バイト先での治療。

患者さんは40代女性。

市内で診療所を営んでおられるという。

主訴は左右の奥歯の咬合痛があり物を噛むところがない、であった。

口腔内は残念ながら、ボロボロであった。

再根管治療の適応症になった歯は#30,31,#18,19,#14とあったが、#14,15以外の歯は何と全て垂直性の歯根破折で抜歯となり、保存できる歯がほとんどないとういう状況であった。

で、抜歯後にようやく落ち着いて#14,15の再治療となる。

治療前の歯内療法学的診断は以下になる。

#14 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#15 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

PAは以下になる。

まず#14のRe-RCTから行われた。(2021.2.25)

別日に#15のIntentional Replantationが行われた。(2021.4.27)

歯冠部が崩壊しないように慎重に抜歯し、支台築造を口腔外で最初に行っている。

が、7番で遠心に歯牙がないので抜歯は容易であった。

ファイバーポストを使用して支台築造した。

ファイバーポストからリークしないようにファイバーポストをレジンコアの中で切断し、再度レジンコアで埋めている。

支台築造が完結したのでIntentional Replantationに移行した。

根尖部3mmで切断している。

抜歯窩へ再植した。

ここから2ヶ月が経過した。(2021.6.22)

歯内療法学的検査を行うと以下のようになった。

#14 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#15 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

主訴の咬合痛は消失した。

補綴を入れても問題ない状態である。

PAは以下になる。

ということでプロビジョナルレストレーションの形成・印象へと移行することになった。

次回の診察の時には最終補綴が装着されている可能性が高い。

ということでまたしても

Intentional Replantationで抜歯寸前の歯牙を救うことができた。

以下は患者さんの感想である。


先生、治療していただいてありがとうございます。

違和感も咬合時の痛みも全くありません。

本当にこの歯科医院に通って良かったです。ありがとうございます。

この歯が長く持つように私も管理を頑張っていきますので今後ともよろしくお願いいたします。


Intentional Replantationして感謝されることもこのようにあるのだ。

患者さんは大喜びであった。

Intentional ReplantationはLast resortではあるが、決して無謀な処置ではないのだ。

前回のAdvanced CourseでIntentional Replantationの話をした時にも、実際の臨床で行なったという話を数件聞いた。

抜歯が可能であれば、この治療は難しいものではない。

まずわからなければ、抜歯が可能かどうかを誰かに判断してもらえばいいのではないだろうか?

Intentional Replantationのポイントは以下になる。

⭐︎Intentional Replantationのポイント

①隣在歯がない(7番が望ましい)

②へーベルで遠心、頬舌方向に脱臼させる

③それから抜歯する

④抜歯して15分以内とかいう具体的な数字は今だにない(慎重な対応でOK)

⑤逆根管形成して逆根管充填して、PAを撮影して問題が出ていないことを確かめる

⑥抜歯窩へ戻す(戻りにくい場合は、脱臼した方向の逆に入れる)

⑦単根であれば上記の条件を満たしていなくても可能

上記のポイントを満たして入ればいるほど、Intentional Replantationの適応症と言えるかもしれない。

しかし、この北九州の歯科医院は本当にIntentional ReplantationやApicoectomyが多い。

私の症例はこうしてどんどん増えていっている。

ということで、皆さんもIntentional Replantationに挑戦してみよう!

(と言われて簡単にはできないか…)