バイト先での治療。
主訴は
1週間前から左側の被せた部位で痛くて物が噛めない
である。
#12,13は13年前にPFMが装着されており、色調に問題を感じたことがないのでPFMもメタルポストコアも外したくないという。
しかし、これが一般的な患者さんのリアクションである。
この主訴を改善するには冠を外さずに治療するという選択肢しかない。
それが再根管治療だと極めて頭が痛いが…
ちなみに#14,15にはImplantが埋入されているため根尖病変を何とか封じ込めておきたいところだというのも患者さんの望みである。
歯内療法学的検査(2021.9.22)
#11 Cold+5/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#12 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#13 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
主訴は再現できた。
”適切な歯内療法処置”で治癒する可能性がある。
CBCT(2021.9.22)
#12の根尖部には根尖病変がある。
根管治療を途中で諦めたようだ。
#13は根尖病変はないが圧痛や咬合痛がある。ここは厄介だ。
#12
根尖病変は口蓋側に位置している。
このまま放置すると根尖病変がでかくなり、歯周疾患と間違えられてしまう。
すると抜歯だの何だのとチャチャが入るだろう。
CEJからApexまでは13mmで長い歯だ。
3mmで切断した時にGutta Perchaは見えない。自分自身で逆根管充填をする感じになる。
#13
#13の根尖部にも根尖病変と思しき透過像があるが、#12ほどではない。
しかし、患者は痛みを感じている。これだけで治療の適応症となる。
根尖病変があるか?ないか?が治療の選択肢の引き金にはならないのだ。
根尖病変はないが…様々な症状が。患者がおかしいのか?それともあなたがおかしいのか??#29 Re-RCT3年2か月経過症例から学べること。
また、#13の根管は既に石灰化している。
再根管治療は極めて難しいだろう。
また歯根の長さは14mmでApexから3mmの位置で切っても、そこにはGutta Perchaはない。
自分で充填材を確認する形になる。
歯内療法学的診断(2021.9.22)
#12,13
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Apicoectomy
推奨される治療はApicoectomyである。
患者さんは治療計画に同意し、外科治療が行われた。
#12,13 Apicoectomy(2021.11.30)
#12はRetroprepが浅い。
#13はRetroprepと歯軸の平行関係を見失ってしまったようだ。
レントゲン的初見も格好悪い。
これで治癒するだろうか?
時間が経過した。このApicoectomyから1年経過している。
#12,13 Apicoectomy(2023.11.26)
従前に咬合痛について尋ねたところ、今はないという。
外科治療から1週間程度で消失したそうだ。
という事で、PAを撮影した。
術前の根尖病変は消失している。
外科治療は奏功したようだ。
CBCT(2022.11.26)
術前に#12,13に見られた根尖病変は消失したようだ。
根尖部にあった病変は消失した。
そして…
皮質骨も回復している。
外科治療時に穿孔したにもかかわらずだ。
#13の根尖部頬側の皮質骨も再生されている。
目だった病的なものもないようだ。
という事で1年経過して問題なく機能している。
初診時と比較すると以下である。
患者さんは大喜びであった。
以下、患者さんの感想。
治療前にあった痛みが消えて本当にびっくりしています…。。。
一時は東京に治療に行こうかと思っていたくらいでしたから…
治療していただいて本当にありがとうございました。
これからこの歯を大切にしていきます。今後ともよろしくお願します。
という事で次回はさらに1年後の2023.11に2yr recallを予定している。
またその際、報告したい。