
問題ないと思われる。
抜歯窩へ戻してPAを撮影した。
問題なく終了した。
次回は1ヶ月後に動揺をCheckする予定である。
その際に動揺がなければプロビジョナルレストレーションの形成・印象・装着に移行する。
ということであったが、患者さんの都合で2ヶ月後のCheckとなった。
この日のバイトでCheckをさせていただいた。
歯内療法学的検査(2023.3.28)
#2 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#3 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#4 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
術前にあった#2の打診痛、咬合痛は消失した。
#2 Intentional Replantation後 2M later CBCT(2023.3.28)
術前にあった上顎洞内の感染がほぼ消失している。
Intentional Replantationの効果が認められる。
術前・術後を比較すると以下である。
この症例からわかることは
“Intentional Replantationの持つパワーの強さ”
だろう。
そして術前の上顎洞の感染は、
歯性上顎洞炎であることが濃厚
であった。
もちろん、今後の経過を見ないといけないが耳鼻科的な治療は恐らく不要だろう。
ということで、この後は最終形成・印象・Finalの装着で次回は検査予定である。
また来月皆さんに報告したい。
それまで少々お待ちください。