バイト先での治療。
#7,8 Apicoectomyを行ったが海の中?に落ち込んだ根尖部を私は探す羽目になってしまった…
術前の状態は以下になる。
#6 Cold+3/8, Perc.(-), Palp.(-),BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#7 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-),BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)
#8 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(+),BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)
#9 Cold+4/8, Perc.(-), Palp.(-),BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
Sinus tractがあるので#8以外は根尖部の圧痛がなかった。
PAは以下になる。
根尖部をこれでもか!と形成し、根管充填されている。
その先にはGutta Percha Pointの塊が見える。
CBCTは以下になる。
#8
#8はFlapを開けると根尖が見えるので難しくないだろう。
が、歯根は長い。
#7
#7には溢出したGutta Percha Pointが存在する。
またApexの位置も頬側の皮質骨から遠い。
Apicoectomyがやりにくい可能性がある。
この#7根尖部からはるか彼方にあるGutta Percha Pointの塊…これを取らないといけないのだろうか?と言えば、以下の論文が私に語りかけてきた。
Sjorgren 1995 Tissue reaction to gutta-percha particles of various sizes when implanted subcutaneously in guinea pigs
GPの生体親和性の実験である。
豚の皮下にGPをそのもの(1~2mmの大きさ)、またはGutta Percha Pointを細かく(50~100μm)して埋め込み、Gutta Percha Pointに対する生体の炎症反応の有無を検査した。
すると結果は、
大きなGutta Percha Pointでは炎症は起きなかったが、細かいGutta Percha Pointでは炎症が生じた。
このことから、
海の中に彷徨う?Gutta Percha Pointを除去しなくても治癒の妨げにはならない
と思われる。
歯内療法学的診断は以下になる。
#7 Pulp Dx: Previously treated, Periapical Dx: Chronic apical abscess
#8 Pulp Dx:Previously treated, Periapical Dx: Chronic apical abscess
Recommended Tx: #7,8⇨Apicoectomy
患者さんは治療計画に同意され、Apicoectomyが行われた。(2022.2.22)
順調に進めていったが…
出血が凄まじく私は久々にラセレットを使用することになった。
そして嫌な予感が漂ったのは、#7をApicoectomyした時である。
根尖部を切断しかけたら残根を吸ってもらおうとしていた後である。
Racelletを5個入れたが、最後の1個が見つからない…
そう。
Racelletがこの巨大な根尖病変の海に消えたのだ…
焦った私は骨窩洞を広げてバキュームを根尖部から入れて必死にRacelletを探した。
結果…なんとか見つかったのである。
よかった。。。
見つからなければ、あのUSCの時にもしでかしたRacellet放置事件の二の舞になってしまうところであった…
私は取り残しを確認したが、キャンディがNo!と言い張ったあれだ。。。
2015年 #27 Re-RCT 1年経過時
2015年 Apicoectomy直後
2017年 Apicoectomy後 2年経過
このようにRacelletは使い勝手はいいが、置き忘れるとお灸をすえられてしまう…
したがって、
私にとってはなるべく使用したくない道具
である。
私はあまり好きではないが、このように病変がでかいケースでは仕方がない。
止血が不可能だからだ。
じゃあ代わりにビスコスタッドを使用すればいいじゃないか!という人もいるがもっとややこしい。
除去しなければ異物反応が起きてしまう。
こうしたものに悩まされるのが、Apicoectomyの弱点である。
が、この日はラセレットの紛失事件が起きてしまった。
5個のラセレットを使用したが、全てが回収できない。
あと1個…私はどこに置き忘れただろうか?
焦って根尖部の歯槽骨をもっと大きく削除し、サクションで吸ってラセレットを探索した。
根尖病変に麻酔をしているのは、そこに痛みを伝える神経繊維が発芽していることが多いからである。
触れると痛むので直接麻酔をした。
その瞬間は一瞬、感じるものがあるかもしれない。
なので私は必ず声かけをしている。
その結果…何とか私は確保ができた。。。
ほっと一安心である。。。
ということで、術後にPAを撮影して治療は終了した。
危うくしでかすところだったが、このアシストについている歯科衛生士が極めて有能で私は何度も救われている。
最初は全く???な対応だったのに、である。
彼女は成長していたのだ。
歯内療法のクリニックには使える歯科衛生士・歯科助手が必要である。
この日のバイト先の歯科衛生士もかなり使える衛生士である。
今後結婚などして、福岡に来ることはあるか?と聞いたら笑顔で、
”一生、北九州ですね笑”
と返されてしまった…
ということでApicoectomyが終了した。
こうしたケースは初めてであったが、今後の参考になったと思う。
勉強になった。諦めずに探せばいいことが?あるのだ。
長い1日が終了した…。