以前も紹介した患者さんのリコールの続報。

記事は以下になる。

#9 Apicoectomy 3年2ヶ月後の予後

Sinus tract痕は残っているが〜#9 Apicoectomyから4年経過

治療が行われたのは2017.11.18である。

この時から時間が今年で6年目が経過しようとしている。


当時の検査、PA、CBCT等は以下になる。

歯内療法学的検査(2017.11.18)

#8 Cold+3/6, Perc.(-), Palp(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#9 Cold NR, Perc.(-), Palp(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

#10 Cold+3/3, Perc.(-), Palp(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

Sinus tractがあるということは感染が長く存在している証左である。

外科治療が必要な可能性が高い。

PA(2017.11.18)

Sinus tractにGutta Perchaを挿入してPAを撮ると#9の根尖に向かってGutta Perchaが挿入できた。

また、装着したクラウンにはなんの問題もなかった。

患者さん曰く、

30~40年前に装着したクラウン(PFM)

だという。

左右の前歯の色調も非常に問題がなく大変気に入っている…だからこれを外したくない!

という患者さんの気持ちがよくわかる。

CBCT(2017.11.18)

歯根の長さは6mmしかない。

かなり短い歯根だ!となるところであるが、PAを見て欲しい。

左右が非対称であることがわかる。

つまり、

#9は歯根吸収で根が吸収された可能性が高い

という予想ができる。

クラウンも外せない

歯根の切断にも制限がある

ということであれば、あなたはどのような外科治療を行うだろうか?

これが臨床力である。

自分で考え、方法を見出さなければいけない。

これに関する詳細はAdvanced Course 2023でお話しします。

あと少しだけ枠がありますので参加したい先生はメールを endomatsuura@gmail.com にください。


話を元に戻そう。

歯内療法学的診断(2017.11.18)

Pulp Dx: Previously Treated

Periapical Dx: Chronic apical abscess

Recommended Tx:Apicoectomy


治療はApicoectomy一択である。

#9 Apicoectomy直後(2017.11.18)

MTAで逆根管充填した。

この頃は大変だったが、今はBC sealerがあるのでもっと逆根充は早い。

さてここから時間が経過した。


#9 Apicoectomy 5yr Recall(2023.1.19)

Sinus tractがある!と言われかねない口腔内は以下の通りである。

わからない人は目に焼き付けておこう。

これはSinus tractとは言わない。

Sinus tract痕である。ニキビのようなものだ。

そしていかなる石灰線の跡もない。

なぜか?

この患者はペリオの患者でないからだ。

日本人の90%はペリオじゃ!と思っている人には理解ができないだろう。

PAは以下になる。

#9 Apicoectomy 5yr recall PA(2023.1.19)

PAでは申し分のない治癒が得られているようだ。

最後にCBCTを撮影した。

#9 Apicoectomy後 5yr Recall CBCT(2023.1.19)

私がこのCBCTを見て驚いた発見は…

Apicoectomyをしてそれが成功して長く時間が経過すると、驚くべきことに根尖病変でやられた根尖部の歯槽骨、しかも頬側の皮質骨が回復する

ということである。

術前と術後を比較してみた。

#9 Apicoectomy 術前 vs 術後 5年

再度述べるが、驚くべきは頬側の皮質骨が回復していることである。

これは

ペリオの治療では絶対に起きないこと

だ。

患者さんは結果に大満足していた。

そして一言、

本当に自分で探して先生の歯科医院を見つけて外科治療してもらってよかった…

と言われた。

これ以上ない褒め言葉である。

これで私の現役寿命が伸びた気がする。

またこの状態で歯牙が破折しても感染が除去できているのでImplantの即時埋入も可能だろう。

ちなみに患者さんの年齢は50代である。

病気が治りやすいにくいに年齢は関係ない。

関係あるのは細菌を減らせたかどうか?だけである。

だが、世の中にはこの逆で行った治療がうまくいかないと、私を罵倒する人や初診で検査に来たにもかかわらずその後来院がぴたりと止まる人もいる。

治療費が高すぎて?来院が止まるのはわかるが、そうでない場合(私と合わない、胡散臭いと感じるなど)もあるだろう。

しかし…

そもそも私がその病気を作ったのだろうか?

と言えば、

私は何もしていない

のである。

いつも流れ弾が私に降り注ぐが、そうした人へのアドバイスとしては、

私に怒るのでなく、今起きていることを客観的に捉えてどう治療するか?理解した人の方が勝ちだと私は思っている。

90%という高い外科治療の成功率に掛けますか?それともImplantしますか?

それを決めるのは患者さん、あなた自身なのです。