紹介患者さんの治療。

主訴は、

5年前から歯茎にできものができてすごく痛かった。5年間ずつと同じ歯の治療をしている…その後、歯ブラシで歯を磨くと痛く、別の歯科医院ではインプラントを計画されたが嫌だったので、かかりつけ医にセカンドオピニオンしたらここを紹介された。

であった。

まだこの若い患者さん(30代しかも女性である)にImplantを強いるということは医療人として正しい態度だろうか?

そしてSinus tractが5年前からあるというのは…それはまずいだろう。

このセリフで外科治療が決定的だ。

もちろん、その歯が残せない(虫歯、歯周病)のであれば抜歯も止むを得ないが、患者さんの問診からはそういう感じがしない。

歯内療法学的検査(2024.6.4)

#18 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(+), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

#19 Cold+3/5, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

主訴は再現されている。Sinus tractは消えた!と本人が言っていたが、口腔内を検査するとそれは存在していた。

また、やはりというか相変わらず、歯周病の問題がない。

世の中に歯周病の人がいるのだろうか?

が、クリアランスはあまりない。

プロビジョナルレストレーションが何度も外れていたという。

それは、この咬合が原因だろう。

こういう場合は、メタルにするという手もあるだろう。

誰が奥歯をジロジロ見ようか?

☆以下、検査動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。

PA(2024.6.4)

根尖部に病変があるのが見て取れる。

そして根管は穿通しなかったのだろう。

これが、歯牙保存ではなく、Implantに傾いた要因だ。

が、だ。

根管治療できなければ、外科的歯内療法があるじゃないか?と思わずにはいられない。

CBCTも撮影した。

CBCT(2024.6.4)

M

M根の周囲には骨がない。

VRF!(歯が割れている!)と難癖つけられない病態=J-shaped lesionだ。

が、何度も言うように、

歯牙を抜歯して直視しないと歯が割れているかどうか?はわからない

のである。

それなら、

Intentional Replantationしろよ!

といつも思わずにはいられない。

M

石灰化しているので形成ができなかったのだろう。

ここもJ-shapedっぽい病変である。

D

根管が石灰化しているのでこれ以上形成ができないようだ。

以上を考慮すると、

根管治療でマネージメントすることは不可能だろう。

ということは…

Intentional Replantation一択だ。

歯内療法学的診断(2024.6.4)

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Chronic apical abscess

Recommended Tx: Intentional Replantation

推奨される治療は、Intentional Replantationである。

また、口腔外で支台築造することにもなった。

もちろん、歯牙が破折していなければ、だ。

同日に治療へ移行した。


☆この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#18 Intentional Replantation(2024.6.4)

樋状根で根尖病変があっても、これだけ歯牙の抜歯に苦労している。

そう簡単には脱臼できないのがIntentional Replantationだ。

結局、ラクセーター、ペリオトームで歯根膜を切断し、ダイヤモンド鉗子で抜歯した。

抜歯窩を精査し、Intentional Replantationの治療へと移行する。

その前に、メチレンブルーで染め出して、VRFがないか?精査したがそれはないと判断した。

その後、Intentional Replantationを行った。

この後、PAを撮影した。

問題はないだろう。

この後、口腔外で支台築造した。

究極の防湿環境下でのレジン築造だ。

誰も問題が言えないだろう。

この後、抜歯窩に再植した。

その後、ガーゼを5分咬合してもらった。

痛みが出るか?だが、出るわけがない。

なぜか?あなたはわかりますか?

その理由は麻酔だろう。

この治療に私はどういう麻酔をどのようにしたか?だが、治療中に問題が出ないようにしている。

その意味では、下顎の方が上顎よりも楽である。

治療後に、PA, CBCTを撮影した。

MB

B

D

ということでこの日の治療は30分で終了した。

実にEasyである。

が、脱臼までには少し時間を要した。

理由は脱臼のみでの抜歯にこだわったからだろう。

こういう時は(歯牙の脱臼のみで抜歯できそうにない時)、早めにダイヤモンド鉗子を持ち抜歯行為へ移り変わるべきだ

と学んだ症例であった。

さて、ここから時間が経過した。

#18 Intentional Replantation 1M recall(2024.7.4)

患者さんによれば、術後1週間でくっついた感じがしたそうだ。

が、

朝起きてマウスピースを外すと歯が高い感じがするという。

痛みはないようだが、動揺の具合と咬合をCheckした。

すると、やはり対合歯と当たっていることがわかる。

同部を調整した。

また再度、1ヶ月後に来ていただくこととなった。

#18 Intentional Replantation 2M recall(2024.8.5)

あれからさらに1ヶ月が経過した。

状況を聞くと、

できものは消えて生活に支障がなくなったという。

が、仮歯が何度も外れて鬱陶しい…という。

それもそのはず、歯冠長がほとんどないことがわかるので、レジンの支台歯に維持溝が彫ってあった。

が、初診時にあった

Sinus tractや根尖部の圧痛は消失していた。

PA, CBCTも撮影した。

MB

ML

D

ということで、

歯周病専門医にクラウンレングスニングを依頼し、術後にプロビジョナルレストレーションを装着(仮着でなく、合着してもらう)してもらうように依頼した。

ということで、次回は1年後である。

またその模様をお伝えしたい。