患者は30代女性。

数年前に再根管治療を行なったが予後が悪く腫れがあるという。

治療歴は以下のようになる。

2018 Re-RCTを行う。

Re-RCT終了時

ここから1年後の2019.1にPAを撮影したが、病変は残存したままであった。

2020.12のPAが以下になる。

外科治療が前提になる可能性が高い。

そこでCBCTを撮影した。

口蓋根を取り囲むような病変が認められる。

このCBCTの絵と深い多数に渡る歯周ポケットから想像できることは?

破折である。

しかしどこが折れているか?は実際に見てみるしかない。

MB, DBには病変は見られなかったので私が患者さんに提案したのは歯根端切除術ではなく、意図的再植術である。

抜歯をして実際の歯牙を見てみるということが最もこの歯を残す上で重要と考えた。

ということで、術前の歯内療法学的診断は以下のようになる。

#2 Cold+4/3, Perc.(-), Palp.(-), Bite(-), Periodontal pocket(WNL), Mobility(WNL)

#3 Cold N/A,, Perc.(-), Palp.(-), Bite(-), Periodontal pocket(P 6mm ,DP 5mm), Mobility(WNL)

#4 Cold+5/2, Perc.(-), Palp.(-), Bite(-), Periodontal pocket(WNL), Mobility(WNL)

#3の歯内療法学的病名は以下のようになる。

Pulp Dx: Previously Treated

Periapical Dx: Asymptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Intentional ReplantationまたはTrisection

患者は治療に同意したため、Intentional Replantationが行われた。

さてあなたはこの術式の時に麻酔は何を使用するだろうか??

歯内療法外科だから、緑のキシロカインでしょ?と気づいたあなた。いい勘をお持ちだが意図的再植はフラップを開けることはないのだ。

つまり術中に血まみれで困ることはない。

したがって、通常通りのキシロカインでいいのである。

ただこの歯は上顎である。

上顎の臼歯に浸潤麻酔はどれくらいの時間効くだろうか??

その知識が麻酔の本数につながる。

こうした知識は来年のセミナー(実習付き)で解説・実践される。

さて歯牙をラクスエーターで脱臼させて抜歯した。

すると口蓋根で破折していた。

ということでIntentional Replantationはやるが口蓋根は下図のように除去して2根の歯として機能させることにした。

口蓋部をトリミングし残りの2根に対して歯根端切除術を行なった。

逆根管形成を行い、BC puttyで逆根管充填した。

PAを撮影し、問題がないか?確認した。

抜歯窩へ戻し、PAを撮影した。固定などはしていない。

術後の注意として、治癒するまではこの部位では噛めないということを伝えた。

また、どれくらいで治癒するか?だが何度もいうように2ヶ月程度が一つの目安である。

最後に咬合の調整を行い、術後の注意を与えた。

固定はしっかりした歯根であるため動揺もないのでしていない。

前回の治療同様、2ヶ月後にまた報告したいと思う。