2022.9.4(日)に九州歯科大学にてPostgraduate Seminarが行われた。
今回のテーマが歯内療法ということで私が呼ばれたのであった。
話のテーマは
Modern? Endodontic Techniqueとした。
これは今年の2月に福岡歯科大学で行ったものと同じである。
当初から私はこの3つの内容を話そうと思っていたが、講演時間の関係で2つになった。
が、一緒に講演した愛知学院大学の諸冨教授が非外科的歯内療法の話をするということが前日に明らかになったため、私はそのプレゼン内容自体を大きく変えてIntentional ReplantationにFocusすることにした。
また、今朝方知り合いの北九州開業の本城先生から以下のようなメッセージをいただいていたのもIntentional Replantationに心を入れようという引き金になったのも事実である。
ということで講演テーマは歯科治療の中のLast Resortである、Intentional Replantationであった。
かつてUSC在籍時にしつこく外科治療を行う私を同級生達はお前はバカじゃないのか?と批判した。
これには以下のような日米の違いという背景がある。
私が海外に留学していたことも、米国歯内療法専門医であることなども何も福岡の人は知らない。
単なるおっさんだ。
しかし、日本に戻ることを留学前の前提にしていた私は日本に戻る=外科が多いことを留学前から意識していた。
そしてそれが私をUSCの面接試験に通してくれる理由にもなったのである。
ということで講演を始めていったが、今までと全く違う内容にした。
とにかく臨床的な動画をふんだんに入れて理解しやすく、意識しやすくした。
私が考えるIntentional Replantationの術式は以下であるが、最近の新しい論文(Becker 2018 Intentional Replantation Techniques: A Critical Review) にも書かれている通り、現代のマイクロサージェリーテクニックでIntentional Replantationを行っている文献はほとんどない。
MTAを使用し逆根充した文献は4/28しかないのである。
そしてマイクロスコープ、超音波チップ、Bioceramic Materialsを使用した現代の歯内療法、いわゆるモダンマイクロサージェリーを行っている研究がほとんどないこともこの論文では示されている。
ということは、この論文は臨床家にとってはそれほど役に立たないものになる可能性が高い。
その点、USCで学習したことは私にとって貴重だった。
今日のブログでは私の主観に基づいて術式を語ってみたいと思う。
一覧が以下である。
まず抜歯である。
これは私はTorabinejadの教科書に書いてある文言に同意する。
非侵襲的に最小限のトラウマしか与えてはいけないとされている。
では非侵襲的とは何か?と言われた時に、それに対する答えがないのが残念だが私がいつも参考にするのはDr.Rogesに教えてもらった、
Andreasen 1981 The effect of limited drying or removal of the periodontal ligament. Periodontal healing after replantation of mature permanent incisors in monkeys
である。
歯根膜に傷をつけている。
1㎟, 4㎟, 9㎟, 16㎟である。
これを聞いてピンとこない人は日本人の平均的な歯根の長さを思い出してみよう。
9㎟, 16㎟は平均9~12mmの日本人の平均的歯根長のどれくらいを傷つけているだろうか?と言えば3~4mmである。3mmは12mmの1/4であり4mmは1/3である。
あなたは抜歯するときにそんなに多くの歯根膜を傷つけるだろうか?
と言えば、先端が3mmのラクスエーターを歯根に突き刺すように使用すればその可能性があるが、抜歯時そうした使用方法を取らない。従って、脱臼で歯牙が傷着くことは物理的に考えにくいということがわかるだろう。
つまり脱臼作業で歯根膜が激しく傷つくというのは考えにくい。
ここはTorabinejadがいう通りの
“The tooth is extracted atraumatically with minimal damage to the periodontium.”
という言葉が最も適切であろう。
抜歯をしたら根切だが根切はApicoectomyと同様にリンデマンバーで行えばいいだろう。それで問題が出るとは考えにくい。
Retroprepは超音波で行うと歯が割れる!という意見もあるが、私はそうは思わない。
バーと超音波で使い分ければいいだろう。
そこまでいってRetro-fillingだが、これは
Apicoectomyと同様にして、Lid techniqueなどで行えば問題が出ないだろう。時短という意味でも適していると言える。
そして歯牙を口腔内に戻していくがこれもハンドで構わないだろう。
最後に固定だがこれはしない。
歯が動くことがないからだ。
治癒は1ヶ月、2ヶ月で起きる。
治癒が起きればプロビジョナルレストレーション等へ移行していく。
そして問題が消えれば最終補綴である。
以上の話を私の症例をふんだんに盛り込んで説明した。
この話を自分で作成していて思ったことがある。
結局、Intentional Replantationとはどう抜くか?のみが議論の分かれるところでその他の術式に関しては既に統一見解ができているということである。
これが伝わればいいが、帰りにあるベテランの先生が
右上2の根尖病変が大きくて悩んでいたが、ApicoectomyではなくてIntentional Replantationを提案しやってみようと思った。フラップを開けるプレッシャーがない分やりやすい。
と語っていたのを思い出した。
非侵襲的なIntentional Replantationがこの国に広まる?ことを祈念している。
最後は立派な修了証をもらい講義は終了した。
1日、ありがとうございました。