2019.3に倒れる前、私は私的にコースを行なっていてその中にはマイクロサージェリーコースというものも扱っていた。
何をやるのか?といえば、2日間コースで行われるこのコースで
1日目はApicoectomy(歯根端切除術)とIntentional Replantation(意図的再植)に関する術式を整理し受講生に伝え、2日目は1日中実習を行なっていた。
しかし私は倒れたためにそのコースは一旦閉鎖された。
その際に指導した先生からメールが久々に届いた。
彼はペリオの出身で得意分野はペリオやインプラントであるが、エンドもやらないといけないという地域事情(近くにエンドを行う先生がいない)があるので倒れる前の歯科医院で行なっていたマンツーマンコースに参加していた。
そんな彼からIntentional Replantationを行なったという報告があった。
病名は以下になる。
Pulp Dx: Pulp Necrosis
Periapical Dx: Chronic apical abscess
Recommended Tx Plan: RCT
ちなみに治療前に撮影されたCBCTでは、舌側の根尖部周囲の歯槽骨が吸収されている。
このままの状態で抜歯されたとしても、その後は骨造成まっしぐらだろう。
不幸な将来が眼に浮かぶようだ。
こんな時、歯内療法処置ができれば…
まずこの先生は当初、根管治療を行うことにした。しかしながら石灰化が進行し、穿通ができなかった。
再治療を行っても成功率は高くないだろう。(およそ60%程度)
案の定、Sinus tractは消失せずだった。
となれば、登場するのはApicoectomyであるが、Apicoectomyは不可能である。
頬側から根尖部までの距離が長いからだ。
そしてこの分厚い歯槽骨をどれほど犠牲にしなければならないだろうか?
ということで、この先生は私が教えた通りに支台築造を行なった後に、Intentional Replantationを行った。
それが2020.5.25のことであるという。
そこから約1年が経過した。
この先生はその症例をCBCTで撮影してみたそうだ。
すると以下のようになっていた。(2021.3.5)
意図的再植を行うことによって、吸収されていた舌側の皮質骨は回復している。
再治療により失われた歯質も多かったが、歯槽骨はめでたく回復できた。
この先生からは以下のような感想をいただいている。
お世話になります。
症例報告です。
前回のマイクロサージェリーコースで意図的再植について教えていただき、あれから実践しております。
右下7番 retreatment 樋状根 強度の再石灰化があったため2020/3/30にretreatmentをしフィステルが収まらなかったので2020/5/25に意図的再度植を行いました
2021/3/5のリコール時にCT撮影した結果,舌側不透過像を確認しました。
先生に教えてもらったことが役に立っています、ありがとうございます。
これからもお身体を大切にされてください。また色々と教えてください。よろしくお願いいたします。
上記の処置が一生持つとは全く思わない。
イニシャルRCTももう少し歯質保存的にするべきだったかもしれない。
しかしながら、臨床家は解決方法を持つことが重要だ。
この場合の解決方法はIntentional Replantationしかありえない。
それをSinus tractが再治療をしても消退しないからと外科治療に切り替えた判断は見事である。
(私なら最初からIntentional Replantationを行ったかもしれないが、まずは再治療を行うのが歯内療法の鉄則なのでそれは仕方がないことである。)
あなたは臨床的な解決能力があるだろうか?ないのであれば、マイクロエンドのマンツーマンコースを受講されることを勧めておこう。