バイト先での治療。
主訴は前歯で噛めない。
焼き鳥なども常に小さくして食事をせざるを得ないという。
人前で気にせず堂々とかめるようになりたい!というのが主訴であった。
前医は再根管治療、補綴治療をおこなったが調子が悪いという。
それを何度言っても様子を見ましょうの繰り返しだという…
恐らく治療する手立てがないのであろうか???
さてそうは言っても、まずは歯内療法の診査と診断だ。
まず歯内療法学的診断は以下のようになった。
#7: Cold(N/A), EPT(N/A), Perc.(-), Palp.(-), Bite(+), Periodontal Pocket 12 9 10 10 11 10, Mobility3(歯が上下に動く。動揺度がかなり強い。)
#8: Cold(N/A), EPT(N/A), Perc.(+), Palp.(+), Bite(+) Periodontal pocket(WNL),Mobility(WNL)
#9: Cold(N/A), EPT(N/A), Perc.(+), Palp.(+), Bite(+) Periodontal pocket(WNL), Mobility(WNL)
#10: Cold(N/A), EPT(N/A), Perc.(+), Palp.(+), Bite(+) Periodontal pocket(WNL), Mobility(WNL)
次にPAを複数枚撮影してもらった。
歯内療法学的診断は以下のようになる。
#7 Pulp Dx: Previously Treated, Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
#8 Pulp Dx: Previously Treated, Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
#9 Pulp Dx: Previously Treated, Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
#10 Pulp Dx: Previously Treated, Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
#7は既根管治療歯であり動揺が強く歯牙の保存がままならない。
#8,9,10は動揺度は生理学的範囲内で歯周ポケットも正常だ。
ということで、#8,9,10は保存する価値があるだろう。しかし#7は残念ながら抜歯だろう。
Recommended Tx
#7 Extraction, #8,9,10 Apicoectomy
さて、貴方は#8,9,10にどのような治療を行うことを提案するだろうか???
除去して再治療だ!俺の再根管治療はまいくろすこーぷを用いてやるから、成功率は100%なのだから!!と凄んだ貴方。
貴方はある意味、幸せな?人なのかもしれない。
どうぞ、マイクロスコープとともに心中してください。
さて、どのようなポストが一般的に外れにくいと言われているだろうか???
まず長さはどうだろうか??
またポストの形状はどのような影響を与えるだろうか??
ここから得られる結論は何だろうか??
答えは来年1,2,3月のBasic Course 2020 再根管治療の講義&実習で知ることができる。
以上のような理由で私は外科的歯内療法を提示した。
患者が同意したため歯根端切除術を3本同時に行なった。
治療直後。根切して逆根管充填しているので歯根は短くなっている。
根尖病変を除去したため根尖部は空洞になってしまった。
しかし、私は人工骨を使用していない。
#7は歯根端切除術後に米国歯周病専門医の岸本隆明先生によってGBRが行われた。
さてここから半年が経過した。
私は骨窩洞の中に骨補填材も何も入れていない。
無意味だからだ。
ということで空っぽだった骨窩洞はどうなっただろうか??
半年経過したこの患者さんのPAが以下のようになる。
前のホームページでもこのようなことは度々起きる、ということを説明したつもりだがまたしてもその通りになっていきそうだ。
これがマジックでないことは最終的に補綴が装着されて証明されるだろう。
私はこの日、この患者さんと直接会話する機会があった。
彼女はこう答えていた。
「本当に決断して外科治療を行なってよかったです。もっと早く先生達(私、米国歯周病専門医の岸本隆明先生、米国補綴専門医の岸本満雄先生)と知り合いたかった…その前まで私は何をしてたのでしょうか…恥ずかしくてとても弁解ができません。でもこうして直してもらったこの歯を私はこの後大切にして人生を過ごしていきます。本当にありがとうございました。」
貴方は患者さんからこのような賞賛を受けたことがあるだろうか??
こういうセリフこそが歯科医師をやっていて良かったと思える時だ。
私は実は…こうしたことが今まであちらこちらでよく起きていた。
でも忘れてしまった…
なぜか?それはほとんど多くの人が治癒してしまうからだ。
このブログを読んでいる貴方にもそうした治療をしてほしいと強く望んでいる。