バイト先での治療。
患者さんは30代女性。
主訴は咬合痛があり噛めないというものであった。
歯内療法学的検査は以下のようになる。
#15 Perc.(++), Palp.(+), BT(+), Perio pocket(WNL), Mobility(WNL)
#14 Cold+3/5, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio pocket(WNL), Mobility(WNL)
PAは以下である。
歯内療法学的診断は以下になる。
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical preiodontitis
この患者さんに関しては以下のような情報があった。
2018年9月26日に強い自発痛・打診痛,歯髄に至るカリエスのため抜髄。 かなり太い根管で#50-19mmにて拡大し、症状の消失を確認したので同年11月20日に根管充填。 その後、同年12月6日に同部位の咬合痛を訴えたため咬合調整にて経過を見ていたが、打診痛の改善が見られないため2019年1月17日再度根管治療を行う。 遠方から来院されているので根管貼薬を月に1度のペースでしていたが症状消失せず。ビタペックスを入れてCT撮影したところ、根尖部より上顎洞への穿孔を確認。恐らく過度の根尖部の拡大とファイル操作が原因と考えられる。
その際に残っていた画像が以下である。
2018.9.26
と言うことで残念ながら非外科的歯内療法でこの歯を救うことはできないと考えられる。
したがって、
Recommended Tx: Intentional Replantation
と考えられる。
こんな歯が抜けるのか?とよく聞かれるが間違いなく抜歯できる。
その理由の1つに歯根の形状がアイスのコーンのような形をしているからだ。
頬舌側に動かせば容易に動揺する。
1つの心配は上顎洞の穿孔がまだ存在するか否か?であるがこれはやってみないとわからない。
もう一つ懸念されるのは歯根の切断量である。
根尖部をアグレッシブに切断すると術後の歯牙の動揺につながってしまう。
エビデンスベースで解釈すると以下の論文しかこの手の切断量に関しては見つからない。
以上から根尖部に残存する側枝を消して行くには最低限根尖部3~4mmの切断が求められる。
と言うことで治療が行われた。
まず麻酔を行い、支台築造処置から行なった。
その後、エレベーターなどで脱臼させた。
抜歯窩を観察したが穿孔等は見られなかった。
と言うことで根尖部を顕微鏡下で3mm切断し、メチレンブルーで染色し観察した。
黄色はビタペックスで充填したものと考えられる。
ここで逆根管形成を行い、BC puttyで逆根管充填を行なった。確認でPAを撮影している。
逆根充した歯を抜歯窩へと戻しPAを撮影した。
歯牙の破折などは見られなかった。
経過に関しては2ヶ月は見る必要があることは以前にもお伝えした通りだ。
抜去時に歯石、遠心歯頚部のカリエスなどが認められたため口腔外で処理して抜歯窩へ戻している。
レントゲンで見える空洞の部分が歯根端切除した部分である。
これが治癒するかどうか?には2ヶ月の時間を要する。
2ヶ月後に再び拝見させていただく約束をしこの日はお別れとなった。
この患者さんからは治療後に以下のような感想をいただいている。
本日は大変ありがとうございました。感動しました‼︎
これで治癒してくれればこの歯で粘った甲斐があります…1ヶ月後、そして2ヶ月後の経過観察どうぞよろしくお願いいたします。
意図的再植をしたことがない人にとって私の治療は斜め上を行き過ぎているのだろうか??
どうも世間の常識とはかなり違うところに?いるようだ。
大した感動する処置でもないし、これをやって一生歯が残る訳でもない。
野球で例えると私の仕事は、やや長いイニングを任せられる中継ぎ投手のような役割を果たすことができればいいと常々思っている。
が、患者さんに伝えたいことはこのように最後方臼歯を保存する最後の切り札はIntentional Replantationであると言う事実をどうぞ覚えていてください。
そしてその選択肢が今通院している歯科医院から提示されなければ、あなたはその歯科医院に通うことはもうやめたほうがいいだろう。
どれくらいの方がこの事実に気がつくだろうか?
それを世に広めて行くことが生かされた私の責任、意味であると感じている。