バイト先での治療。
#8(右上1)の再根管治療であった。(2021.1.30)
クラウンを除去し、ポストコアを除去し、再根管治療は行われるが行う前に治療の成功率はあらかた予想ができる。
以下のような術前の状況の場合、その治療の成功率はどれくらいだろうか?(ちなみに痛みも何もない)
治療前に予想をすることが歯内療法の醍醐味?であるが、この状態であるとすれば治療の成功率はどれくらいだろうか?
穿通できてApex付近まで治療ができれば90%近く、途中で穿通しなければ60%程度というところだろう。
CBCTであれば、以下のようになる。
#8の根尖部には大きな骨欠損が認められる。
#7失活→根尖病変形成の可能性はあるが、Cold+であったためにその生活性が確認されている。
つまりこの骨欠損はやはり#8が原因であるということだ。
どうなるか?は、やってみないとわからないが少なくともこの段階で外科治療という選択肢はないだろう。
作業長をややApex方向に移動できれば私に勝算がある?が…どうだろうか??
治療のゴールが明確になったところで、再根管治療が行われた。
再根管治療時(2021.3.24)
石灰化根管で穿通ができなかったが、根管充填するとBC sealerが根尖部に溢出しているかのような光景を見ることができた。
Gutta Percha PointはApical Foramen付近(理想的にはApical Foramen-0.5mm)に置くことができなかった。
が、シーラーがApex方向へ溢出していた。ということはもう少しで穿通が可能だったのだが各種方法で粘って穿通を試みたが…穿通できなかった。。。
メカニカルグライドパス?〜#19 開かない根管(近心根)の根管形成+根管充填方法
結局、作業長の位置は術前と大して変わりがなかった。穿通もしなかった。
根管充填した。
ということは、治癒する可能性は60%程度ということになる。
あまり高い成功率ではない?のかもしれないが、60%も成功する可能性があるというのは他の治療と比べると決して悪いものではないと私は考える。
その後、経過観察が行われた。
3M recall(2021.6.23)
この時点で痛みなどの臨床症状は一切ない。
PAを出したが…正直出すまでもないだろう。
なぜか?といえば、
根尖部の透過像の変化は正直言ってあまり確認できない
ことが予想されるからである。
それは
Orstavik 1996
のグラフからも明らかである。
3ヶ月では傾向しか掴めない。
Healing(根尖病猿が小さくなること)はとてもじゃないが3ヶ月では起きない。
グラフから、半年〜1年かかることが予想できる。
ましてやHealed(根尖病変の消失)など3ヶ月で起こるわけもないということがわかるだろう。
下のグラフを見ていただければ完全に消失するには4年も必要だとわかる。
ただしそれと臨床症状はリンクしない。
いつ補綴するか?は術者が決めることである。
外科治療との兼ね合いで最終補綴の方法が変わってくる。
9M Recall(2021.12.22)
治療から9ヶ月が経過した。(2020.12.22)
臨床症状はない。
PAは以下になる。
初診時と比べればだいぶ根尖病変の大きさが小さくなってきていることに気づくだろう。
これくらい時間が経たないと変化がわからないのである。
根管治療は治療を評価するにも時間が必要だ。
1年経過時(2022.1.25)
治療から1年が経過した。
患者さんは最終補綴をしていない。(プロビジョナルレストレーションを合着していた)
PAは以下である。
CBCTも撮影した。(2022.1.25)
口蓋側の吸収されていた歯槽骨はだいぶ回復していた。
臨床症状は一切ない。
1年という時間は私のテクニカルな手技の曖昧さをカバーしてくれた?のかもしれない。
ただし。
最終補綴ができるかどうか?だがこれに関しては最低限以下のことを患者さんに伝達する義務が歯科医師にはある。
①Apicoectomyになれば歯頸部のラインは必ず下がる
②それが嫌であれば、Submarginal Flapするしかない(が適応症でないとできない)
今の所、この歯の頬側には歯槽骨が見られるのでSubmarginal Flapの適応症といえる。
が、患者が瘢痕性治癒を嫌がるようであれば(要は見た目の問題をとにかく気にする人であれば)それができない。
Submarginal Flapを行うとどういう問題が出るか?をあらかじめ患者に見せなければならないだろう。
<術前>
<術中>
<術後>
補綴のマージンは下がらないが歯肉に傷が残る。
このラインが受け入れられなければ、この切開法は施すことができない。
が、これ以外に補綴のマージンラインが下がらないようにできる切開方法はない。
が、治療する歯の頬側に歯槽骨が残っていなければこの切開方法は施せない。
したがって全ての症例でできるわけではないのである。
CBCTでの確認が必要だ。
ということで上記のデメリットを受け入れて患者さんは最終補綴治療へ移行することになった。
その後の展開はまたこのブログで紹介しよう。