紹介患者さんの外科治療。
主訴は、
30年前に(1990年代か?)左上2を歯根端切除術した。その後問題はなかったが、4~5年前に撮影したCTは良くなかった。そして去年12月に再歯根端切除術をしたが、違和感が続いている。なぜなのか?意味がわからない…
であった。
歯内療法学的検査(2023.9.21)
PA(2023.9.21)
CBCT(2023.9.21)
#10
患者さん曰く、
30年前も、
昨年末も、
顕微鏡を使用した手術はしていない
そうだ。
マイクロサージェリーの成功率は90%だが、それが裸眼だと幾つになるか?私は知らない。
いずれにしても、
Apicoectomy(歯根端切除術)は、
“素人”
に任せるほどの簡単な治療なのだろうか?
事実、上記の治療は逆根管形成が不適切な位置になされている。
そして恐らく歯根は穿孔しているだろう。
また、
保険診療では保険適用外の材料は一切使用できないので、この逆根管充填材はMTA系の材料ではない
ことが予想できる。
この点でも、
もはや保険診療はその医療の意義すら崩壊している
のであるが、
それでも税金にしがみつく医療従事者はどこを向いて治療をしているのだろうか?としか言いようがない。
昔もそういう患者さんがいたことを思い出す。
しかしながら、これをどうやり直せばいいだろうか?
これをやり直すには、逆根充している部分まで切断しなくてはならないだろう。
これをCBCTで分析すると以下になる。
しかしそれを行ったとしても、T-Fixされているために問題は出ないのであるが。
またもしVRF等で抜歯になっとしても、補綴を外さずに抜歯+GBRは可能なのでそこは不幸中の幸いかもしれない。
#7
ApexまでCEJから14mm…
非常に長い歯だ。
3mmで切断すると、頬舌的に4.7mm切断することになる。
Apicoectomyは、
Osteotomyをして/せず、
Apexの位置を鋭い短針で確認し、
Apexから3mmで切断する、
ことが必要である。
これがApicoectomyの基本だ。
歯内療法学的診断(2023.9.21)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Chronic apical abscess
Recommended Tx: Apicoectomy
さて。なぜ、30年前に(1990年代に)行ったApicoectomyが失敗したのだろうか?
以下が一般的な理由である。
①マイクロスコープがない
マイクロスコープがないとApicoectomyはできない。なぜか?と言えば、問題(メチレンブルーに染まる部位の特定等)を詳細に把握できないからだ。
②逆根管形成用の超音波チップがない
下記の絵のように、かつてはバーで逆根管形成していた。
適切に逆根管形成ができない。
それが、逆根管形成用の超音波チップが出てからはそうしたことがなくなった。
が、
常に新品を使用しなければ素早い処置はできない
だろう。
③MTA系の材料がない
かつてはAmalgamで逆根管充填していたが、今はMTAの時代を経て、Lid techniqueにChangeした。
MTA系のシーラー+パテで逆根管充填する時代に変わったのだ。
そしてそれが進めば…もしかすると、MTAシーラーで根充して、Caviton等で逆根充してもいいのかもしれないが、生体親和性の問題が出るのかもしれないので何とも言えない。
素早く固まるMTAシーラーが出れば…それが大きく変わるかもしれない。
その点では、
某社のMTAシーラーには、逆根管充填材として販売すれば業界の秩序を変えるだけの説得力があるのだが、残念ながらいまだにチップを開発してくれない。
ということは、その方面でトップを取る気がないのだろう。
ということで話がずれたが、
以上を再・外科治療で改善することができれば、この方の問題は解決するだろう。
患者さんは治療計画に同意したので、同日、Apicoectomyを行った。
☆この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#7,10 Apicoectomy(2023.9.21)
#10へ移行した。
以前の逆根管充填の部分でRoot resectionした。
逆根管形成した。
逆根管充填した。
2本の歯牙の逆根管充填後に、PA, CBCTを撮影した。
問題はないと思われる。
縫合して終了した。
最後に治療前後を比較してみよう。
<Apicoectomy前>
<Apicoectomy後>
この日の1週間後に抜糸に来られた。
ということで、次回は6ヶ月後の2024.4にApicoectomy後、6M recallの予定である。
またその模様をお伝えしたい。