紹介患者さんの治療。

主訴は

右上臼歯部の咬合痛

であった。

歯内療法学的検査(2022.11.21)

#2 Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#3 Perc.(+), Plap.(+, MB根の根尖部), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

主訴が検査で再現できている。

歯内療法を適切に行えば主訴が解決するかもしれない。

PA(2022.11.21)

#2の口蓋根、#3の近心頬側根&遠心頬側根の根尖部に根尖病変が見える。

特に…#2は厄介だ。

が、私にはIntentional Replantationがある。

CBCT(2022.11.21)

MB

MBとPは繋がっている(合流している)かもしれない。

MBの根尖部には病変が見える。抜歯が可能である。

MB, Pの根尖部に病変があるのが見える。

が、それは抜歯はできますよ、というサインだ。

DB

DBの根尖部には病変がないように見える。

ケチをつければ…あるようにも見える。

がそれは、抜歯が可能であるというサインになる。

P

P根はMBとは繋がってないように見える。

とすれば…

3根が全て独立した抜歯が難しいタイプの歯である可能性が高い…

病変がある。

根管も石灰化が進んでいるような感じがする。

そして既になされている大きな拡大。

これらの事実を考慮すると、再根管治療は成功率が低いため採用はされないだろう。

ということで診断は以下である。

歯内療法学的診断(2022.11.21)

#2

Pulp Dx: Previously Treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Core build up→Intentional Replantation

既製ピンが入っていること、支台歯の内部のカリエスの状況を確認したいこと(カリエスが進んでいればIntentional Replantationができない、しても補綴ができない)、口蓋根に根尖病変があり既に大きな形成・根充がなされていること、などからRe-RCTではなくCore build upしてからIntentional Replantationを行うことになった。

この日にまず支台築造をやりかえた。

虫歯はほとんどなかった。

歯牙も多く残存していた。

そして別日に、

患者さんの希望で静脈内鎮静を行いながら、

処置を行うことになった。

ということで

CDAC

新田秀一先生

に来ていただき処置を行うことになった。


☆以下、臨床動画(Intentional Replantationの動画)が出てきます。試聴に不快感を感じる方はSkipしてください。


#2 Intentional Replantation(2023.1.16)

ラクスエーターで脱臼させて抜歯している。

かかった時間は1分だ。

予想通り第1大臼歯のように3根がそれぞれ独立していた。

ということで、口腔外で根切を行った。

その後、メチレンブルーで染め出しした。

そしてブルーに染まった部分をGCのMIバーで逆根管形成した。

きちんと形成後に3mm測定していることに注目してほしい。

なぜ超音波じゃなくてMIバーなのか?といえば

①MIバーの方が早い&簡単

②歯根破折の防止

という目的があるからである。

詳しくは、Advanced Courseを受講されたい。

窩洞を乾燥させて逆根管充填した。

PAを撮影し、状況を確認した。

問題はないと思われる。

再植してPAを撮影した。

ということでこの日の処置が終了した。

かかった時間は数十分である。

私は個人的には

ApicoectomyよりもIntentional Replantationの方が好き

である。

理由はかかる時間が短いからだ。

そして歯牙が全て見える。

全てがクリアになるので治療がしやすい。

また今日は我が愛する?母校から後輩が見学に来ていた。

某地域の有名な口腔外科の歯科医院での研修医の歯科医師先生である。

何mm切るのか?

逆根充は何mm形成するのか?

逆根充は見たこともない白い材料で一体何をしていたのか?

など質問攻めだったが、

私が1年目でこんなに勉強熱心だったか?と言われれば…

私の1年目は不正請求をしまくる歯科医院に就職し、

虫歯を取らない、

ミロで修復物や補綴を作りパラで請求し、

患者からはなぜ装着したばかりの修復物が黒いのか?と言われ、それは気のせいだからと誤魔化し、

Inlay形成は数十秒でやれと言われ、

即充でデンチャーを作り、

インプラントで代診が下歯槽神経を麻痺させ、

ビタペックスで根充しetc. …

など酷いものであった。

あの頃は漂流していたな…

が、今日のこの先生はきちんとした人だ。

きっといい未来が待っているに違いない。

頑張って勉強して日本の歯科医療を変えてください。

歯科医師は基本的に人は死なない医療ですので、医師になるよりもやりがいがありますよ。

ただ、やりがいを見つけられないともがき苦しむだけですけど。

でもね…

学生時代、

毎度実習では最終グループで、

顎間固定の実習では板金屋に行けやと言われ、

CrownもDentureさえも作製したことなく、

RPDの調整をしたら=患者の要望に応じてクラスプをしめたら, 免許もないのに勝手に何やってんだ!と叱られたり、

最後は補綴作成がないので補綴医の見学をしまくって(同級生の後ろ陰で隠れて寝てただけだったが

学校にもほとんど行っていなかった、

なんとか帳尻合わせて卒業した、

私とはえらい違いである。

この国を変えるのはこういう若いfreshな力なのかもしれない。

日本の歯科医療を変えるには若いあなたのような先生の力が必要です。

期待しています。

またいつでも見学に来てください。