紹介患者さんの治療。
主訴は
鼻の下に力を入れると、上顎前歯部の付け根が痛い
であった。
前歯はかつて(4,5年前。どこで治療したか?は記憶がない)治療した部位なので、自分自身は問題ないと思うのだが…と話されていた。
歯内療法学的検査(2023.5.30)
#7 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(++), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#8 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(++), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#9 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#10 Cold+4/4, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
主訴は再現できた。
患歯は#7,8のようだ。
PA(2023.5.30)
#7,8の根尖部に大きな病変がある。
ここが今回の主訴の原因だ。
#7の根尖部にはファイルか?Gutta Percha Pointか?が存在する。
それが何か?は見なければわからない。
が、それはさておき大きな拡大で大ききな根管充填だ。
恐らく、非外科的再根管治療は奏功しないだろう。
このPAからもApicoectomy一択だ。
CBCT(2023.5.30)
#7,8ともに頬側の皮質骨が感染による骨吸収で破損している。
これがPalp.(++)の原因だろう。
歯内療法学的診断(2023.5.30)
#7,8
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Apicoectomy
ということで推奨される治療はApicoectomy一択だ。
が、患者さんは前歯は既に治療した部位なのに何で問題があるのか?と私に質問された。
そう。
それは日本国民が全員思っていることかもしれない。
なぜか、治療すると悪くなるのは決まって歯だ。
私はなぜ治療すると問題が出るか?という仕組みについて教えてあげた。
患者さんは深く納得されていた。
そんなことなら、歯科治療をすればするほど悪くなるじゃないですか!
その通りである。
この話のどこに嘘があるだろうか?
ということで、同日に外科治療へ移行した。
☆この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipください。
#7,8 Apicoectomy(2023.5.30)
Flapを反転したが、#7,8ともにApexはない。
そうつまりこれは…
アーチファクトだったのだ。。。
CBCTでもこうしたことがあるのだ、ということに私は驚いた。
が、仕方がない。
もう一度CBCT情報に戻る。
CEJより、10mm下部に#7のApexはある。
ペリオプローブで長さを計測して、思しき場所を削合(Osteotomy)した。
Apexを発見した。
Root Resectionを行った。
動画の53秒あたりに見える金属の破折片はファイルである。
根尖部を破壊してファイルもそのまま置いてさよならしている。
そして、患者からサヨナラされるという…
因果応報だ。
メチレンブルーで染色された部分を逆根管形成し、逆根管充填した。
もう1本ある。
#8だ。
#8もOsteotomyが必要なので同じ手法で行ない、Root resectionし、メチレンブルーで染め出した。
問題ないと思われる。
最後にRetroprep, Retrofillingを行った。
その後、PAを撮影して逆根管充填の状況を確認した。
問題はないと思われる。
縫合して終了した。
ここから1週間後に抜糸にいらした。
痛みは腫れは全くない、という。
#7,8 Apicoectomy後 Suture removal(2023.6.6)
やや腫脹があるが痛みは全くないとのことである。
ということで次回は1年後である。
その際に、口腔内の状態を皆さんにお伝えしよう。