バイト先での経過観察。

患者は30代女性。

主訴は東京の歯科医院で根管治療を受けた歯の根元が痛むことがある

であったが、その歯科治療歴はかなり複雑であった。

まず抜髄したのは数年前東京の歯科医院あり、その際に右下5が抜髄になっているが咬合痛が取れないとのことであった。

もちろん、東京ではラバーダムなど使用していない。

またその他にも、

①噛んだ時に痛い

②熱いものを含むと痛い

③何もしなくても痛い時がある 

④頭痛の時に特に歯が痛い

と不定愁訴?のオンパレード??であった。

歯内療法学的検査は以下のようになった。

#28 Cold+1/6, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probing(WNL), Mobility(WNL)

#29 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(-), BT(++), Perio probing(WNL), Mobility(WNL)

このBT時の痛みが主訴と一致した。

#30 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probing(WNL), Mobility(WNL)

PAを撮影した。

根管治療はしてあるが、根尖部まで根管充填が届いていないようである。いわゆるアンダーフィリングに見える(だけでそうではないのかもしれない)。

そして決定的なのは、根尖病変がないという事実である。

歯内療法学的病名は以下のようになる。

#29

Pulp Dx:Previously Treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

さて、あなたはこの歯にどのような歯科治療を行なって行くだろうか?

再根管治療か?

歯根端切除術か??

はたまた意図的再植か???

それとも経過観察か????

私が患者さんに伝えたことは、ラバーダムなしで治療してしまったので起炎物質が根管内に残存している可能性があることから、まずは再根管治療を行い、それでも主訴が改善しなければ歯根端切除術、意図的再植術などを行うという内容であった。

患者さんは治療内容に同意したため、再根管治療が行われた。

再根管治療は1回で終了した。根尖部はすでにいじられており破壊が認められたためBC puttyで根管充填した。(2018.11.8)

再治療が治癒して行くのには時間がかかったため、次回の予約は半年後の2019.5を予定していたが私が倒れたため経過観察ができなかったが、この歯科医院で経過観察を行った。

2021.2.1のことである。

開口一番に言われたことは、以下のような内容であった。

先生、もう全く痛くありません!

治療の結果にびっくりしました。

あんなに東京で時間がかかっていたのに…こんなことならさっさと先生の医院に行くべきでした…本当にありがとうございます。

倒れられたと聞いてびっくりしましたが、こうやって復帰されて本当に嬉しいです。

他にも必要な歯があればお願いしたいので今後ともよろしくお願いいたします。

根管内に残存していた起炎物質が再根管治療でマネージメントできたため患者の症状がなくなったのである。

しかしそれは再根管治療を行なった結果が出てわかったことである。(治療する前からこのような結果になるかどうかはわからない。)

根尖病変がないのだから問題がないという言い訳はもはや患者には通用しない。おかしいのは患者ではなく、あなたである。


この患者さんには伝えたことは、根管治療は再度行うときよりも1回目の方が重要であることだ。

1回目に治療した人がデタラメを行えば、それをリカバーするのが難しくなってしまう。

その点からいうと、私は自分で治療をしてこの結果に少しびっくりしている。

従来こういうケースは外科治療でもマネージメントが難しいことが多いからだ。

しかしこの患者さんは問題を解決することができた。


さらに話していると、左上もフロスを通す時に痛みがあり、気になると言われたのでPAを撮ったが、

このPAを見て何を思うだろうか?

真っ先に折れたファイルに目がいったあなたは根管治療に毒されすぎだ。

それをいかに取るか?執着してもいいが、世の中にはもっと大切なことがたくさんある。

私はそのもっと大切なことをこの患者さんに説明してあげた。

患者さんは恐らく、この歯を外して不適合な#13のCRをやり直すだろう。

ラバーダムせずにCR充填しているからだ。短針で引っかければ取れるくらいの不適合だ。

しかし、再根管治療せずに補綴治療をやり替えれば、そこにはリスクはあるものの#14の再根管治療をやり直すかどうか?は今の時点ではわからない。

体の健康、ということを考えれば再根管治療すべきだがしなくても命に関わり合いはない。

そして気がついたら世の中が大きく変わってしまった。

このような世の中で、根管治療は常に後回しにされる。

なぜか?はもう言わなくてもわかるだろう。

あなたはそれでも生活の質を向上させたいだろうか?

はたまた別に死なないんだから、と放置するだろうか?