紹介患者さんの治療。
主訴は
右上の奥歯が噛むと痛い
であった。
☆検査動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#3 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#4 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#5 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
主訴は再現できていた。
あとは適切な治療ができるかどうかで決まる。
PAを見てみよう。
PA(2023.3.10)
#4は歯根吸収で?根尖部が吸収されている可能性がある。
この状況でApicoectomyをして3mm切断すると不幸が待っているかもしれない。
そこは“考察”しなければならない。
それが
“臨床力”
だ。
初診時 CBCT(2023.3.10)
#4の歯根の長さを計測するにはCBCTの方が正確だろう。
CBCT上でCEJからApexまでの長さを計測してみた。
#4
CEJからApexまで4mmしかない。
3mm切断すると…
不幸しか待っていない。
では、再治療を行うべきか?といえば、
もうすでに大きく形成されているような歯根である。
しかしながら、除冠して最大拡大号数(Master Apical File)の
“様”
を確かめる必要性はあるだろう。
もし形成できないほどスカスカであれば…支台築造して、Apicoectomyが決定的になる。
しかしそれは試してみなければわからない。
再治療をしなければ事実が掴めないのである。
CBCTを撮影しようとそこは無理だ。
このことから何がわかるか?といえば、
歯内療法はコンピューター治療?(そんなものあるのか?)によって駆逐されない
と言うことがわかるだろう。
が、肝心の人間の方がDQNだったりするわけだが
つまり、
この治療分野(歯内療法)は決して世の中から消えない治療
であることが分かる。
機械にはできないのだ。
考察力を有した臨床家にしか勝利はない。
ちなみに反対側は?といえば以下のようである。
#13
Apexまでは7.6mmで根尖病変もない。
ここから言えることは…
#4の歯根は外部吸収によってApexから3mmに歯根吸収が起きた可能性が高い
と言う事実である。
De Deus 1975 Frequency, location, and direction of the lateral, secondary, and accessory canals
によれば、
この側枝の枝分かれ(60%)が最も多様な部位は既に消失されている可能性が高い。
つまり、3mm切断しなくてもいい可能性が高いのである。
では、その上でどう治療していくか?だが、
まず、#4の再根管治療を行いApexまでスカスカ感が強ければ、Apicoectomyに置き換えると言う作戦である。
しかし、この歯はすでにApexから3mmが吸収されている。
そんな歯にどのようにしてApicoectomyしていくと言うのだろうか?
ここからが臨床力である。
“臨床力”がない臨床家には未来はない。
この臨床力をつけるのが、Advanced Courseだったり、マイクロサージェリーマンツーマンコースだったりするのだ。
知識に蓋はできない。
歯内療法学的診断(2023.3.10)
#4
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx:Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Re-RCT, またはApexで切削感がなければApicoectomy
である。
と言うことでまずは再根管治療を行なった。
☆この後、臨床的動画が出てきます。不快に感じる方は視聴をSkipしてください。
#4 Re-RCT(2023.3.10)
メタルポストコアを外す方法
がこの動画にはよく現れている。
セメントラインを全周出して、超音波で振動させる
であるが、Pathways of the Pulp 通りの方法だ。
これに教科書などいるのだろうか?
この動画を見て、あとは自分でやったらいいと思う。
自主練でどうにでもなるくらいの話である。
が、道具が必要だ。
道具等の解説はマイクロRe-RCTマンツーマンコースか、Basic Courseで解説する。
ということで、カリエスを除去して再根管治療を行った。
さて、ファイルはどういう順で挿入できるだろうか?そして形成は可能だろうか?
と言えば、全くスカスカであった。
K File #50でもRoot ZXがピーピーなる有様だ。
これは、MAFが#50以上であることを示している。
私が所持するファイルシステムはHyFlex EDMである。
この中で一番大きなサイズのファイルは#60.02である。
つまり、仮にHyFlex EDM #60.02で形成しても、根管はK File #50.02→HyFlex EDM #60.02で0.2倍しかでかくならない。
つまりここから何が言えるか?と言えば、
再根管治療で十二分に細菌を減少させること、つまり、根尖性歯周炎を治癒させることは無理だ
と分かる。
と言うことはここで、再根管治療から歯根端切除術に切り替えなければならない。
ということで、Fiber postを用いてレジンで支台築造して終了した。
最後にPAを撮影した。
かかりつけ医にはプロビジョナルレストレーションを装着してもらうように依頼した。
と言うことで別日にApicoectomyが行われたのであるが、さてApicoectomyはどう行うだろうか?
歯根の長さが既にCEJからApexまで4mmしかないのである。
が、反対側は7mmである。
このことから言えることは、
#4の歯根はApexから3mmが吸収で消失した可能性がある。
であれば、このApicoectomyに歯根の切断は不要であると言う話になる。
が、歯根吸収を受けて不正な面を呈しているであろうApexを平らにしてそれから逆根管形成を行えば治癒に導けるかもしれない。
ではその時、逆根管形成は何mm行うのか?と言えば、
切断した面の角度によって深さが決まる
と言うのはこの業界の有名な話だ。
For teeth resected at 0 degrees to the long axis, the depth of the retrograde filling is 1.0 mm for zero leakage. Similarly, teeth with apicectomies of 30 and 45 degrees require a retro- grade filling depth of 2.1 and 2.5 mm, respectively, for zero leakage.
つまりここから得られるアイディアとしては、
極力水平に切断し、1mm以上(理想的には2.5mm以上)逆根管形成を行う
と言う作戦で成功する可能性があると言うことが分かる。
これはまさに、歯科治療では無く理科的、数学的思考だ。
国語や英語、社会的思考はこの治療に一切無関係である。
解決能力のない、エビデンスは覚えるだけ無駄である。
ということで、以上を頭に入れてApicoectomyを行った。
☆ここから外科動画が出てきます。不快に感じる方は視聴をSkipしてください。
#4 Apicoectomy(2023.4.28)
#6近心に縦切開を入れている。
この患者さんの口角はそれほど硬くないからだ。
であれば…
2歯近心の縦切開で外科治療はマネージメントできる。
基本通りである。
Apexを見つけたいが、術前のCBCTからApexは歯槽骨で覆われていることがわかっているので、Osteotomyしなければならない。
CEJから4mmの位置だ。
深さは、1.0~1.5mm程度でいいだろう。
Apexには根尖病変があるのでそこを触れる前は痛くないかどうか?確認したほうがいい。
さて、ここで水平に切断して深く掘ればいいのである。
水平に切断した。
メチレンブルーで染め出して逆根管形成した。
逆根管形成が2.5mm(2.5/3.5=5/7≒0.7)挿入されているかどうか確認できただろうか?
問題がないことが分かるだろう。
そしてその後、Lid Techniqueで逆根管充填した。
直後にPAを撮影して確かめた。
問題はないと思われる。
このまま縫合して終了した。
問題はないと思われる。
ということで次回は半年後である。
これで理想的な治癒を来すかどうか?はわからない。
すなわちこの治療は、”Guarded”である。
理想的な治癒を示すかどうか?は半年経てばわかる。
その際の様子をまた公開しよう。
それまで少々お待ちください。