紹介患者さんの治療。
主訴は、
右上の奥歯の痛み。腫れが数ヶ月前から続いている。歯茎が腫れてはしぼみ、また腫れるをここ数ヶ月繰り返している
であった。
歯内療法学的検査(2024.2.6)
#2 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)
#3 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)
#4 Cold+1/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#5 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#2,3にSinus tractがある。
痛みはちなみにこの時はなかった。
PA(2024.2.6)
破折したファイルが上顎洞方向へ突き抜けている。
これが問題か?と言われれば、問題はあるものの、問題ではない。
この曖昧な言い方を理解できるだろうか?
そして太いメタルポストコア。歯牙の寿命を縮める可能性が高い。
CBCT(2024.2.6)
#3 MB
MBは9mmである。
#3 DB
6.7mmとかなり短い。
日本人の平均的な歯根の長さは藤田(1949)によれば
上顎第1大臼歯は12.0mmであることからも吸収により消失した可能性がある。
こういう時は反体側同名歯をみるべきだ。
#14 DB
反対側同名歯のDBのCEJからApexまでの長さは10.0mmである。
このことからも、
#3のDBの歯根は外部吸収で消失した可能性
がある。
ということで、#3のDBはフラットに切って逆根管形成するだけにした。
これが 、
“臨床力”
だろう。
#3 P
ここには病変はないと判断した。
ということで、#3はMB,DBを2根同時に処置しなければならないだろう。
#2も精査した。
#2 MB
MBの根尖部には大きな骨欠損がある。
MB2はあったのだろうが、繋げているのか何なのかもはやわからない。
昔、USC時代に、Dr.Zweigにやめろと言われた行為がなされている。
#2 DB
DBの根尖部にも病変がある。
2連敗だ。
#2 P
3根全てに根尖病変がある。
が、根尖部の形成は甘く見えた。
これは…
P根以外は、Intentional Replantationの適応症である。
治療方針としては、
#3もMB,DBをApicoectomyし、その後#2の脱臼を図りIntentional Replantationへ移行する。
もしも脱臼・抜歯ができなければ…Apicoectomyだ。
が、それは何とか避けたい。
Keyになるにはやはり臨在歯の存在だ。
臨在歯をメタル修復にしてもらい、テンポラリーを合着してもらえば再植の固定源として機能する
だろう。
歯内療法学的診断(2024.2.6)
#2
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Chronic apical abscess
Recommended Tx: Intentional Replantation/Apicoectomy
#3
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Chronic apical abscess
Recommended Tx: Apicoectomy(MB,DB)
まずこの日に#2 Pの再根管治療と、#2,3の支台築造を行いかかりつけ医に#2,3にメタルクラウンを合着してもらうようにお願いした。
再根管治療と支台築造を行った後のPAは以下である。
ということで、別日に外科治療へ移行した。
☆この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#3 Apicoectomy(2024.4.1)
まず、#3からApicoectomyする。
MBのApexはCEJより9mm下部にある。隣在歯などを参考にApexがあると思しき部位を削合する。
すると…上記の動画にあるように、MBのApexが顔を出したことがわかるだろう。
MBのApexより3mmで切断したのち、メチレンブルーで染色し、MB1とMB2を形成してイスムスを除去し繋げた。
形成した窩洞をCheckし、問題がないと判断し逆根管充填した。
次がDB根である。
DBはCEJよりも7mm下部にあり、Osteotomyを必要とする。
まず長さを計測しApexを発見し軽くRoot resectionした。
その後、RetroprepしRetrofillingした。
さて。
こんなに血まみれでなぜ逆根充ができるのか?といえば、それは
BC sealer
BC putty(Bio-C Repair)
BC sealerの外科用のチップ
という3種の神器のおかげである。
これらの道具がなければ、ここまで血まみれで外科治療はできないだろう。
が、名誉のために言えば、この外科治療は緑のキシロカインで行っているのだがこの流血の様だ。
ということで今日はここまでである。
また次回、#2のIntentional Replantationの模様をお伝えしたい。