紹介患者さんの治療。
主訴は、
10年くらい前に他県で治療した歯が痛い。右側で噛むと痛い…
である。
歯内療法学的検査(2024.5.14)
MB
ML
MLだが、
未形成部分がある。
ここを根管形成すれば、病変が消える可能性はあるだろう。
だが、
MBが、
この状態である。
つまり、MBにも主訴を惹起させる病因になっている可能性はある。
その場合は、MBも形成しなければならないだろう。
が、
すでにここまで形成・根充されているのである。
ここを再形成しても勝負は好転しないだろう。
つまり、この再根管治療は
MLの根尖部の未形成部分の攻略でM根の病変が消えるのか?という治療
になるのである。
それがうまくいかなければ…Apicoectomyだ。
Apicoectomyはちなみに、
オトガイ孔を傷つけるリスクはないし、
M根はCEJから16.5mmと日本人の平均的な長さと比べれば4.5mmも長く(通りでこの患者さんは背が高い方であった)、
3mmでRoot resectionしても、
頬舌的に4.9mmしか切断しなくてよく、
しかもMBとMLは近傍にあり、Retroprepもしやすそうである
ことから、
治癒する余地があるなら、侵襲の軽度な非外科的な再根管治療の方が問題を解決できる可能性があるかもしれない
だろう。
D
Dには病変がない。
ここは扱う必要性がないだろう。
Radix
前医はRadixを見落としている。
これはひとえに、
解剖学的な知識がないか、CBCT撮影を治療前にしていないかどちらかに起因している
だろう。
知識は一度授かれば誰でも理解できるのだから、重要なことはCBCTを見れる絵にできるような能力があるか否か?
だろう。
また、このRadixはカーブがきつい(湾曲が強い)。
HyFlex EDMは#20.05からのスタートが決定的だ。
以上を言葉で説明するのでなく、上記のように絵を描いて流れを説明する必要があるのである。
そこまであなたはしているだろうか?
歯内療法学的診断(2024.5.14)
Pulp Dx: Previously initiated therapy
Preiapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Re-RCT
ということで、 同日治療へ移行した。
☆この後、治療動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#30 Re-RCT(2024.5.14)
ラバーダム防湿を行い、レジンコアを除去していく。と言っても、ダイヤモンドバーで削合するだけである。
これで再根管治療の準備が完了する。
まず、問題のMLのGutta Percha Pointを除去していった。
根管口部よりもかなり上までこんもりと盛られている場合は、AM Fileであらかたそれを除去した方が治療しやすい場合が多い。
全て取れた!と思しき画像だが、
そうは問屋がおろしてくれないのだ。
作業長を測定して、再根管形成した。
再根管形成後に洗浄・ペーパーポイントで乾燥すると以下のようになった。
その後、当該サイズのGutta Percha Pointで根管充填した。
これでMLは完了だ。
次がRadixである。
その位置の確認方法は私が考えるに現状は、以下だ。
CBCTによるRadixの根管口部の予測方法
1. Radixのおおよその位置の予想
RadixのPAでの絵で、Radixと線を平行に置く。それと同時にRadixのApexとReference Pointがほぼ平行になるように線を置く。その説明の絵が上である。
2. Radixの根管口部の予測
Radixの根管口部とCEJで直行した状態で切るように画像を調整する。
この画像でのクロス部位が根管口である。
これは、
遠心根のGutta Percha Pointのすぐ舌側に存在することがわかる。
ここを探すと見つかるはずだ。
術前の予測通り、Radixの根管口部が見つかり作業長を測定したが、Hand Fileでは穿通しなかった。
HyFlex EDM #10.05で機械的に穿通を図ることにした。
これにもCBCTを利用する。
CBCTによればその長さは、
約18mmである。
Reference Pointが舌側でなく、頬側であるのもポイントだ。
その長さ、根管口をHyFlex EDM #10.05で突いた。
見事、穿通した。
その長さから0.5m引いた長さで根管形成するが、その湾曲の強さに慄いた+手早く終わらせたい私は、
#20.05ではなく#40.04を最初に形成するFileとして選択してしまった。
これが後の悲劇?につながる。
#40.04 1st. Prep@Radix
#40.04 2nd. Prep@Radix
#40.04のFileが破折してしまった。。。
これはひとえに
湾曲根管に対して以下のColtenの推奨する順序を遵守しなかったことが要因だろう。
湾曲根管
Super湾曲だとColtenのFileだと#20.05までしか拡大できないそうだ。
他社の#25.04などを使用すればなんとかなる?かもしれないが。
#20.05の使用と作業長までの形成が必須であったのにそれをスキップしたのが問題の要因だ。
根管充填し、PAとCBCTを撮影した。
ML
Radix
FileはRadixの絶対に除去不可能な部分で破折していた。
#20.05の仕様がMustであったのにスキップした私がまずいのである。。。
が、元には戻らない。
それに、#40.04で作業長まで形成はできていたのだから。
次回は1年後である。明日のBlogでこの治療の結果を報告したい。