博多駅東の時代の患者さんの外科治療の予後報告。

初診は2018.1.22であった。

当時の主訴は、

冠の部分の歯が疼き今まで何度も治療を繰り返していた。冠除去&冠再生・再装着を繰り返していたが、最近になって歯茎が腫れた。通っていた歯科医院から抜いた方がいいと言われショックである。できる限り残したい。

2013年ごろから右上の奥歯には膿疱があるので抜歯だと言われている。

また最近、私の中で話題の?某大学病院でも執拗に抜歯を迫られたそうだ。

私なら…そのような歯科医院には行かない。

行かないというより行く意味がない。

そしてこれは最近気づいたことだが、”歯科医院はコンビニより多い”といつも我々の業界は揶揄されるのだから、逆に言えば、患者さんは自分の希望が受け入れられる可能性が高い歯科医院を探すべきである。基本的には、時間をかけて探せば、どこかに必ずあなたの要望を満たす歯科医院があるだろう。

そっちの方が無難だ。

さておき、その当時の歯内療法学的検査は以下になる。

#2 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#3 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#4 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

PAは以下である。

前医の心を代弁すると、

こんなもの治るわけないだろう、さっさと諦めてくれよ…

であろう。

それはこの方の前歯部・左上臼歯部の治療を見ると明らかである。

意味の不明な処置のオンパレードだ。

これはこの患者さんがカリエスリスクが高いのではなく、この治療をおこなった歯科医師が人でなしであるということをよく表している。

世の中の90%の歯科医師はこういうことである。

さて、主訴は右上であったのでここはCBCTがあった。

MB

悲しくなるような状況だ。

DB

P

なお、P根はDBの直後に存在する。

以上のCBCTを整理すると、

①ラバーダムを使用しない根管治療

②ほとんど拡大はなされていない

③上顎洞まで及ぶ大きな根尖病変

④大がかりな補綴物の除去は望まない

ということから、外科治療の適応症になった。

診断は以下である。

#3 Pulp Dx: Previously Treated, Periapical Dx: Asymptomatic apical periodontitis, Recommended Tx: Apicoectomy(MB, DB)

私は、P根のApicoectomyを今回は行わないと告げた。

なぜならこの大きな根尖病変の原因がどこかはわからないが、やりにくい処置をいきなりやるよりは経過を見てどのように扱うか決めた方がいいからである。

ということで処置が行われた。


#3 Apicoectomy(2018.2.13)


外科治療から1年が経過した。

Apicoectomy後 1年経過(2019.2.5)

大分治癒は進んでいると言っていいだろうが、PAではよくわからない。

ということでCBCTの撮影を依頼したところで、私は脳出血で倒れてしまった…

それから時間が経過し、患者さんは経過を見せてくれた。

あれから時間は4年半経過している。


#3 Apicoectomy 4年半 Recall(2022.7.14)

あれから4年以上経過しているが、患者さんにはいかなる臨床症状もない。

スッキリして毎日快適だと喜んでいた。

いかが、PAである。

が、PAでは治癒の状況がわからない。

患者さんにはCBCTの撮影を頼んでかかりつけ医で撮影していただいた。

それが以下になる。


#3 Apicoectomy〜4.5 yr Recall(2022.7.14)

分岐部にあった大きな骨欠損は再生している。

口蓋を切らないという選択をして良かったのか??

MB

MBは問題なく歯槽骨が再生している。

なお、骨補填剤は一切使用していない。

DB

P

治療前の状況と比べてみよう。


初診時(2018.1.22) vs Apicoectomy後, 4.5yr Recall(2022.7.15)

分岐部病変は消失している。

私は思うに、日本の分岐部病変のほとんどがエンド由来ではないだろうか?と思えてしまう。

まさに闇社会だ。

また、口蓋根の根尖部に病変が残存している。

Apicoectomyの時に切れば良かったのだろうか??

と言えば、これは経過を見ないとわからないだろうが、

問題があれば補綴を外して再根管治療だろう。

その時はなるべく身体に負担を与えない処置を選択してあげたいと思う。

ということで約5年ぶりの経過観察に幕を下ろした。

次回は1年後である。

またご報告したい。