紹介患者さんの治療。
遠方の方で新幹線で来られていた。
遠方から福岡の歯科医院になんて来れるわけがないじゃないか!というあなた。
いや、来れるんですよ。
なぜなら、
当歯科医院の治療は必ず1回で終わりますから。
受診を検討されている方、よく覚えておいてください。
米国歯内療法専門医の歯内療法処置はその辺のものとは全く性質が違う
ということを。
さておき患者さんの治療に戻る。
患者さんの主訴は、
歯茎の腫れ。できれば抜歯したくない…
であった。
保存するチャンスはあるか?ないか?どちらだろう。
今までのかかりつけ医で保存できる!と言い張った人は誰もいないという。
なぜか?
(再)根管治療ができないから
だそうだ。
この時点で、外科治療の可能性が濃厚だろう。
が、日本の歯科大学教育で歯内療法科で歯根端切除術を行っていないことからこの話はあながち嘘ではないことがわかるだろう。
なんせ、誰もどうやって行うか?教えられないのだから。
とりあえずは、歯牙の検査から行った。
歯内療法学的検査(2023.12.26)
#13 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#14 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(+), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)
#15 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#14が患歯のようだ。
PalpationとSinus tractが#14にはある。分岐部病変はない。
⭐︎以下、検査動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
プロビジョナルレストレーションが装着されている#14が患歯である。
PA, CBCTを撮影した。
PA(2023.12.26)
#14の近心根は根尖部のカーブに追従せずに、トランスポーテーションしている。
なぜか?
SS Hand Fileで根管治療したからだ。
世界中のEndodontistが使用しない歯科器具を用いて、
世界中の誰もがしない形成方法で、
世界一安価な治療費で根管治療をする国、日本。
そこに未来はない。
思うに、この業界のオピニオンリーダー?たちはそれでいいのだろうか?
若い人材に背中を見せているだろうか?
これでは…
その背中を追いかけようとする人間は消えるだろう。
未来など感じられないからだ。
だから接客とか、集客とかに走るのだ。
歯科医師なら治療結果で示せよ、と言いたくなるのは私だけだろうか?
さておき、話を症例に戻そう。
こういう内容の治療では…
テクニカルエラーが多発する。
歯科医師であれば、手が器用か?と言われれば、私はそれに当てはまらない。
それは私の学生時代が証明している。
歯科医師であれば、誰もが手が器用な人!ではないのだ。
私のように不器用な人もいる。
そうした人がどうすれば根管治療を得意にできるのか?はこのBlogにたくさんヒントがあるだろう。
それを盗んでください。
が、
それでも、私の仕事は生涯無くならない。世間が保険診療を続ける限りは、だ。
CTも撮影した。
CBCT(2023.12.26)
MB(B)
歯槽骨が全くない。
テクニカルエラーも引き起こしている。
Apicoectomy以外にこの状況を改善できる方法はない。
DBも見てみた。
DB(B)
DBもMBと同じであった。
が、MB, DBは接近している。
この方は口角が硬い患者さんであった。
つまり、MBを見つければDBも切断できるだろう。
MBのApexを見つければ、どうにかなりそうだ。
MB(M)
CEJから10mm先にMBの湾曲の終着点がある。
イメージとしては、
こういう切断が最もEasyだろう。
その際、やや頬側に根充されたGutta Perchaを除去しながら形成する必要がある。
が、それはそれほど難しいこととは思えない。
さて、ここで切断した場合、頬舌的には6mm切断することになる。(以下を参照)
MB(O)
リンデマンバーの約半分だ。
それほど難しい治療ではないだろう。
口角が硬いというのをどうマネージメントするか?が全てだ。
具体的には、
①切開の範囲を広くするか、
②縦切開を近・遠心双方にいれるか、
③ ①+②を両方行うか?
というとこだろう。
ここは治療しながら考察しなければいけない。
次はDBだ。
DB(M)
DBのApexは歯頚部よりも11mm先にあるが、
MBの近辺なので、ここはそれほど難しくはないだろう。
ここを3mmで切断すると、頬舌的に4mm切断することになる。(下図参照)
DB(O)
これも難しいことではない。
と言うことで診断は以下である。
歯内療法学的診断(2023.12.26)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Chronic apical abscess
Recommended Tx: Apicoectomy
ということで、同日Apicoectomyへ移行した。
☆この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#14 Apicoectomy(2023.12.26)
MBのApexをCTを参考に発見し、Root resectionした。
このイメージだ。
その後、メチレンブルーで染め出して逆根管形成すべきポイントを明示した。
次に逆根管形成である。
イスムスを繋げなければならない。
この際のポイントは…
今まで何度も説明している通り
だ。
問題がないことを確認し、Lid Techniqueで逆根管充填した。
Racelletをわざと骨窩洞の中に残しているのはこの後の逆根充で出るBC puttyの残骸を回収したいと言う意図があるからだ。
が、それはMustではないし、私の気分がそうだっただけである。
この後、DBへ移行するが、DBのApexはこの部分にあるのでそれほど探索は難しくない。
MBと同じ位置で切断すればいいだろう。
DBへ移行した。
その前に、
遠心に縦切開を入れて術野を広げた
ことを述べておこう。
これは細かいが、重要なポイントだ。
このように、与えられた切開・剥離でやりにくい場合は術野を広げたい。
そのためには、
遠心に縦切開を入れると術野が広がることは記憶しておうた方がいいだろう。
最初から入れるのではなく、必要に応じて(この場合は、DBもApicoectomyしなければならないので、術中にそれを入れることを意思決定している)切開を入れているところがポイントだ。
肉芽をいじると、DBのApexが出てきたのでRoot resectionし、メチレンブルーで染め出し、5個Racelletを挿入し止血を図った。
この後、Retroprepを行った。
こちらは…MBに比べると呆れるくらい簡単だ。
なぜか?
イスムスはないし、1根管性だからだ。
Stropko Irrigatorで窩洞を乾燥し、逆根管充填した。
逆根管充填後、PAとCBCTを撮影した。
PAでは、???というような結果(特にDB)だが、CBCTも撮影すると、以下になる。
MB
MB(MB1+MB2)のRetroprepがきちんと3mmの深さが担保されている
ことにあなたは気づくだろうか?
これが、
プロの技術
だ。
“日本の勉強会”ではなく、
“米国の歯内療法科の大学院で”
“鍛錬された人間” の、
“本物の技術” だ。
これは、
私が死ぬか、頭がボーンにならない限り永遠に私に宿っている
のだ。
DB
PAでは???な絵であったDBだが、CBCTでは問題がないことがわかる。
縫合して終了した。
歯周病の患者ではないので、緊密な縫合は不要だ。
神様が治してくれる。
治療前後を整理した。
次回は、半年後である。
抜糸時の状況をこのかかりつけ医の先生がちなみに送ってくれた。
また状況をお伝えしたい。