バイト先での治療。

患者さんは40代女性。

主訴は咬合時の前歯の痛み。

患者さんは矯正治療も予定している方でその前に歯内療法処置を終えたいというのが主訴であった。

左上1,右上1,右上2には補綴物(レジンの前装冠)が被せてあったがマージンなどはデタラメである。

歯内療法学的検査は以下の様になった。

#6 Cold+2/5, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#7 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(+), BT(+), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#8 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

PAは以下の様になった。

歯内療法学的診断は以下の様になる。

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Apicoectomy

上顎側切歯は高い確率で外科治療になることが多い。

理由は根尖部を壊す様な形成をするからである。

上顎側切歯の根尖部の特徴をもう1度復習してみよう。


上顎側切歯の解剖学的特徴

①歯根は遠心または口蓋側に高頻度で湾曲している

②その解剖学的特徴はPAではわからない

③上顎側切歯の根尖病変は口蓋側に存在することが多い


ということを頭に入れてもう1度PAを見ていただきたい。

根尖部の形態はすでに破壊されているだろう。

太く拡大されて根尖部は破損している。

しかもラバーダムを使わずだ。

だから治癒しない。だからこの様なことになるのだ。

ということで、以上のことから

私はApicoectomyを推奨した。

患者さんも治療に同意し、この日に治療が行われた。(2021.6.27)

が、この患者さんの前にもう一人患者さんがいたので私はその治療を行なったのだが、治療前のPAなどは以下になる。

犬歯のApicoectomyであったが、これが失敗だった。

なぜなら、

私はこの日、ミネソタリトラクターをこの歯科医院に持参するのを忘れてしまい、下の写真のようなリトラクターを使用する羽目になってしまったのである…(インプラントのオペ?に使用していたらしい。)

このリトラクターを見た瞬間に私は敗北を感じてしまった…

これではリトラクトできない。

患者の顔に持ち手が当たってしまう。

しかし、そうは言ってもこれしかリトラクターはないので仕方なくこれを使用して無理やり行なったのが午前中のApicoectomyである。

治療結果は以下の様になってしまった。

言い訳を言えば、

患者の歯に対して正対できないので斜めからの形成になってしまったのである。

ちなみに通常用いるミネソタリトラクターは下の写真のような形をしている。

ブレードがもっと広く持ち手が患者の顔面を直撃しない設計になっている。

この歯科医院のリトラクターの倍以上広い構造をしている。(午後から借りることができた)

この日の午後に、この歯科医院にミネソタリトラクターが復活した(分院からミネソタリトラクターが提供された)ので午後のApicoectomyは快適に行うことができた。

それが下の写真となる。

この歯科医院では治療中の動画は撮影できないので、この逆根管充填がどれほど簡単なものであったか?を口で説明するのは難しいが、MTAやSuper EBAなど比較にならないくらい早い。

Apicoectomyに革命がおきたかの様である。

そしてその鍵を握っていた器具が以下のBC selaerにつけるBrasseler USAのインスツルメントであったということは論を待たない。

このチップのイエロー部分が柔らかく容易に根管にBC selaerをデリバリーできるシステムになっている。

これがあれば血まみれでもApicoectomyが成立する可能性も高い。

最初はなんでこんなチップが$65??と思ってぼったくりだなあ…と思ったがこれは確かにお金を払う価値はあるだろう。

アメリカで購入すると$25だが、日本から買うと$65になる。

倍以上、チャージされているが…。。。

日本人はこのように足元を見られている…

がとにかく使用できる道具なので是非使用を勧めたい。

イメージは下のYoutubeの動画の画像を参考にしていただきたい。

参考動画→https://www.youtube.com/watch?v=A1fKAEqL7QY

注:外科治療の画像が苦手な方は、以下の画像を見ることを推奨しません。スキップをお願いします。

歯内療法は更に簡単になってきているようだ。

しかし…

元はと言えば、なぜこのような問題が起きたのだろうか?と言えば、

治療した歯科医師が側切歯の解剖学的特徴を把握していなかったからである。

無知は罪である by ソクラテス

という言葉をこの歯科医師には送ろう。