8/22(日)に博多駅近郊某所でAdvanced Course 2021 第3回が行われた。

今回のテーマはIntentional Replantationである。

午前中に講義を行い、午後から実習を行った。

ということで午前中の講義から復習しよう。

上顎・下顎の7番のApicoectomyはかなり難しい。

それは器具操作の面からもそうだし、歯根に対するアクセスの悪さの面からもそうである。

上顎の7番に根尖病変ができているがアクセスが困難である。

下顎に対しても同様である。

ということで一度抜歯してからApicoectomyを行うという術式が採用される。

それがIntentional Replantationである。

さて、この意図的再植であるがアメリカではほとんど行われないであろう。

理由はなぜか?といえばこんなことをしてまで歯を残したいのか?という話になるのである。

そんなことをするくらいならインプラントの方が安いし(日本円で上部構造まで入れて10万もしない歯科医院もある)、早いし、簡単なのである。

その辺の歯科事情は日本とは少し異なる。

日本人は天然歯を大事にするがアメリカ人はしない、という意味ではない。

いわゆる合理性である。

自分の歯を抜いて元に戻してそんなことができるのだろうか?という大きな疑問を呈するのである。

これは日本にも当てはまる。特に年配男性だ。

年配の男性は大概この手の歯科治療を敬遠する傾向にある。

女性はその逆で積極的に行う。

ここが世界的に見ても当てはまるところだ。

症例を提示する。

30代女性である。

昔の歯科医院で私自身が補綴治療している。

オープンバイトの女性だが矯正を拒否した。

臼歯部のみ補綴治療を行っている。

が、私が渡米し帰国すると左上7番にSinus tractができたという。

CBCTも撮影すると以下のようになった。この根尖部分を削合することはできない。

口角が非常に硬く、アクセスができないからだ。

Intentional Replantationを提案した。

抜歯を行い歯牙を観察した。

歯根に破折が認められる。

が、私は破折線を削合しBiodentineで充填し、抜歯窩へと戻した。

するとこの歯は動揺がなくなり、2ヶ月後から咬合に困らなくなったのである。

1年後に根尖病変は消失した。

このように破折があってもBiodentineで修復し治癒している症例を私は多く持っていた。

が、倒れて症例は消えてしまった。

なぜこの症例が残ったのか?といえば、私のプレゼンテーションが残っていたからである。

今回の講義はBecker 2018の論文に従い行った。

講義を行う前に注意点を説明した。

これを東京で講義した時も説明したが、古臭い論文を使用していてつまらなかったと言われた。(という感想をいただいた。)

なんというか、受講者は馬鹿なのだろうか?それとも外国人なのか?

日本語を理解できないというのは悲しいことである。

ということで、講義は以下のように進めるとこの日は受講生に告げた。

術式は以下のようになる。


1. 抜歯

まず意図的再植するには抜歯しなければならない。

抜歯するには脱臼しなければならないが、脱臼はご法度と言われてきた。

Beckerの論文には以下のように記載があった。

歯根膜を傷つけないように抜きたい。抜けるのであれば、だ。

しかしそれを行うには歯牙が脱臼されていなければ不可能であろう。

私はそれそれをUSCで経験した。

1時間も鉗子でグルグルやっていたら患者が泣いたのである。

そこを横切ったのが、Dr.Rogesだ。

「何やってんだ?Akira?」

「Intentional Replantationをやっているのだが…抜けなくて。。。」

Dr.Rogesは私のユニットを見渡し、

「OK、私が手伝おう。ああそれからペリオトームとへーベルを持ってきてもらえるか?」

へーベル?…こいつは脱臼させる気か??

私の不安は的中した。

6、7間にヘーベルを突っ込み遠心に動かし、歯はあっという間に抜歯できた。

しかし、私はこの後、彼とDiscussionになった。

「なんでヘーベルなんて使用したんだ?俺は日本で脱臼させてはいけないと習ったが…」

「OK, Akira. この論文は読んだことあるか?」

と渡されたのが最近亡くなったAndreasen 1981の論文である。

これは私にとって非常に重要な論文だ。

しかし…

Becker 2018には記載がない。

ざっくりいうとこの下の絵のようになる。

そしてもし傷つけたとしてそれが大きくなければ、Intentional Replantationは成功する。

これは私がUSCに行って感銘を受けた話(出来事)の中の一つであった。

だからへーベルを使用してもいいのである。

またこの論文の最後が印象的であった。

もっと長く経過を見ればもっと治癒した可能性があると結びつけている。

私はこの意見に同意する。

多くの症例が時間を置けば治癒しているからだ。

また、抜歯窩の掻爬は行うのか?どうか?であるが、これに関しては以下のように論文ではまとめられている。

どのような状態が最も歯牙の保存が可能な状態であっただろうか?詳細に説明した。


2. 根切

さて掻爬まで来ると次は根切を行う。

が、乾燥状態では切断は不可能である。

どのような溶媒を使用して外科治療は行われるだろうか?

また、歯牙をどのように保持するのであろうか?


3. 逆根管形成

さて、歯牙を保持したのであれば、Apicoectomyを行う。

Apicoectomyに関して一般則はあっただろうか?


4. 逆根管充填

そして逆根管充填を行う。

が、意図的再植のほとんどがなんとAmalgamで逆根管充填している。

なぜか?

MTAを用いてIntentional Replantationしている論文がほとんどないからだ。

この論文では4/28であった。

ということで、私は今回の講義でもlid techniqueによって逆根管充填を行うこととし、そのやり方を説明した。


5. 再植

ここまで終了したら歯牙を再植させる。

再植するには手で戻すか?鉗子で戻すか?どちらだっただろうか?

また、歯牙固定は必要であっただろうか?


6. 予後・術後の指導について

再植した歯はどれくらいで定着しただろうか?

知識がなければ患者に説明することもできい。

最後にTorabinejadのCaseの動画を見てもらったが、どう感じただろうか?

伝麻、そして抜歯の手技はあなたの歯内療法に対する知識を満たすものであっただろうか?


そして最後に実習を行った。

概ねほとんどの受講生が合格点を取っていた。

全員、抜歯することが可能なのであればこの手技はあなたの臨床を支えるものになるであろう。

ということでこの日のセミナーは終了した。

ぜひ、実戦(実際の臨床)でも応用していただきたいと思う。

次回は9/12(日) 博多近代ビル会議室 104号室で行われる。

9:30~入室可能である。

1日、お疲れ様でした。