バイト先での治療。

主訴は

治療した部分の歯茎が腫れて痛い…

である。

歯内療法学的検査(2023.12.19)

#3 Cold+3/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#4 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(+), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

#5 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#4には圧痛とSinus tractがある。

これは…非外科的歯内療法では限界があるかもしれない。

PA(2023.12.19)

#4の根尖部はフックしているが、形成はそれに追従していない。

なぜか?

それは、

SS Hand Fileで形成しているからだ。

また、ラバーダムも使用していないという。

それは、歯内療法とは言わないのである。

俺は、違う!とあなたが叫んだところで、そんなことを真似しようとする若い先生はもういないだろう。

時代は変わったのだから。

また、Apicoectomyする場合はRoot resection時に遠心に注意しなければならない。

危うく、上顎洞を傷つけるからだ。

医原性の事故にも注意しなければならないだろう。

また、Root resectionはフック分を考慮すると術後はやや短いような印象を与えるだろう。

このように、

単純そうに見えて実は難しい外科治療である

ということが濃厚そうな治療になりそうだ。

CBCT(2023.12.19)

外科治療(Apicoectomy)であるということを前提にすると、

#4は

歯頸部よりも近心にApexがあり、

その長さは

13mm先に

Apex付近

があり、

3mm付近で切断すると頬舌的には

約5mm切断することになる。

また、#4の遠心は上顎洞と接しているので注意が必要だ。

が、#4は近心にフックしているのでそれも合わせるとRoot resectionの長さは短く見えるだろう。

以上を考慮して、Apicoectomyを行う。

歯内療法学的診断(2023.12.19)

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Chronic apical abscess

Recommended Tx: Apicoectomy

ということで推奨される治療はApicoectomyである。

同日、治療へ移行した。


☆この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#4 Apicoectomy(2023.12.19)

まずApexの位置を探さなければならない。

CEJよりも13mmにApexはある。そこから3m切断するには、頬舌的に5mmの切断が必要だ。

Apexの位置を把握し、3mmで切断した後にメチレンブルーで染色した。

これでブルーに染まる部分が歯根膜と汚れだ。

逆根管形成を行い、逆根管充填した。

この際の拡大率が大きいのが後のPAでネック?になるのである。(まあ、その実、ならないけども)

逆根管充填後に、PAとCBCTを撮影した。

切断が短いのではないか?という質問に対してだが、

この歯は歯根がフックしている。したがってフック分を含めれば、3mmは切断しているであろうという予測ができるので、問題はないだろうと考える。

が、

逆根管形成は遠心に流れてしまった。

が、

原因はマイクロスコープの拡大率だろう。

上顎洞粘膜を穿孔させまいと、遠心方向に気を使いすぎて、マイクロスコープの高倍率を戻すのを忘れていたのが原因だ。

ちなみにだが、もし逆根管形成で穿孔しても、根尖部に行けば行くほどその封鎖性は高く担保される。

つまり、治療内容とその結果が、医原性のミスに左右されにくい。

Mente 2014 Treatment outcome of mineral trioxide aggregate: repair of root perforations-long-term results

によれば、

穿孔の場所(位置)に関わらず、

MTAで封鎖すれば

その成功率は86%と高い。

が、別の研究では、

Siew 2015 Treatment Outcome of Repaired Root Perforation: A Systematic Review and Meta-analysis

歯頸部の寄りものは予後が悪い

という。

私はどちらかと言えば、Siew 2015寄りの意見である。

歯周付近の問題は解決できないことが多いと思われる。

そして長く穿孔を放置したもののダメだ。

歯周疾患と併発しているからだ。

この件に関しては、詳細は

Basic Course 2024

でも解説します。

ということで、縫合して終了した。

次回は半年後である。

また状況を報告したい。