紹介患者さんの治療。

主訴は

右上4番の歯ぐきの腫れ。骨吸収が起きていると言われた。3回、保険治療で根管治療、その後マイクロスコープで根管治療をしたが、完治せず。抜歯してインプラントを勧められたが、可能であれば残したい。

であった。

保険治療で根管治療して、その後マイクロスコープを使用して治療というのは

順序が逆

だが、それでも保存が難しい歯であったのだろう。

この主訴からしても、Apicoectomyが疑われる案件だ。

歯内療法学的検査(2023.4.17)

#4 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#5 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(+), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

歯茎は腫れていた。

胴部を押さえるとPalpation(圧痛)が+である。

が、Sinus tractがある。

ということは…

これまた外科が濃厚

だろう。

PA(2023.4.17)

この”絵”で十分内容がわかるだろうか?

私には全くわからない。

CBCTをもらっていた。

CBCT(2023.4.17)

第1小臼歯は二股の2根であることはわかるが、である。

根尖部が見えない…

これでは、Bだけを切断するべきか?Pも切るべきか?判断がつかない。

これは問題だ。

が、紹介されているので仕方がない。

やはり自院にCBCTがあった方がいいのか?と思わないでもないが、

もはや今後はこういう状態であれば近医で撮影してもらう

ことに私は決めた。

お金をかけてそれを取り入れることにもう興味がなくなってしまったのだ。。。

歯内療法学的診断(2023.4.17)

Pulp Dx:Previously treated

Periapical Dx:Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx:Core build up with Fiber Post⇨Apicoectomy

ということで、まず支台築造しその後にApicoectomyを行うことになった。

2段階の治療である。

#5 Core build up with Fiber Post(2023.4.17)

口蓋側の歯根はCBCTで確認して問題があればApicoectomyすることになった。

問題がなければ切らない。


☆以下、外科動画が出てきます。気分を害する方は視聴をSkipしてください。


#5 Apicoectomy(2023.6.13)

治療前にCBCTが届いた。

それを見てみると、

B

P

頬側には大きな歯槽骨の欠損があるが、口蓋側にはほとんどない。

Flapを開けると容易にBのApexは見つかるだろう。

が、Pは歯槽骨で覆われている可能性が高い。

つまり…

ApicoectomyはBのみ行い、PはApicoectomy終了後にラバーダムを行い、再根管治療を行う

と告げた。

患者さんにこの治療計画を告げて治療へ移行した。

さて。

このような治療計画はどのようにしたら身につくのか?といえば、きちんとした資料(口腔内検査、PA、CBCT)がないと判断できない。

簡単なものではないが、教育されれば身につけられるだろう。

まずApicoectomyを行った。

BのApexを発見したため、続けてApicoectomyをおこなった。

この際、Pの根尖を探したが根尖部は歯槽骨で覆われていたため探索はしていない。

この瞬間にPのみの再根管治療が決定した。

Bのみ逆根管形成し、逆根管充填した。

PAを撮影した。

ここで患者さんに縫合してからラバーダムをかけて支台築造する旨を伝えた。

痛みに配慮して

(痛みに配慮の意味がわかりますか?)

麻酔をもう1本追加してからラバーダムをかけることを説明した。

ということで、縫合した。

ここまで僅か10分である。

縫合前には術野を滅菌ガーゼで押さえなければならない。

止血と縮んだFlapの進展が目的だ。

この後、縫合した。

縫合後に麻酔を追加してラバーダムを装着した。

P根の再根管治療の開始である。

この後、形成へ移るわけだが…

問題が発生する。

それは、根尖病変はないが歯根吸収が進んでおりMAFの決定に時間がかかったのである。

端的にいえば、

作業長は14.0であったが、その長さで

HyFlex EDM #60.02⇨スポスポ

WaveOne Gold #45⇨スポスポ

ProTaper Gold F5⇨スポスポ

であった。

つまり、Gutta Percha Pointの決定を行わなければならない。

うちの歯科医院には

#60.04, #60.06, #70.04, #70.06, #80.04, #80.06までGutta Percha Pointはあるのでそれを大きな順から試適していった。

すると、#60.04で作業長にFitした。

このサイズで根管充填した。

支台築造をやり直して終了した。

PAを撮影した。

問題はないと思われる。

次回は1年後である。

そこで問題がなければ最終補綴へ移行しても構わない。

ということで、1年後をお楽しみに。