患者さんは50代女性。
2018.8.23に他院から紹介で来院された。
主訴は
痛みはないが歯の状態がかなり良くないので専門医のところに行ってもらいたい
という紹介元の依頼患者であった。
歯内療法学的検査は以下になる。
#6 Cold+7/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#7 NR/20, Perc.(-), Palp.(++), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)
#8 NR/20, Perc.(-), Palp.(++), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)
#9 Cold+6/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
PAは以下になる。
凄まじくオーバーフィリングしている。
アピカルストップがつけられなかったのだろう。
しかしそれはこれが再治療であったから致し方ない。
人の失敗の尻を拭うのが再根管治療だからだ。
CBCTも頂いた。
#7
#8
根尖病変の海の中にGutta Percha Pointがはみ出て彷徨っている。
これでは再根管治療のしようがない。
Recommended Tx: #7,8 Apicoectomy
ただこの状態は仮封がなされているので好ましいものではない。
そこで、Apicoectomyをしたのちに支台築造を行うことになりそこで患者さんと同意した。
しかし、処置を行う前に考えることがある。
CEJから根尖部までの距離を測定した。
#7
CEJ~Apexまで9.5mmある。
これは日本人の標準的な歯根の長さに一致する。
すなわち、#7は通常通り3mm切断していけばいいとわかる。
これはそれほど頭を使うことはないだろう。
次に#8である。
CEJ~Apexまで6mmしかない。
この1/3は2mmである。
4mmしか歯根が残らない状況で感染が取り切れても長い予後が担保できるだろうか?
私にはyes!と自信を持っていうことができない。
歯冠歯根比が悪化して同様が出る可能性があるからだ。
やってみないとわからない!では治療のしようがない。
つまりここで考えなければならないことがある。
何mm切断するか?だ。
以下のような論文がある。
(わざと)ベベルをつけて切断して、1mmしか切断していなくても、Retroprepをなるべく深く行うと封鎖ができる可能性が高い。
ということでベベルをわざとつける、なるべく深くRetroprepするということを頭に入れてApicoectomyを行うことにした。
患者さんは…珍しくできることはなんでもしたいという前向きな患者さんであった。
これが最後のチャンス。。。
彼女はこのオペにかけているような感じがした。
私も彼女の期待に応えなければならない。
いつも以上に気合が入る、Apicoectomyである。
Apicoectomyを行った。
2018.9.11(Apicoectomy処置日)
30°〜45°で切断してなるべく深く(できるだけ2.5mm以上になるように)Retroprepしている。
そしてMTAでRetro-fillingしている。
外科後に支台築造を行った。
支台築造(2018.10.16, 外科後1ヶ月)
2018.12.4~経過観察(外科後、3ヶ月)
外科後、半年経過(2019.3.12)
この時点で、いかなる痛みもない。
主訴は改善されていた。
が、私は翌日脳出血で倒れたため予後が見れないでいた。
が、この日に予後を見ることができた。
治療から3年4ヶ月経過している。
2021.12.11~Recall(Apicoectomyから3年4ヶ月経過)
歯槽骨の再生が予想できる。
ぜひ次回は、CBCTを撮影して歯槽骨の回復の様子をご紹介できればと思っている。
素晴らしい予後を呈しているが、これが永遠に続くわけではない。
いつか終わりの時がくるだろう。
それがなるべく先に引き伸ばしができるのでれば、これほど嬉しいことはない。
また来年この様子はご紹介しよう。