バイト先での患者さんの治療。

Apicoectomyを#28に行なっていた。

歯内療法学的検査は以下になる。

#28 Perc.(+), Palp.(+), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

Pulp Dx: Previously treated, Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Apicoectomy

初診は2019.10.4で、治療は1ヶ月後の2019.11.26に行われた。

初診時(2019.10.4)

CBCTは以下になる。

頬側の皮質骨は飛んでいる。(喪失している。)

この部分の再生は期待できないだろう。

また、この症例に関して多くの先生から言われることがある。

”よくこんな症例、外科治療しますね!”

というものである。

多くの歯科医師にとっては、根尖部付近(上の写真の青い部分)に

下顎孔が存在するのでなるべく扱いたくない症例だという。

しかし、私はこれくらいではなんとも思わない。

外科治療に影響を及ぼすものではないからだ。(ここは経験値が必要)

USC時代はもっと下顎孔に根尖部が接近していた小臼歯のApicoectomyを行なっていたからだ。

石灰化が著しいこの根管にできた根尖病変を消去するにはApicoectomyが最適であると判断し、

医者からはカタワだと批判されていたが2019.11.26に#28Apicoectomyを行うことにした。

ちなみにこの歯科医院の顕微鏡はプロエルゴではない。

モリタのマイクロスコープ(ライカ)だ。

プロエルゴでないと外科治療ができない、というのはまやかしだ。

道具で差がつくわけがない。

それか、私がそれを使えば無敵になれるだろうか?いや思わない。


#28 Apicoectomy時(2019.11.26)

この時、面倒臭かったからか覚えていないが、

肉芽組織を全て除去していない。

以下のようにBC putty逆根充後の術野には多くの肉芽組織が残存していた。が、除去の必要もなかったのでそのままにした。

さて肉芽組織を多く残存させた私は極悪人だろうか?

この後の予後を見てみよう。


Apicoectomyより半年後(2020.6.23)

明らかにHealing傾向を呈しているPAだ。

肉芽を残した私は極悪人じゃないのだろうか?


Apicoectomyより1年後(2020.11.26)

症状もなく、根尖部も問題がない。

ということで1年経過して予後は良好といえる。


その後時間が経過し、この日の経過観察を迎えた。

#28はPerc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)であった。

術前のいかなる深い症状も、もはやない。

Apicoectomyより3年経過(2022.1.25)

3年経過したのでCBCTを撮影した。

どうだろうか?全て肉芽を掻爬していないのに歯槽骨が復活している。

肉芽組織は全て取らなければならない!という主張はこのように当てはまらない、と私はUSC時代に教わった。

それが臨床でも実証されている。


文献がある。

Lin 1996 Periradicular curettage

この文献によれば、肉芽組織は感染がなくなれば、新生組織に組み込まれるという。

そしてその存在がなくなると言われている。

興味がある人は読むことを薦める。

この文献の通りになった。

これが嘘ならば、最終補綴は装着されていない。患者にはいかなる不快症状もないのだ。

最終補綴物の存在が問題がないことを実証している。(ポストコアの長さが異なることに注目)

患者さんは治療の結果に大喜びであった。

この歯科医院の特徴はこのように多くのバラエティに富んだ症例を有しているということである。

このような歯科医院はなかなか珍しい。

まるでUSCのような歯科医院である。

患者さんも結果に大喜びで次回はまた1年後になった。

肉芽組織は全て残らず除去しなければならないというのはあくまでも経験的な話であってエビデンスはないのだ。