バイト先での治療。

主訴は左上2で咬合すると痛い。

過去に大阪の某有名国立大学で歯内療法を受けていた。

治療前のPAは以下のようになる。

が、このPAでの左上2(#10)を見ていやあこれは再治療でしょ?とつい患者に語ってしまう貴方はまだ歯内療法のことがわかっていない可能性が高い。

この紹介元からはCBCTが添付されていた。

#10のCBCTを見てみよう。

CEJからApexまでの距離は13mmであるが、この歯の根管治療は何が起きているだろうか?

そう、トランスポーテーションである。

前医(関西の某有名国立大学の歯内療法科が長期に渡り治療している)にはハンドファイルしかなかったのだろう。

根管の本来の形態は破壊されている。

ではApicoectomyを行うとして、Apexから3mmで切断すると逆根充はどのようになるだろうか??

そう、歯科治療で言うところの2級インレーになる可能性があるのだ。

つまり、簡単だ!と思ったら痛い目にあう症例と言える。

もちろんアーチファクトなどの問題もあるかもしれないのでなんとも言えないが。

次に右上3(#6)である。

最大の特徴は歯根の長さであろう。

CEJからApexまでで17mmあることが予想される。

これでもしこの患者のほっぺたが硬かったらあなたはどうすればいいだろうか??

そのときは、一度この歯は抜いて意図的再植をするしかないだろう。

私にはそれ以外の方法が思いつかない。

しかしこの患者さんの頬粘膜は異常に伸びる。伸縮性が高いのだ。と言うことはカギはフラップの範囲だけと言うことになる。

患歯の2歯遠心からが術野だとすれば右上5から縦切開をいれて左上3または左上4までが術野だと考えられる。

この広範囲の術野を一気にブロックする方法はあるだろうか?

と言えばあるのだがそれを行うことを私はこのブログで多くの人に勧めることはできない。

詳しい情報は、来年行われる麻酔のコースでご説明する。

教科書的に言えば、まず#6,8,10の根尖部に1:50,000 epi含有のキシロカインを打つだろう。

その後、術野に(歯冠乳頭を中心に)緑のキシロカインを打つだろう。

つまり術野はかなり広範囲になる。

スピード勝負だ。

と今は語っておこう。

最後に右上1,2であるが右上2はCold testに反応した。と言うことはこの巨大な病変の原因は右上1であると言うことになる。

と言うことで#6,8,10にApicoectomyを行なった。

それから数ヶ月経過観察し、最後の経過観察は2019.2になった。(私が倒れる1ヶ月前)

ここで私が倒れて全てを失ってしまったため、リコールは途絶えたがこの歯科医院で再び拝見することができた。

それが以下の写真である。

主訴である左上2の痛みは消失した。

大阪の某国立大学に数ヶ月通っても治癒しなかったのに、だ。

そして右上の3番。ここは主訴ではないが根尖病変があった。

ここも根尖部には歯槽骨が認められる。

そして最後が大きな大きな病変があった右上1番(#8)である。

この部分の治癒にはまだ時間がかかるかそれともここは治癒していないのか?どちらかであるが患者は症状がないので経過観察することとなった。

歯根端切除術の治癒には10年以上かかる場合もあるので何とも言えないが、また来年この症例がどのようになったか?報告したい。

さて実はこの投稿がおそらく2020年最後のブログになるだろう。

私にとって2019年、2020年は失われた2年間であり人生の中でも隠しきれない恥部、汚点と言える。

なぜ私は倒れたのか?なぜ私は全てを失ったのか?と後悔しても始まらないが、来年以降はもっと私にとっても私の家族にとっても、いい1年になってくれることを心の底から期待している。

ブログの読者の方々も健康な2021年をお過ごしください。

今年もお世話になりました。