先週末日曜日、今週末日曜日はまつうら歯科医院でAdvanced Course 2022 第8回、Basic Course 2022 第10回が行われた。

テーマはこの二つ合わせて生活歯髄療法である。

私が倒れる前に北欧歯科と共催で東京で行った話を2つに分けている。

なぜか?と言えば、子供の治療をする臨床家は少ないし根未完成歯の根管治療などもはや誰もしないからからである。

特に歯内療法においては少ない。

私の知り合いで子供の治療をしているのは多分、私だけだろう。

ということで子供には免疫がない?とも思われている歯内療法専門の歯科医院だがうちには今月でも小1の女の子、小3の女の子が患者さんとして来院している。

一人は経過観察でもう一人は根管治療(Apexification)になった。

が、アメリカに留学すると週1回、PIDO TIMEという地獄の?スケジュールが組み込まれる。

なので子供の治療は私は苦手ではない。

福岡市内の小児歯科に勤務もしていたし、である。

テーマはBasic Course 2022ではVPT全般(VPTに対するKey Articleの解説, Indirect Pulp Capping, Direct Pulp Capping, Partial Pulpotomy, Full Pulpotomy)を、Advanced Course 2022ではApexogenesis, Apexification, Regenerationを解説した。

この二つのコースに出れば話が完結するようにしている。

なので興味がある方は、Advanced Course 2023の受講をお勧めします。残り2名で締め切りになります。

ということで、まずはBasic Courseの解説から。

このような状況であなたはどういう治療を提案するだろうか?

患者さんは妊婦で不妊治療の末に妊娠している患者さんである。

根管治療を他院で強く勧められたそうだ。

が、痛くもないのになぜ神経を取らないといけないのか?という強い疑問があり私の歯科医院を訪れていた。

また治療する上で、下顎の第2小臼歯の構造は頭に入っているだろうか?

そしてオトガイ孔が近くにあるが大丈夫だろうか?

そして妊婦にあなたはどういう麻酔薬を選択するだろうか?

そして何本まで麻酔を行っていいのだろうか?

全て答えられるだろうか?

と言えば、

保険医では無理

である。

科学よりも金銭を重んじている人々には一生理解できない話だろう。

話を戻そう。

VPTを理解する上で重要なのは歯髄の構造の違いである。

詳細は難解な本として著名なDental Pulpにある。

下の絵が意味するところは何だっただろうか?

この絵が示すことは、

年齢に抗う治療を施すことはできない

という客観的な事実である。

この話をしていると、

俺は違う

俺はできる

俺はそうは考えない

という頭の硬い人に出会うことが多い。

そのような人には以下の文献を読むことを勧めよう。

Koopaeei 2016 General dentists’, pediatric dentists’, and endodontists’ diagnostic assessment and treatment strategies for deep carious lesions: A comparative analysis

それはあなたがそれでいいならそれでもいいが、それが患者利益を反することになる可能性が高いことが書かれている。

このことを注視しなくてはならない。

学んだことの違いが臨床に如実に表されるのがこの治療の特徴だ。

が、それでも老年者でも成功している!という文献もある!という人もいる。

それに対する答えは以下である。

が、日本の現状は多くの場合成人の虫歯の治療でVPTを施している。

ではその成功率はどれくらいだろうか?

この文献でのFull Caries Excavationというのは、露髄しないように全てのカリエスを除去するという治療方法である。

虫歯を残すか?残さないかで治療の結果に差が出るか?を検証している。

その結果は以下のようになる。

歯髄を温存させたければComplete ExcavationよりもStepwise(う蝕を残して除去する)の方がいいということがわかる。

積極的に取るよりも保守的に攻めた方が(露髄を避けるように治療した方が)成功率が高い。

次が露髄した場合である。

露髄した場合、Direct Pulp CappingもPartial Pulpotomyも治療の成功率が低いことがわかる。

ということは…

成人の歯で露髄した場合の治療の方法は

根管治療が第1選択になりうる

という事実がわかるだろう。

なぜか?と言えば、根管治療の治療の成功率は90%だからだ。

また、歯髄を保存すると以下のような問題が出る。

生活歯髄療法を成人で行い、露髄し、歯髄を保護したら石灰化というおまけが付く。

その後、こういう問題が出たらあなたはどうするだろうか?

以上のことから何が言えるか?と言えば、

生活歯髄療法を成人に適用すると石灰化し、その治療が失敗するとApicoectomyやIntentional Replantationが必要になる

という事実である。

つまり、

外科治療ができなければ歯内療法はできない

という事実がわかるだろう。

つまり、あなたが成人に生活歯髄療法を行うのであれば、

”外科治療ができるかどうか?が重要である”

という事実が出てくる。

このことを理解している臨床家がどれほどいるだろうか?

この後は各論を説明していった。

それぞれの治療の弱点を記す。

というこでBasic Course 2022 第10回は終了した。

明日以降にAdvanced Course 2022 第8回の模様をお伝えします。

少々お待ちください。