紹介患者さんの治療。
主訴は、
右下被せた歯の神経が死んで治療が必要なのでお願いしたい…
である。
歯内療法学的検査(2025.5.22)
#30 Cold NR/20, Perc.(-), BT(+), Palp.(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#31 Cold+2/5, Perc.(-), BT(-), Palp.(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
患歯は
Cold testに反応しない
ことと
咬合痛がある
ことからおそらく、#30である。
この状況は、Pulp Necrosisが疑われる。
PA(2025.5.22)
CBCT(2025.5.22)
MB
ML
M根は、
生活歯を歯冠形成したがために、石灰化が進んでおり根管が判然としない。
世の中には歯冠形成してなぜ石灰化するのか?という人が多数いる。
それは、外傷と同じだろう。
歯に重篤な刺激(この場合は外傷圧ではなく、歯冠形成による刺激である)が加われば、歯髄は自らを細くしてその刺激から守ろうとするからだ。
このようなことに論文や理論は不要である。
考えれば、わかることだ。
そして、CBCTでは根尖部に若干の透過像が見られる。
検査からつけ合わせると、おそらく、#30のM根は失活しているのだろう。
D
Radix
D,Radixには病変はないように見える。したがってシーラーパフはこの2根管は起こり得ないということがわかる。
が、それ以前にこれらも石灰化は進んできている。
穿通できるか?は神のみぞ知る話だが、穿通がマストではないと言うことも同時にわかるだろう。
Radixを治療するときには、その根管口がどこにあるのか?予測が必要である。
どうやらRadixの根管口はD根の根管口よりもやや舌側に位置していることがわかる。
そこを見つけられるかどうか?がこの根管を攻略する際のキーだろう。
そして、
今回のRadixはそれほど湾曲は強くないことがわかる。
位置さえ見つかれば、容易にマネージメントができるだろう。
また、根管形成だが、
これほど強く石灰化している場合は、#25.Vから始めると形成に時間がかかる可能性があるので、#20.05からスタートした方がいいかもしれない。
それは実際形成してみて考えてみるということになるだろう。
歯内療法学的診断(2025.5.22)
Pulp Dx: Pulp Necrosis
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: RCT
ということで、同日治療へ移行した。
⭐︎この後、治療動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#30 RCT(2025.5.22)
オールセラミッククラウンに
窩洞形成
して根管口を短針でついた。
MB
ML
D
Radix
いわゆる、
スカウティング
という工程をしている。
スカウティングが必要な理由はこの後の某社のオリフィスオープナーで根管形成するために、だ。
この工程に必要な短針は某社の短針しかない。これは日本では販売されていない。アメリカから購入する必要がある。
理由は、先端径が#17で最もこの器具で細いからだ。
これは、
Basic Course 2025 第2回
でお話しした通りである。
スカウティングしたら、ProTaper SXのファイル破折の心配なく根管形成が安全にできる。
それぞれをコロナルフレア形成した。
MB
ML
D
Radix
先端径が#17の短針でスカウティングしてもRadixはかなり形成しにくかった。
が、なんとかコロナルフレア形成が完了した。
ここからは、作業長測定である。
以下のようになった。
なぜ、MLとRadixはC+ File#6をApical Foramenから突き出しているか?あなたには理解できるだろうか?
それは、
グライドパスをする必要性を省略するため
と
私がWL=Apical Foramen-0.5mmで根管形成するため
である。
あなたが、
WL=Apical Foramen-1.0mmでやる人なら、こういうことをする必要性はない。
と言う話も付け足しておこう。
この考え方は前回の
Basic Course2025 第2回
で話した通りである。
ということで、以下のように根管形成・根管充填を行った。
術後にPA,CBCTを撮影した。
MB
ML
D
Radix
問題はないだろう。
次回は1年後である。
またその結果をお伝えしたい。